#164『自分の頭と身体で考える』養老孟司、甲野善紀
対談本である。まあまあ、低めの「まあまあ」である。対談本の割になかなか読み進まず、義理を果たすように先程終わった。何が詰まらないのかと言うと、このお二人、お互いに理解と共感し合った仲なので、分かり切った手持ちのカードを互いに切り合っている感じがするからだ。お互いに「ほう!それで!」というのがない。そういう驚きの部分や個人的交流の時点で既に済ませているのだと思うから、本書は要するに二人のおじさんがずっと頷き合っているようなもので刺激に乏しい。
話題は当然両者別々のものを持っているが、それは奥底で重なっていても表層的な話題としては別物である。だから「解剖では」「なるほど、武術では」という感じで、どうしても分離感が目立つ。話題がコロコロ動いて読み手としては落ち着かないし、何を話しても養老孟司さんは解剖や大学組織の方に話を持っていくし、甲野善紀は武術の方に話を持っていくので、飽きてくる。符号もあんまり繰り返されると疲れる。
二人共通の思考の立脚点は「自分が何をやっているのか知れ」ということである。それが個人にも国家にも言えるのだ。しかしそれは多くの人にとって難しい。だから二人ともぼやいているし、危惧もある。
だいたいその見解、その思いを確認するために話している、といった感じの内容だった。
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