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家具を捨てた本当の理由に気づかせる「The Life Collection 2022」


Summary

世界最大の家具小売業者として、より持続可能な企業を目指しているIKEAは、ノルウェーで毎年300万個以上の家具が捨てられ、その多くがIKEA製品であったという問題に取り組んだ。(この背景には「IKEAは安価だからすぐ破棄される」だったり「IKEAは再販の工夫がされてない」といった、IKEAの責任を問う声があったのではないか)

そこでIKEAがオスロ最大の埋立地で実験を行ったところ、廃棄されたうちの70%がIKEAの中古品店で再販売可能であることがわかった。

ノルウェーは持続可能性の先進国である。一般消費者の意識は高いはず。しかし、なぜこれだけの数のIKEA家具が破棄されているのか。IKEAが捨てられた理由を探ったところ、そこには「破棄せざるを得ないさまざまな人生の変化」があった。

つまり、この廃棄問題の原因は、「IKEAが安価だから」は口実であって、実は「単に必要でなくなったから」ではないかと推測される。

しかし、この心理の奥には、ノルウェーなので「まだ使えるのであれば、再利用させたい」というインサイトが存在するはずである。

このインサイトに応えるため、IKEAは「処分の方法には、捨てる以外に、IKEAの中古店に持ち込むという再利用の方法がある」という事実に着目し、消費者が、IKEA家具を捨てようと思ったとき、それが安価だからではなく人生の変化があったからですよね、という「捨てる本当の理由」を認識させることで、家具には責任がないことに気づかせ、そこで再利用の方法(IKEAの中古店への持ち込み)を示すことで、自然と正しい行動へ促せるのではと考えた。

アイデアは、「どんな理由であったにせよ、IKEAの中古店に持ち込んで、家具に新しい人生を与えましょう」というコピーのもと、廃棄された家具のリアルで哀愁を帯びた状態の写真に、その家具を廃棄せざるを得なかったオーナーの人生の正直な理由と、再販価格を添えたシンプルなプリント広告。

このアプローチによって、「IKEAの家具を捨てる理由は、安価で使い捨てだからではなく、オーナーの人生が変化したからである」という価値変容を起こし、IKEA中古店の認知を高め、不要になった家具の持ち込みと購入を促した。

※廃棄問題の責任がIKEAにはないことを暗に証明する、汚名返上広告ではないかと筆者は推測している。



Deconstruction

Brand
IKEA - 世界最大の家具小売業者として、より持続可能な企業を目指している。

Target
消費者全般。

Objective
ノルウェーで毎年300万個以上の家具が捨てられ、その大部分が再販可能なIKEA製品である → IKEA中古店の認知を高め、不要になった家具の持ち込みと購入を促す。

Barrier
必要でなくなったから(しょうがなく)捨てた。

Insight
まだ使えるのであれば、再利用させたい。

Thought starter
「正しい処分の方法、つまりIKEAの中古店に持ち込むという方法がある」という事実に着目。IKEA家具を捨てようと思ったとき、それが安価であるからではなく、人生の変化があったから、という「捨てる本当の理由」を消費者に認識させることで、IKEAの中古店への持ち込みを促せす。

Execution
“IKEA - The life collection 2022”
「どんな理由であったにせよ、IKEAの中古店に持ち込んで、家具に新しい人生を与えましょう」というコピーのもと、廃棄された家具のリアルで哀愁を帯びた状態の写真に、その家具を廃棄せざるを得なかったオーナーの人生の理由と再販価格を添えたシンプルなプリント広告。

Transformation
家具を捨てる理由
安価だから使い捨て → オーナーの人生が変化したから


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