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#31☆『生きがいの創造』飯田史彦

 最近大きく悟ることがあった。それで、これをもって人生の暗闇から抜け、本当の道が始まると思えている頃だった。そんな時、古本屋に行くと、呼び掛けるように待っている本がちらほらあった。その一冊がこの本。
 この本は20年ほど前に読んだはずである。私はこの本を通してキューブラー・ロスのことを知った。しかし内容は全然覚えていなかった。あるいは同じ著者の別の本だっただろうか…
 それはさておき、この本は人間の魂としての実存を前提として前世の記憶、臨死体験、守護霊との交流などを扱いながら「人間は、多くの人が『こんなもんだ』と思っている以上の存在である」「人生には確かな意味と目標と課題がある」「苦しい人生も大嫌いな親も、自分が自分の魂の成長のために選らんだ」ということを力強く、そして脇道に逸れることなく語っていく。素晴らしい本である。
 私がとても良いと思う点は、魂や死後の生を疑う人を説得しようとしないこと。だって疑いたい人はどんな証拠を見させられても疑う。となるとその人たちに証拠を見せようとする全ての労力と時間は無駄になる。わりと、そこの所にエネルギーを浪費してしまう人が多い。読みかけで、きっと読み終わらないでろう『幽霊を捕まえようとした科学者たち』という本なんかはその代表で、反対者批判者に足を取られて100頁読んでも200頁読んでも全く前に進まない。
 その点この本は「魂はね、あるんですよ」。いきなりそこから始まるのが良い。だからと言って強弁もしない。ただ「こういう報告がある」「こういうふうに研究者は考えている」ということを紹介し続ける。臍曲がりでなければ「うわ、これは凄いな」と思う話ばかりである。そしてアカデミックな雰囲気づくりによって、読み手の信頼を容易にさせる。非常にバランス感覚が良い。

「自分に協力してくれている人も自分と敵対している人も、全て大切なソウルメイトなのです。敵対している人でさえ、たまたま今回の人生では「自分が間違った選択をした時に警告を発してくれる役割」を担ってくれている…」143
「彼は父を憎んでおり…父を殺す一歩手前まで行った…心の中に囁く声が聞こえ豊漁を引き出しにしまった…「殺人は決してするまい」と心に誓ってから彼の人生は大きく好転した…やがて彼が退行催眠を受け思い出したのは、その一件が「いくら腹が立っても暴力に訴えないで耐えること」を学ぶために自分で計画したテストだったということだった」149

 この辺りは非常に響くものがあった。我が身を振り返り、まさにそういう瀬戸際で自制し、感情のパターンを克服できたこともあれば、明らかに誤った方に向かってしまったこともある。
 スピリチュアルな生き方、自己実現、本当の幸せ、生きる目的など、そういうことに強く真面目な関心のある人は是非とも読むと良い本。アトリエこしき選書に加えます。

 ここからは「こしきの民」用。
 ただしこの本にはどうしてもちょっと間違えているというか誤解している所、認識の幅に充分でない所がある。
1.人間の理解力に制限されている。
 そりゃ当たり前と言えば当たり前なのだが。ただ『シルバーバーチの霊訓』で、シルバーバーチはたびたび言っている。「人間の認識力で宇宙の諸力や法則を理解しきることは不可能」と云々。これは赤外線や紫外線を肉眼で見えないのと同様のこと。決して高次の霊的存在が見下して言っているのではなく、それが限界なのである。本書で紹介されている科学者たちはとても賢明でありまた誠実であることに疑いはない。しかしA,B,C…と事象の確認を重ねた後で導く洞察は、人間の認識の枠組みから充分に脱しているとは言えない。簡単に言うと、だいたい一般読者の誰にでも理解できるであろう解釈の水準なのである。それを悪いとは言わない。そうだからこそ、広く人に読まれることになったのだから。逆に『シルバーバーチの霊訓』の水準まで行ってしまうと、かなりの霊的体験を重ねてきた人でないと、ほとんど意味が分からないはず。この本の役目としては、だからこれで良い。

2.悪の存在が語られない。
 本書は完全なる全肯定の世界観であり、だからこそ読む人に大きな勇気と優しさを与える。しかし実際にはそれだけでは人生に起きていることは説明しきれない。著者が正しくその存在と働きを認めている「守護霊」の対極には「悪霊」が存在する。それについては一言も書いていない。ただ1.と同じく、この本の目的は世界の実相を暴くことではなく、人を魂のレベルで鼓舞することである。だからこの点でも私は減点する訳ではない。この本は、自分の目的をしっかり遂げた本である、と心から思う。
 この本を是非読んでもらいたい、しかしこれが全部ではないということをこしきの民の皆様には知っておいてほしいので、以上を書きました。
 総ページ数400強だけれど、250頁辺りで本題は終わっている。ちゃんと言っていることが分かる人には、後半は不要でしょう。
 最後に一言付け加えると、この著者はかなり「お堅い」肩書を持つ方である。にもかかわらず、天命を心得てこの本を出し、世を照らす仕事をされた。本当に素晴らしいことであると思う。素直に尊敬する。

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