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カンヌ2023まとめ「TechとDataで1発解決特集」

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これまでの「Creativity」深くインサイトを狙って、コミュニケーションで価値変容を起こす、いわゆる伝統的なアイデアが主流でした。しかし最近では、すでに顕在化しているニーズや… もっと読む
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記事一覧

ビジネスマンにサステナビリティの課題を自分ごと化させる「EART4」

Summaryブラジルの証券取引所であるB3 Stock Exchangeと、国連が提唱するイニシアチブ UN Global Compactは、企業のリーダーたちがサステナビリティ(持続可能性)の問題をビジネスの一部として重視していないという問題に取り組んだ。 この問題の原因として、「サステナビリティの問題に取り組むことは、単なる社会貢献や慈善活動に過ぎず、ビジネスの利益や効率性とは相反するものである」という誤解がある。 しかし、この誤解の奥には、「自分たちの行動が実際に

ツバルから先進国のリーダーへ挑発的な計画「The First Digital Nation」

Summary気候変動によって国土を失いつつあるツバルの政府は、2050年までに国が水没する可能性が高いにもかかわらず、国際社会がその緊急性や重要性を認識せず、具体的な対策を講じないという問題に直面している。 この問題の原因として、「環境問題の影響は遠く離れた島国にやがてくる問題であり、いますぐ危機に瀕しているわけではない」という先進国のリーダーたちの認識があると考えられる。しかし、その認識の奥には、「具体的な行動を起こすために、問題の緊急性の高さが具体的になって欲しい」と

ディープフェイクを見破ることは人間を認証すること「Certified Human」

Summaryプロセッサのパイオニア企業であるインテルは、ディープフェイク技術が人間の目では見分けがつかないほど進化したことで、世界中で偽情報が増加し、人々の「本物である」という感覚を狂わせるという深刻な問題に取り組んだ。 この問題の根底には、一般社会の「本物の人間かどうかは見た目で判断できる」という誤った認識がある。 しかし、その認識の奥には「事実と信頼性を求める」というインサイトがある。このインサイトに応えるため、インテルは「心臓が血液を送り出す際に肌の酸素レベルが変

政治家の公的資金の出費を可視化する「Transparency Card」

Summaryブラジルの独立デジタルニュースポータルであるCongresso em Foco(コングレッソ・エム・フォコ)は、政治家の公金使用に関するデータが複雑で、一般市民が監視するのが困難であるという問題に取り組んだ。 この問題の原因としては、18歳から70歳までのブラジルの有権者の中に「公的資金は、政治家が自由に使えるためのお金だから、透明性を全て求めることは難しい」という思い込みがある。これにより、データが複雑であることを問題視する世論が形成されないでのはないかと推

文化を守るためのフォント化「Adlam-An Alphabet to Preserve A Culture」

Summary世界的なテクノロジー企業であるMicrosoftは、民族の言語を保存するために開発された手書きのアルファベットADLaMがPCやスマホで使えないため、言語と文化が衰退の危機にあるという問題に取り組んだ。 問題の原因は、「ADLaMは伝統的な手書き文字であり、現代のデジタルコミュニケーションには適応できない」という、世界中のフラニ人の固定観念にある。 しかし、その固定観念の奥には、「自分たちのアイデンティティと文化的遺産を保護し継承したい」というインサイトがあ

舌をインターフェイスに変える「MouthPad^ 」

Summaryマサチューセッツ工科大学のスピンオフ企業Augmentalは、四肢麻痺などで上肢の機能が制限されている人々がスマホやPCなどのデジタルデバイスの使用に困難を抱えている問題に取り組んだ。 この問題の原因として、デジタルデバイスが健常者の使用を想定して設計されており、「デジタルデバイスの制限は、障がい者自身が生み出している制限である」という間違った認識が健常者にも障がい者にもあると考えられる。 しかし、その認識の奥には、「健常者と変わらないデジタル体験と表現の自

無意識下で欲しているメニューを自動で選ぶ「The Subconscious Order」

Summaryサウジアラビアで初の食品配達アプリとして登場したHungerStationは、多くの競合に直面しながらも、最も革新的な食品配達サービスとしての地位を確立しようとした。そこで注目したのは、ユーザーがオンラインでメニューを選ぶのに年間平均約132時間を費やしているという問題。この圧倒的な選択肢に直面することで、脳は決断を下すのが難しくなり、間違った判断をすることがある。 問題の原因は、「多くの選択肢から食べたいメニューを選べることは便利だ」というユーザーの思い込み

声を出さずにタップ操作だけで通報「Knock Knock」

Summary過去8年間で韓国の家庭内暴力が718%増加したにもかかわらず、警察に通報されるケースはわずか2%に過ぎなかった。その理由は、被害者が加害者と同じ空間にいるため、声を出して話すことができなかったから。韓国警察はこの問題に対処した。 問題の根底には、「声を出して話さなければ状況を伝えることができない」という被害者の認識がある。 しかし、被害者はただ黙っているわけではなく、その認識の奥には「警察に通報したい」というインサイトがある。このインサイトに応えるため、韓

複数のデータを駆使して移民の経済的自立を支援「Where to Settle」

Summary経済的機会へのアクセスを増やす「ファイナンシャル・インクルージョン」をビジネス戦略とするマスターカードは、ポーランドがウクライナからの多くの難民を受け入れたが、主要都市の避難所が過密状態に陥っていたという問題と、時間が経過するにつれ、戦争の影響でポーランド経済も不況に陥り始めたという、ウクライナ難民とポーランド経済の双方の問題に取り組んだ。 この問題の背景には、「まずは難民を受け入れることが最優先」という共通の認識があり、その後の持続可能な体制構築が後回しにな

EV充電設備のエアビー「Renault - Plug-Inn」

SummaryEV推進のリーディングブランドとして、EVの普及に力を入れているフランスの自動車メーカーRenaultは、フランス国内の充電ステーションの不足がEV普及の障害となっている問題に注目した。 この問題の背景には、「充電ステーション不足による、航続距離の短さや、遠隔地での孤立への不安」という、EV購入を検討している層の認識がある。 しかし、その認識の奥には、「望んでいることはインフラではなく、いつでもどこでも充電できる便利さ」というインサイトが隠れている。このイン

SNSのスクロールをパーキンソン病の治療法に変える「Scrolling Therapy」

Summaryブラジルの製薬会社Europharmaは、パーキンソン病の治療法として1日に約40分間顔の筋肉を動かすフェイシャルセラピーが有効であるにもかかわらず、その運動が肉体的および精神的に疲れるため、実際にこれを行っている患者が全体のわずか3%に過ぎないという問題に焦点を当た。 この問題の背景には、「40分間のセラピーはただ耐え忍ぶしかなく、苦痛である」というパーキンソン病患者の認識がある。 しかし、その認識の奥には、「楽しく、無理なく表情を動かす方法があればいいの

ビールの副産物を無料のパンに変える「Bread of Nation」

Summary南アフリカを団結させることを目指し、製品の高品質な内面を伝えるブランド、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(AB inBev)は、自社のキャッスルラガービールのブランディングの一環として、南アフリカの広範な飢餓と貧困問題に取り組んだ。 この問題の背景には、「飢餓や貧困といった大規模な問題に、ビールメーカーや個人が影響を与えることは難しい」という社会の認識がある。 しかし、その認識の奥には、「個人ができる解決策があれば貢献したい」というインサイトが存在する。この