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カンヌ2023まとめ「SDGsジェンダー平等問題特集」

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カンヌライオンズ2023より、SDGsにおける「ジェンダー平等問題」を解決しているアイデアをまとめました。
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記事一覧

国際乳がんデーを延期することで乳がん検診先送りを止める「The Postponed Day」

Summaryアルゼンチンの著名なNGOであるLALCECは、多くの女性が乳がんのマンモグラフィー検診を無期限に延期してしまう問題に取り組んだ。 乳がんに関する地域世論調査によると、マンモグラフィーが最も効果的な早期発見方法であることを認識している女性は 10 人中 3 人であった。 そうだとすると、検診を先送りする問題の原因は、女性たちの中に「検診で乳がんが発見されたときにはもう遅い状況だ」という間違った認識があり、検診に行くことに恐れをいただいているのではないだろうか

最終バスを待つ時間の不安を安心に変える「Guarded Bus Stop」

Summaryブラジル最大のOOHメディア会社Eltromidiaは、女性が夜一人でバス停にいる際に感じる不安や危険という課題に取り組んだ。 課題の根底には、「何かあったとしても、ひとりで対処しなければならない」という女性の認識にある。 その認識の奥には、「安全のために、周囲の人々やコミュニティのサポートを求めている」というインサイトがある。このインサイトに応えるため、Eltromidiaは、「遠隔にいる人をリアルタイムでOOHに映し出し、双方向の会話ができる」という技術

レイプ被害は沈黙するべき恥というタブーに切り込む「Dirty Laundry」

Summaryジェンダー平等と女性の権利の推進に注力するレバノンの非政府組織ABAADは、レバノンにおいてレイプされた女性の60%が通報しておらず、加害者に有利な法律が存在する問題に取り組んだ。 この問題の原因としては、「レイプは被害者のせいである」という社会的タブーがあり、家父長制社会において家族の評判を守るために沈黙しなければならないという社会通念がある。 しかし、その社会通念の奥には、「自分たちの声が聞かれ、正義が実現されることを望んでいる」というレイプ被害者のイン

ニュース番組で女性の能力を実証する「Schoolgirl Newscasters」

Summaryパキスタンのジェンダー平等と教育に取り組むビスケットブランドEBMは、パキスタンの女性が社会的、文化的な制約により教育やキャリアの機会が限られているという問題に取り組んだ。 この問題の原因は、「男子は仕事に就き成功する可能性が高いが、女性にとって教育は役に立たない」という認識が、パキスタンの親たち、特に女の子の教育に疑問を持つ人々の間で広く信じられていることにある。 しかし、その認識の奥には、「子供の幸せと将来の成功を願っている」というインサイトがあると考え

法律の管轄外でのピルを処方しホンジュラス女性たちを守る「Morning After Island」

Summaryホンジュラスでモーニングアフターピルの禁止を覆すために奮闘しているNGO、Grupo Estratégico PAEは、ホンジュラスがラテンアメリカで唯一モーニングアフターピルを禁止している国であり、性暴力の被害によって、18歳になる前に妊娠する少女が多いという問題に取り組んでいるが、NGO団体がどんな活動をしても、政治に影響を与える大きな声にはならないという問題に直面していた。 この問題の理由のひとつとして、「ホンジュラスの女性の権利は、政府によってコントロ

自閉症の人々にとって衣服を長持ちさせる価値とは「Me, My Autism & I」

Summary洗剤ブランドVanish(バニッシュ)は、「衣服を長持ちさせる」というベネフィットを訴求したいが、洗剤の広告は効果訴求が飽和しており、普及率が向上しないという問題に直面していた。 この問題の原因は、「衣服を長持ちさせる効果が、自分の生活にどう役立つのかがわからない」という消費者の認識にあると推測される。 しかし、その背景には「その洗剤を選ぶ納得できる理由が欲しい」というインサイトがある。 そこで、人々が洗剤に求める理由を探すために、なぜ人々が服に気を配るの

