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300日連続投稿記念|自分の小説で国語問題を作ってみました。|解説編

はじめに

こんにちは。吉村うにうにです。普段は長編小説やたまにショートショートを書いております。この前、自分の書いた純文学風小説を題材に、国語問題を作ってみました。解いて下さって解答をアップして下さった方、自分で密かに解いて下さった方、ありがとうございます。今日はその正解と解説と成績優秀者の表彰です。

もし、まだ解いていなくて、解いてみたいという方はこちらです。表彰の対象にはなりませんが、もし解いて下さって自分の解答内容をコメント欄に教えてくだされば、いつでも採点させて頂きます。正解を後述しますので自己採点もできます。そして、自己採点の結果をコメント欄に自慢(もしかして自虐)して下さるのも大歓迎です。

 

問題の正解(解説は後程)と配点


問題Ⅰ㋑(3)㋺(1)㋩(4) (1問につき2点 計6点)
問題Ⅱ㋐(3)㋑(1)     (1問につき4点 計8点)
問題Ⅲ (5) (7点)
問題Ⅳ (1) (8点)
問題Ⅴ (2) (9点)
問題Ⅵ (2) (3) (1つ正解で5点、2つ正解で12点)
合計50点満点

 

解説の前にまずは問題文を(わざわざリンク辿るの面倒でしょうから)


 

解説

問題Ⅰ 漢字は自分で調べられるでしょうから省略……という問題集解説が大嫌いだったので真面目に記載します。

㋑酸素飽和度ですね。選択肢はそれぞれ①豊作 ②放逸 ③飽食 ④報告 ⑤奉納 です。
㋺脳裏です。選択肢は①内裏 ②梨園 ③理科 ④離宮 ⑤瑠璃色 です。㋩間隙です。選択肢は①劇場 ②激情 ③檄 ④寸隙 ⑤砲撃 です。

 問題Ⅱ
(問題の箇所)だが、それでは上級医への報告時間に間に合わない。[ア]、担当十二三名の回診を四グループ程度に分けて行うことにしていた。
アは前後関係から、前が原因で後ろがその結果を示しています。つまり、ここには順接の接続詞が入ります。選択肢では③の「そこで」です。

 (問題の箇所)宇似は、作った笑顔を母親に向け、今日は、の部分にさりげなく力を込める。[イ]、母親は顔を曇らせたので、慌てて上級医が後ほど診察に来る旨を伝えると、丁重に頭を何度も下げてから、二人に決して背中を見せないようにして病室を出た。
イは宇似先生が笑顔を向けたのに、母親は顔を曇らせています。この場合は逆説ですね。選択肢の中では①の「しかし」です。

 ここは、全員正解でした。さすがnoteの皆さん! 普段文章を書いておられるからだと思います。
よかった、めでたしめでたし……、で終わらないのがうにうにの企画です。

余計なお世話企画、接続詞

わざわざ、この問題を作ったのは意図があります。それは、
「皆さん! (私を含めて)接続詞を使いこなせていますか?」という(余計なお世話的な)話をしたかったのです。

 お恥ずかしい話ですが、私、あまり小説に接続詞を使えていませんでした。今も、つい接続助詞(……が、……ので、……から)に頼ってそればかり使う癖があります。文章解析ツールでそこを指摘されて、ちょっとショックでした。ちなみに使用した解析ツールはこちら。

 さて、誤解を招きかねないので、先にお話ししておきます。私は、「文章に良いも悪いもない」という考えです。接続詞を使おうが使うまいが、個人の好きに書けばよいし、個人の情熱があれば、読者に伝わるとは思っています。

 しかし、世の中には「名文」や「良文」と呼ばれるものがあって、それらには一定の水準があることも事実です。

もちろん、それらの水準に合わせる必要は全くないと思っております(何らかの賞に応募するなら別ですが)。けれど、「知っていて(使いこなせるのに敢えて)水準を外す」のと「知らずに外す」のとでは、自分が行き詰まった時や、自分のスタイルをちょっと変えたいときに、戻る地点が分からなくなると思っています。どういうスタイルであれ、基本を知っておくことは大切ではないかと思うのです。

そこで、接続詞を使えていない私は、この場を利用して、接続詞を簡単にまとめておこうと思います。みなさんも、もし「そういえば使えていないな」と思われたら、ざっと目を通して頂けると、良いかもしれません。

