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私の中にハイドは眠る

善良なジキル博士と、殺人を繰り返すハイド。
実は彼らは同じ身体に共存していた。
その最大のオチが有名になってしまって、ここまで読む前からネタバレな作品もそうそうあるまい。
これは要するに”二重人格”の物語である。

ここまではっきりと人格が分かれているのは特例として、自分を”二面性がある”と感じたことのある人は割といるかもしれない。
人に見せられない自分は、誰しも存在するはずだから。

私は自分のその一面を”ハイド”と呼ぶことにした。
原作とは違って、私の中のハイドは人を傷つけない。
その凶暴性はいつも私に向いている。
どうやらハイドは、私を攻撃するためにいるらしかった。

「なんで普通じゃないんだろう」
「このままじゃだめだ、変わらなければ」
「かわいくない」
「悪意のない言葉に勝手に傷ついている」
「寂しい」
「天邪鬼」
「また強がってしまった」
「あのとき気づけていれば防げたのに…」
「私ってやっぱりダメだ」
「できるわけがない」
「こんなことを思うなんて性格が悪すぎる」
「なんて酷いことを言ってしまったんだろう」
「うまく甘えられない」
「自分の気持ちに嘘をついてしまった」
「私のせいだ」
「言いたいことの半分も言えなかった」
「どうせ私は…」
「誰も気にしていないことなのに、いちいち落ち込むなんて」
「私は私が嫌いだ」

それは突然やってくる。
ハイドが表に出ると、強制的に一人反省会モードのスイッチがオンになってしまう。
ポジティブな私が”大丈夫”、”やっちゃったもんはしょうがない”、”いい経験になった”、”さ、次!”と判断を下しても、真逆に覆してくるのだ。
薄暗い部屋で何もできずにベッドに横たわって、ただただ自分を責め続ける。
”目に見えない自傷行為”という厄介な発作である。

何が引き金となってハイドが目覚めるのか、私にはよくわからない。
ただ一つ確実なのは、ハイドが暴れるのは私がひとりでいる時だけということだ。

それを知っている私は、ハイドから逃れるために予定を詰めまくる。
人の目があれば精神状態を保っていられるからだ。
そして誰かと逢っている間は、元気になれる。

逆に言うと、そのせいで私は悩みを人に相談するのが下手くそだ。
「せっかくの楽しい時間、こんな暗い話でぶち壊しにしたくない」という心理が働いてしまうし、何より本当に楽しいので、ちっぽけな悩みなんてどうでもいいように思えてくるのだ。

普段言いたいことをズケズケ言ってるように見せかけて、悩みがなさそうに振る舞っているのが、自分の首を絞めているのかもしれなかった。
めそめそするのはどうもキャラに合わなくて、小っ恥ずかしい。

それに、聞き役に回ることが多いのもある。
すると「おっと、今は相手の方が大変そうだぞ…」「まぁ、話したところで何も解決しないしな」と、変なブレーキがかかるのだ。
よって、だいたいが事後報告になってしまう。
「実はこんなことがあってちょっとヤバかったんだよね~、あはは!」と、笑い飛ばせるくらいのネタにならないと、人に話せない。

ありがたいことに「もっと早く相談してくれたらよかったのに」と言ってくれる人は多い。
が、それをやってこなさすぎてタイミングが掴めないのだ。
私がツラい話なんてどうでもよくないか?となって、わざわざ「聞いて~!」ができないのである。

いろんな人と出逢って遊んで騒ぐのが大好きな反面、私は人よりも多くのいらん情報をキャッチしてしまうようだから、一人で安静に受けた刺激を処理する時間も必要なタイプだ。
だけど、いつハイドが顔を出すかわからなくて非常に困っている。
自分でも気づかないうちにストレスを溜め込んでしまっているからだとわかっていても、うまく調整ができない。

ストレス発散のつもりで外に出たことで、またストレスを抱えて帰ってくるなんて、一体どんなバグなんだ…


実は私がこんなめんどくさい人間だったなんて、近しい人にほど知られたくない。
みんな精神的に自立していてカッコいい人たちばかりだから。
自分の気持ちや問題と向き合って、たとえ弱音を吐いて涙を見せたとしても、ちゃんと前に進んでいる。

なのに私は”人前で弱音を吐いて泣くこと”、それすら怖いのだ。
本当は全部知ってほしいけど、受け入れてもらえなかったらどうしよう。
もし私の望んだ反応じゃなかったら…きっと相手に対しても「理解してもらえなかった」と失望してしまう。

私を好きでいてくれている人が好きなのは、私であって私じゃない。
そういう引け目をどこかで感じているからこそ、自分を曝け出せない私が自信を持つのはきっと難しい。

全然好きになれない自分を相手には好きになってもらおうだなんて、そんな都合のいいことは、「つまらないものですが…」と言いながら手土産を渡すくらいセンスがない。
だけど、自己中で甘え下手でかわいくなくて卑屈で泣き虫でネガティブでめんどくさくて大っ嫌いなハイドごと、本当は私を愛してほしいのだ。

私のオチのない話を口を挟まずに根気よく聞き出して、すべて肯定して抱きしめて甘やかしてほしい。

そのわがままを私が叫べるようにならない限り、ハイドとは一つになれない。
人に見せたら嫌われる要素をすべてハイドに押し込めているのだから、そりゃ怒って攻撃してくるに決まっているよな。
…なんて、最近制御するのがだんだん難しくなってきてしまったハイドを自分の内側に感じながら、そんなようなことを思った。

おやすみ、ハイド。できれば起きてこないで。


(不特定多数の人が見られるnoteでこんなことを書くのは、あまり健全だとは思えない。
ただ、ここであれば読んだ誰かが共感してくれるかもしれないという淡い期待もある。
特定の大切な人に悩みを打ち明けるのが怖くてできない私にとっては、その方が断然楽なのだ。
正直、誰が見ていようがいまいが構わない。
私とハイドには、ただ飾らずに本音を吐き出せる場所が必要だ)


#ジキルとハイド #二面性 #HSS型HSP #エッセイ  


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