声を出さずにタップ操作だけで通報「Knock Knock」

Summary過去8年間で韓国の家庭内暴力が718%増加したにもかかわらず、警察に通報されるケースはわずか2%に過ぎなかった。その理由は、被害者が加害者と同じ空間にいるため、声を出して話すことができなかったから。韓国警察はこの問題に対処した。 問題の根底には、「声を出して話さなければ状況を伝えることができない」という被害者の認識がある。 しかし、被害者はただ黙っているわけではなく、その認識の奥には「警察に通報したい」というインサイトがある。このインサイトに応えるため、韓

ルワンダの女性を有給の地域医療従事者に変える「Certified Care」

Summary「すべての人を守る」という使命のもと、20年以上にわたりマラリア撲滅を支援しているSCジョンソン社の防虫スプレーRaidは、マラリア感染リスクが高いルワンダにおいて、マラリアに感染した家族の介護を女性が担っており、それにより学校を退学したり、仕事に就くことができないだけでなく、誰よりもマラリアの感染のリスクにさらされている、という社会問題に取り組んだ。 この問題の原因として、ルワンダの女性の中に「女性が無償でコミュニティの世話をするのは当然」という男性中心的な

有名な映画を先住民女性の真実に書き換える「Missing Matoaka」

Summaryトロントで発行されている、オンラインの先住民の文学、芸術、文化に関する出版物であるMuskrat Magazineは、ディズニーの「ポカホンタス」が本来の先住民女性に対する性的なステレオタイプや、低い価値観を強化する偽りの物語である、という問題に取り組んだ。 この問題の原因として、「ディズニーのような大手や権威あるメディアが発信する情報は正しいはず」という盲目的な固定観念があり、それが真実を見失わせる足枷になっていたと考えられる。 しかし、その固定観念の奥に

偽りの美の基準に背を向ける「#TurnYourBack」

Summary美しさの基準を再定義し、誰もが美しさをポジティブに感じられるよう支援するブランドDOVEは、SNSのBold Glamourフィルターの急速な普及が、若い女性たちに有害な影響を与える可能性が高い、という問題に取り組んだ。 この問題の原因は、若い女性たちの中で「SNS上の非現実的な美の基準が絶対である」という固定観念にある。これにより、本来の自分と理想の自分にギャップが生まれ、自己受容や自信を持つことが難しくなっていた。 しかし、この固定観念の奥には、「自分に

偽りの美しさの代償の大きさに気づかせる「The Cost Of Beauty」

Summary世界的なパーソナルケアブランドであり、自己肯定感と自己受容を促進するブランドであるDoveは、ソーシャルメディア上の外見に関する有害なコンテンツが若い女性たちのメンタルヘルスに危機をもたらし、制御不能に陥っている社会問題に取り組んだ。 この問題の原因として、多くの親が「子どもの外見に関する不満や自己イメージの問題は、成長の過程で自然に解決される一時的な現象である」と誤解していることが考えられる。このため、これらの問題に対して深刻に捉えられず適切な対応やサポート

バレンタインデーを自己愛を祝う日に変える〜愛の形のDE&I 「Self Love Bouquet」

SummaryフードデリバリーサービスのDoorDashは、バレンタインデーの機会に競合との差別化を図ることを考えた。着目したのは4人に1人が一人でバレンタインデーを過ごしているという事実。それにも関わらず、競合他社は伝統的なカップル向けのコミュニケーションに重点を置いており、独身者が置いてけぼりになっているのではないかという問題に取り組んだ。 この問題の原因として、特に18〜30歳の独身女性の消費者の中で「バレンタインデーは『カップルにとっての愛』を祝う日」という固定観念

生理のタブーに切り込む「#Periodsomnia」

Summary生理に関する偏見を取り除き、女性が恐れずに生きることを支援するP&Gの生理用品ブランドLibresseは、激しい競争がある生理用品市場において、生理に悩む全女性に、製品の優位性をアピールしたいと考えた。 そこで、競合の広告は生理中にぐっすり眠っている女性の典型的な描写が多く、生理中の夜間の現実が覆い隠されている。それにより生理の苦痛を個人で抱え込んでいたり、苦痛が「問題」であることに気づかずにターゲットは苦しんでいるという問題に取り組んだ。 この問題の原因は