参考文献は以下の書籍です。

接続詞の種類
①    順接 前の事項が原因・理由になって、後ろの事項が順当な結果・結論になる
     例 だから・そこで・すると・したがって・よって
②    逆説 前の事柄から予想される結果と逆の結果になることを示す。
     例 しかし・だが・ところが・けれど・だけど・でも・が
ここまでは、私も比較的よく使います。
③    並立・累加 前の事項に後の事項を並べたり、つけ加えたりする。
     例 そして・しかも・なお・それに・さらに・また
④    対比・逆説 前と後の事項を比較したり、前後からどちらかを選んだりするもの。
     例 または・それとも・あるいは・もしくは
⑤    説明 前の事項についての説明や補足を後で述べるもの
     例 つまり・なぜなら・例えば・すなわち・ただし
⑥    転換 前の事項と話題を変えて続けるもの
    例 さて・ところで・では・ときに・それでは

くもんの中学基礎がため100%中学国語 文法編―学習指導要領対応より抜粋

 さて、ここからは私見が混ざります。まず、例文を挙げます。うにうに作「天国へ行く前に、猫になった第一部」より

例文1 怖くて、涙がぽろぽろ出てきて、何度もスマホを見たけれど裕二からの返事はなかった。(接続助詞)

この文章を接続詞を使って書き換えてみます。

例文2 怖くて、涙がぽろぽろ出てきて、何度もスマホを見た。けれど、裕二からの返事はなかった。(接続詞)

両者は、句読点が打ってあるかないかの違いに思えるかもしれません。しかし、ちょっと印象が変わるのではないでしょうか? 

文章の印象は例文1の流れの方がスムーズで、さらっと読めると思います。しかし、文章が長くなりますので、読者の理解のしにくさに繋がります。文章2は「短文は最強」という(一部の小説講座の先生が)おっしゃるように、短く区切られ分かりやすい文章です。接続詞によって文の流れの方向性が示されるので(接続助詞だとわかりにくいケースがある)、その先を予測して読めます。けれど、短文は続き過ぎると味気ないし、接続詞は読者の意識を一旦止めるので、読むリズムが悪くなります。

このように、接続詞のメリットデメリットを意識しながら使う、使わないの選択をしていけば、もっと文章のコントロールができるのではと、考察しました。
以上、みなさんへのアドバイスというより、自分が反省するためのお話でした。

解説に戻ります。

問題Ⅲ 傍線部Ⓐで、「心を乱される」とあるが、それはなぜか。もっとも適切でないものを選べ。
①    将来、一人前の医師になった時に、どのように診断を下せばよいかわからないため。
②    似たような疾患名に対して、治療方針が異なるのかどうかを知りたいため。
③    もしかして、上級医師の疾患名のつけ方に根拠はないのではないかと訝しんでいるため。
④    家族に、似たような名前の異なる疾患名ではないかと訊ねられた時に、答える自信がないため。
⑤    似たような疾患名なら、名前を統一してくれた方が記憶しやすいから。

 選択肢①~④は、どれも適切かどうかはわからないけれども、否定する根拠は見当たりません。しかし、⑤は否定的な根拠があります。文中の黄色の線をご覧ください。宇似先生は、喘息性気管支炎と喘息様気管支炎の違いを知ろうとしています。勉強熱心です。上級医の診断名を訝しむことはありえても、「どれも同じ疾患名で良い」とは考えないのではないでしょうか。

 問題Ⅳ 傍線部Ⓑで、息を止めていたのはなぜか。もっとも適切なものを選べ。
①    シックハウスの患児の母親は、裁判中で、宇似医師も何らかのきっかけがあれば医療事故で訴えられるのではないかと、ミスをしないように緊張していたため。
②    患児は九歳なのにベビーベッドを使っており、その不気味な様子から、できるだけ関わり合いになりたくないと思っていたため。
③    宇似医師が患児を早く退院させて、平均在院日数の短縮を図ってやろうと意気込んでいたため。
④    肺から異常な音がしないのに、どうして化学物質過敏症と言えるのだろうかと、医学的興味をそそられていたため。
⑤    咳が出るという母親の話が信じられず、患児の家族は嘘をついていると思い、それを暴いてやろうと正義感に燃えていたため。

