葛藤に手を差し伸べて インターンとして南伊豆で過ごした日々を振り返る
慣れ親しんだ街を離れ、違う地域で働きながら、共同生活を送る。
宿「ローカル×ローカル(以下、L2)」のインターンでは、宿主のイッテツさんや地域の方々、ゲストさん、他のインターン生など、様々なバックグラウンドや価値観を持つ人と出会う。
[前回の記事はこちら▼]
https://note.com/oiwttatd_/n/n2c20653ae721
出会う楽しさや、親しくなる嬉しさ、役に立つ喜びを溢れるほど感じるけれど。
その一方で、自分自身の至らない部分や課題が浮き彫りになる。
今まで知らなかった暮らしや考え方に触れ、自分が見ている世界が広がるほど、心の中でぐるぐると渦巻く。
でも。
インターンを終えた、いま。
改めて振り返ると、葛藤のそばには、過ごしてよかったと思う時間や、また会いたいと思う人がいる。
今回は、南伊豆で暮らした時間を、もう一度見つめ直してみようと思う。
私は、どう思っているんだろう?
「今は、誰も正解を持っていない時代。俺の意見だって、変わっていく。だから、話半分で聞いてほしい」
これは、インターンとして、一番最初にイッテツさんから聞いた言葉。
聞いたときは、ちょっと驚いた。
私が勤めていた職場は、上下関係が厳しく、同調圧力が強かった。元々が男社会だったこともあり、体育会系である。そう、先輩や上司の言うことは、絶対だった。
でも、実際に私自身の考えも、どんどん変化している。だから、イッテツさんが伝えたいことは、理解できた。
それでも。
「俺じゃなく、自分はどう思うの?」
最初の頃、よくイッテツさんから聞かれていた。その度に、戸惑っていた。
そんなつもりはないのに、また顔を伺っていたのだろうか?
うーん、私自身は、どう考えているんだろう?
そのままではいられない
インターンの一環として、イッテツさんから編集について学ぶ機会がある。
イッテツさんにとっての「編集とは何か?」という考えを聞いたり、「聞く」「書く」についての講座を受け、インターン同士で実践を行ったりする。
きっかけは、「聞く」講座で行われた、とある実験だった。
「聞く」を学ぶにあたり、真逆の聞かない行動をして、どういう行動が相手に話す気をなくさせてしまうのかを知るというものだ。
それは、相手の話している最中に、わざと聞く気がないふりをしたり、相手の話を奪ったりする演技をする。聞かない行動をすると、相手の話す意欲が、どんどん下がっていき、次第に話さなくなっていく。
その実験の最中、ふっと思ったことがある。
私は、伝えることを諦めてしまっていたんじゃないだろうか。
どこか心の片隅で、自分自身でも気づかないうちに。
元いた職場は、厳しいところだったのだと思う。スタッフの入れ替わりも激しいし、時たま怒鳴り声が響くことも、誰かが嘲笑われていることも多い。
その環境で、少しずつ傷ついていたのかもしれない。
次第に、聞き役に回ることが多くなり、会話で頷くばかりになっていった。
自分から話すのが怖い。
それでも。
L2のインターンでは、自分の感じたことや考えていることを書いたり、話したり、言葉にして共有する作業が多い。
怖いと感じながらも、自分から発してみる。
考えてみれば、モゴモゴしたり、取り止めがなかったり、拙かった部分も多かったのかもしれない。
でも、イッテツさんが。周りのインターン生が。受け取ってくれた。
だんだん、怖さと共に、安心も感じるようになっていった。
私を受け止めてくれた人
インターンの、とある日。
南伊豆町で美容室を営む中野美代子さんと、市之瀬という集落を散歩した。
美代子さんのお店から、林のそばの小道を通り、神社に参拝。湧き水を飲み、黄金色に染まる田園の中の一本道を通って、お寺へと周る。
ゆっくり。ゆっくり。
そのころの私は、L2でのコロナ対策に追われていて、いっぱいいっぱいで。
美代子さんと話すのは初めてだったけれど、しんどいことも正直に打ち明けた。
美代子さんは、歩幅を合わせて、私の声に耳を傾けてくれた。
まるで、身を預けて、ほっと息をつくような時間だった。
それからというもの、美代子さんと夫のカズさんは、たびたび私をリフレッシュに連れ出してくれるようになる。
イッテツさんなりの処方箋
インターン期間のとある日。イッテツさんと、深く話をする機会があった。
満月の夜をお散歩しながら、これからの進路を相談する。
その中で、あんまり言葉にするのが得意じゃないことをぽろっと言った。
「うん、知ってる。」
と、イッテツさん。
「書いている記事を読んでいて分かるよ。隠してるというか、そういうつもりじゃないんだろうけど。自分が今、どう思っているのか、考えないようにしたり、避けようとしているんじゃないかなって。」
「自分を曝け出す文章を書いてみたらいいんじゃないかな?俺も書くことで、自分がどう思っているのかを知ることがある。もしかしたら、いいきっかけになるかもしれない。」
それから、自分が思っていることをノートに書き綴ることが増えた。
一度、思っていることを全て書き出してみる。すると、引っかかっていた部分も明確になるし、「そう思っちゃいけない」と、蓋をしそうになっている本音にも気づく。
「書くこと」は、自分の思っていることを整理できるだけでなく、本音を掬い取って、自分を大事にすることにつながる気がする。
そして、回数を重ねるごとに、思っていることが溢れてきて、ペンが進む。
「書くこと」は、意外に私に合っているのかもしれない。
等身大になって
南伊豆で過ごす最終日。自給自足の生活をする、吉澤裕紀さん(以下、よっしーさん)の家にお邪魔した。
よっしーさんの家は、電気、ガス、上下水道が通っていない。全て、よっしーさんなりの工夫で賄っている。
居間の中心にある囲炉裏のそばで、よっしーさんと話す。
私がうまく言語化できないこと、伝えることや説明することにコンプレックスを抱えていることを話す。
「自分では、自分のことは分からないよね。人に聞かれるから、考えるのかな。」
「すぐ言葉が出てくる人って嘘つきだと思うもん、俺。そう思わない?言語化なんて出来ないよね。今だって、じっくり考えて言ってる。」
「聞いてくれる人に伝えればいいんじゃないかな。聞いてくれない人に、無理に話さなくていいよ。」
心のどこかで。自分が変われば、今まで聞いてくれなかった人も聞いてくれるかもしれないと思っていた。
でも。聞く耳を持たない人は、存在する。
今までも、聞いてくれる人がいた。どんなに拙くても、耳を傾けて、言葉を受け取ってくれた人がいた。
確かに、意識するのは大切だけれど。でも、そんなに気張らなくったっていいのかもしれない。
等身大で、足るを知る。
生きるために必要なものが最小限しかない部屋で、
2人で話しながら答えを見つけていくような時間だった。
旅は続く
「まだ、miwaちゃんが、どういう人か分からないな。まだ、ベールに包まれてる感じがする。」
話の最後に、よっしーさんに言われた言葉。
それは、きっと。今の私にも分からない。自分と話をして、心の中の漠然とした塊を、解きほぐして、浮かび上がらせて。
これから、出会うのだと思う。
だから。
ハロー、わたし。
そして、ただいま。
他にも、ここには書ききれないぐらい、たくさんの南伊豆の方々や、ゲストさんに出会いました。他のインターン生が過ごした日々もUPされているので、宿「ローカル×ローカル」のInstagramもチェックしてみてください。
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