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国際乳がんデーを延期することで乳がん検診先送りを止める「The Postponed Day」


Summary

アルゼンチンの著名なNGOであるLALCECは、多くの女性が乳がんのマンモグラフィー検診を無期限に延期してしまう問題に取り組んだ。

乳がんに関する地域世論調査によると、マンモグラフィーが最も効果的な早期発見方法であることを認識している女性は 10 人中 3 人であった。

そうだとすると、検診を先送りする問題の原因は、女性たちの中に「検診で乳がんが発見されたときにはもう遅い状況だ」という間違った認識があり、検診に行くことに恐れをいただいているのではないだろうか。その恐れに蓋をするために「自分だけはきっと大丈夫」「何かあったら気づけるはず」「すぐにまずい状況にはならないだろう」といった思い込みが生まれ、問題の先送りにつながっているのではと推測される。今年受けなくても来年があることも口実になっているのかもしれない。

しかし、その恐れの奥には、「健康であることに確信を持ちたい」というインサイトがある。このインサイトに応えるため、LALCECは「国際乳がんデーは毎年10月19日に必ず行われる」という事実に着目した。この10月19日を先延ばしにして、それを話題にさせることで、同様に女性が乳がん検診を延期することの危険性と、毎年マンモグラフィーを受けることが最も効果的な早期発見方法であることの認知につなげることができないかと考えた。

アイデアは、アルゼンチン全土のがんと闘う主要30NGOから乳がんの日を延期する声明を14日間にわたり出し続けること。国内の記者は乳がんについて話すためにNGOに電話をかけても受けてもらえない状況が続いた。それにより「どうしてこのような重要なことを延期するのか」という議論を生み出すことで、乳がん検診を延期する危険性を話題化し、早期発見のために検診の促進を図った。

このアプローチにより、「乳がん検診の先延ばしは、乳がん発見の先延ばしではなく、命を救うことの先延ばし行為である」という価値変容を起こし、乳がん検査による早期発見の重要性を伝え、検診を先延ばしにせず毎年受けることを促した。



Deconstruction


Brand

LALCEC - アルゼンチンの著名なNGO。

Target
主に40歳以上のアルゼンチンの女性。

Objective
多くの女性が乳がん検診を無期限に延期してしまう傾向にある → 乳がん検査による早期発見の重要性を伝え、検診を先延ばしにせず毎年受けることを促す。

Barrier
検診で乳がんが発見されたときにはもう遅い状況だ。

Insight
健康であることに確信を持ちたい。

Thought starter
「国際乳がんデーは毎年10月19日に必ず行われる」という事実に着目。この日は、乳がんについて24時間に渡って議論が行われる重要な日。10月19日から先延ばしにすることで、その妥当性について議論を促し、それをきっかけに、女性の乳がん検診を延期する行為も同様に危険な行為であることに気づかせる。

Execution
"The Postponed Day"
10月19日の乳がんの日を14日間延期すること。それにより、「どうしてこのような重要なことを延期するのか」という議論を14日間に渡って生み出し、乳がん検診を延期する問題を社会全体の問題として捉え、検診への促進を図る。

Transformation
乳がん検診の先延ばしの価値変容
乳がん発見の先延ばし行為 → 命を救うことの先延ばし行為


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