 息を止めていた=緊張と捉えて下さい。では、なぜ緊張したのか、ですね。文中の赤い線をご覧ください。赤い線を辿っていただくと、宇似先生が「裁判」にビビりまくっている様子が分かります。この場合の裁判は「医療裁判」だというところに考えが行きつくと(それは難しいかも)答えが出ます。つまり、

「業者と平気で裁判する人→宇似も医療裁判で訴えかねないクレーマー→うっかりできない」
という風に宇似先生の頭の中はこの母親を偏見の目で見ています。

 問題Ⅴ 傍線部Ⓒで、驚きの声をあげかけたのはなぜか。もっとも適切なものを選べ
①    母親に連れられた男の子が、勝手に他人のベッドに上がり込んだため。②    宇似医師が、それまで診察していたのは患児ではなく、後から本当の担当患児が現れたため。
③    宇似医師が忙しくて病室を出ようとした時に、ようやく担当の患児が現れたため。
④    母親が、老婆に自分の子どもを見てもらうという手抜き育児に、宇似医師が呆れたため。
⑤    ベッドに上がった患児と、老婆に抱かれた子供が似ているので、宇似医師が幻覚を見たと思ったため。

 こちらは、心理描写を省いた作品のため、非常に難解だと思っておりました。しかし、多くの方が正解を出しておられ、嬉しいです。

文中の緑の線をご覧ください。ベッドサイド脇の椅子に座る老婆と子どもの横を抜けて、別の患児がベッドに登ります。ここは、確率の高い話になりますが。赤の他人の病室ベッドの傍のパイプ椅子に堂々と座る人は少ないです。しかも、文中ではわざわざ「患児と顔がそっくり」と匂わせております。

作者は(うにうにのくせにすっとぼけ)明記していませんが、おそらく、老婆に抱かれている子供は見舞いに付き添ってきた、患児の弟です。宇似先生は、それをお婆ちゃんに抱っこされている患児本人だと勘違いしたのでしょう。宇似先生は、子どもの顔と名前を一致させるのが得意ではないようです。その根拠づけのために、文中にある水色の線を見て頂ければ、分かりやすいと思います。

特に冒頭の台詞に不自然さを感じて頂きたいと作者は思っています(すっとぼけ)。この不自然な台詞は勿論意図的です。ここで気にして頂きたいのは、「患児の名前が一切出てこない」ということです。名前と顔を一致させるのが苦手なので、病名を暗記して、それを元に患者間違いを防ごうという、記憶力に難のある医師の戦略を読み取っていただければ、話の理解はしやすいと思います。

 余談ですが、冒頭に出て来る「突発」は「突発性発疹」を略したものです。ヘルペスウイルス6か7による感染症で二歳までに多く、発熱があって、親御さんが風邪だろうなと思って自宅で見ていると、解熱してから発疹が出て、あわてて病院に駆け込むパターンが多いようです。治療は対症療法ぐらいしかありませんが、親御さんは心配なので医師に頼み込んで入院になるケースも多いようです。

 問題Ⅵ 傍線部Ⓓで、作者は宇似医師の頭のキャパシティをブレーカーに喩えているが、ブレーカーなら電気使用量が一定数を越えなければならない。宇似医師の場合、頭がキャパシティオーバーになった要因として、当てはまるのはどれか。適切なものを二つ選べ。
①    研修生活で、上級医の指導力不足による、知識習得が不十分な点。
②    宇似医師の記憶容量が不十分で、患児の顔と名前を一致させるのが難しく、疾患名を符号的に当てて対応していたが、トラブルに対応できなかったこと。
③    クレーマー気質の患児家族を先に診察したことで、医療裁判に巻き込まれないように意識し過ぎて疲弊し、次の診療がおざなりになったこと。
④    厚労省に義務化されている、小児科研修に意義を見出せず、病院にも国家にも不満を抱いている心理。
⑤    シックハウスの患児の肺の音に異常を見つけられず、自身の診療能力に疑問を抱いたまま、次の患児の診察に入らざるをえない時間的制約。

 ここまでの解説を読んで頂ければ、こちらの説明はもはや不要かと思います。この小説を簡単にまとめると、

「記憶力に難のある研修医が、クレーマー気質(と宇似先生が思いこんでいる)の親を持つ患児の診察に緊張を強いられて疲弊した結果、間違って患児の弟を診察してしまった」というお話です。これがそのまま選択肢②③になっています。

いかがでしたでしょうか? 心理描写を抜くと小説は分かり辛いと思います。しかし、解答者の皆さんは内容をほぼ理解して下さっていました。これには驚きました。嬉しい限りです。この小説を真剣に理解しようとして下さったことに感謝です。作品も喜んでいます。

 

さて、50点満点のテストの表彰です。

解答者四名いらっしゃいました。そこから、優秀者一名を選ばせて頂きました(もう一名解答者がいれば、二名選出したかったのですが、今回は一名です)。

成績優秀者は、じゃじゃーん。  脳内露呈さんで、48点です。

おめでとうございます。現役の大学生さんということで、しかも、現代文が得意だったそうです。私は現代文がいつもギャンブルだったので羨ましいです。漢字問題以外、満点でした。素晴らしい! 

 

感想です。

平均39・3点で、四名の皆さん、高得点で驚きました。平均5~6割くらいかなと思っていました。(皆さんを見くびっていたのではなく、この小説分かりにくいと思っていたので)。驚いたのは平均点だけでなく、全員の点数の揃い方です。お世辞抜きで、ハイレベルでした。普段文章を書かれているので、理解力が高いのでしょう。点数の低い方がいらっしゃらなかったです。

その中で、ちょっと気になったことを
①    (私も含めて)漢字を書けなくなっているのでは? 漢字変換に頼り過ぎているのでは、と思いました。本来、漢字は現代文の中で一番点が稼ぎやすい(受験生時代の私だけ?)と思っていました。今回のテストでは、正答率が意外と低かったです。私も、このレベルの漢字が初見の文章に出てきたら、書けないかもしれません。小説やエッセイをパソコンやスマホで書かれる皆さんは、普段紙に漢字を書けなくても、困らないと思います。でも、ちょっと考えてみてください。皆さんが、このままnoteで実績をあげて、有名人になったとします。居酒屋で「兄ちゃん(姉ちゃん)、有名な先生なんだって? お代はいいから、ここでちょっと短いエッセイ書いてよ」なんて色紙を渡された時に、誤字だらけだったり、一々スマホ見ながら書いたりしていると、興ざめかもしれないですよ。

そんなわけで、(私も含めて)もうちょっと、漢字の練習をしましょう。余計なお世話でした。

 ②    問題Ⅲ、意外と正答率が低かったと思います。おそらく「適切でないもの」を選ぶところをうっかり「適切なもの」を選んでしまったのだろうと推測しました。これは、選択式の試験の経験が少ない、もしくは、試験のブランクがあることに起因するかと思います。引っ掛かった方、ごめんなさい。

 

最後に

解説記事のアップが遅くなって申し訳ありません。しかし、私は焦ることなく問題編も解説編のどちらの記事も楽しんで書いてました。参加して下さった方には感謝の心で一杯です。答をコメントに記載して下さった、りみっとさん、Hyama_switchさん、爪毛 川太さん、脳内露呈さん、は勿論のこと、ひっそりとチャレンジして下さった方にも感謝です。

繰り返しになりますが、この記事は小説「類型」を理解して頂きたくて、いわば誤解されている自分の子どもを救いたくて執筆しました。しかし、記事を書き進めるうちに、本来の目的以外に得るものが沢山ありました。一つ目は身についた小さなスキルです。文章を縦書きでnote書く方法。(ほぼ使ったことのない)エクセルに関数を入れて採点し、一人一人の偏差値を計算する方法(四名の母集団に偏差値を出すことは無意味だと思っているので、公表しませんでした。ご希望があればお知らせします)。PDFファイルに色を付ける方法などです。二つ目は、接続詞について反省することなどで、自分の作品を見直し、改善点を考えるきっかけにもなったことです。

この記事を作成するのに費やした時間は非常に有益でワクワクするものでした。これを皆さんと共有できたことが嬉しいです。

まだまだ、これからも執筆を続けます。皆さんにも続けて欲しいです。その中で、お互いに切磋琢磨し、より良い作品を仕上げて行けば、もっと書くことが好きになり、さらに上達するのでは、などと甘いことを考えています。

 ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

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