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esports(eスポーツ)に関わる(はたらく)ということ(約3,100文字)

私はそれがどんな分野であっても、志す人が増えること自体は基本的にポジティブな要素だと思っています。esportsに関わる何かをしたい、働きたい、という人が増えることも同じで、それ自体はポジティブなこと(ゲームではなくesportsという更に具体的な目的・目標であることもGood)。でもその一方で、私自身も相談をされる側として学生の方であったり、既に仕事に就いている社会人の方であったり、何かしら相談をされるとなかなか素直にポジティブ100%でお薦めできない現状があるもの事実です。

esportsに関する私の話し相手

私自身が自分のことを「ひねくれているな」と感じることもあるのですが、私がesportsの話をよくする話し相手は更にそれとはまた違った形でパワフルかつオフェンシブな人。なんていうか、両手に武器を持って、背中には斧なのか槍なのか、体にクナイなどの飛び道具巻いて、全くもって守る気なし、それでいて常にファイティングポーズで鬼の形相して口が半開き。この人は一体何とたたかっているんだろうと思う一方で、攻撃は最大の防御というか、パワーis正義みたいな議論をしかけてくることが多いのですが、実際は情に厚い面もあり、周りの人たちを大事にしてくれる人でもあります。私の付き合っている友人にそういう常に戦闘態勢みたいな人たちが多いのか、それとも業界やシーン全体的に熱い血気盛んな人たちが多いのかはわかりませんが、少なからず私の周りは日々温度高めです。とりわけ自分の好きなタイトルやお気に入りのプレイヤーの話、思い入れのあるパブリッシャーの話になるともう止まらない止まらない&昔話が大好き(私はそういう話を聞くのが大好き)。とはいえ、特に群れることを好まない(あまり得意ではない)私にとっては限られたごく一部の自分の好きな人たちの話を聞いて、語らい、何気ない毎日を過ごし、今もなお森の奥に閉じこもってesportsウォッチャーとしてひっそりと生活をするという毎日が結構気に入っています。

なぜ100%ポジティブにお薦めできないのか

なぜ、はたらくことについてポジティブになりきれないのか。私なりに考えて整理してみました。
(1)収入が必ずしも高いとは言えない
(2)この先の国内市場の見通しが不透明(esportsに限った場合)
(3)夢や希望のある人ほど向いていない気がしてしまう

このあたりの懸念がついつい引っ掛かってしまうからなのかなぁという。この時点でかなりネガティブなワードが並んでいるのが自分でも気になるところですが。ひとまず、収入の件から。

(1)収入が必ずしも高いとは言えない
これって「今後も全体的に国内でesports関連の仕事に転職した人たちの収入が凄いペースで上がる、いきなりドンと上がる可能性は全体的に低い」ということも含んでいるんですよね。CAGRが市場全体的に高く、それらが期待に繋がっている市場であっても、そのお金の流れに関わっている「1企業」の話となると、なかなかその恩恵を受けるところまでは難しい気がしますし、この数年の間に国内esportsのメインストリームを担うべき主要なPOSTの人たちは既にそれぞれのポジションに就いてしまっているので、今の段階から「他業種からの転職だ!」となると、業界内での横移動ですとか、もしくは必要とされる知見やキャリアパスがピタッとハマらない限りはなかなか難しいのかなぁというのが個人的な印象です。とはいえ「私は好きなことがしたいんだ!」というだけであれば、最低限の生活が担保されることにより幸福度、充実度は上がるはずですので、その場合はこの限りではありません。とはいえ私自身はやはり一般的な転職や就職とは並べられないかなぁと感じてしまいますね。今から行動を起こそうとしている人に関しては副業でesportsに関わる!くらいが丁度いいのかもしれません。

(2)この先の国内市場の見通しが不透明(esportsに限った場合)
「ゲーム業界に関わるキッカケとしてesportsを通じてゲーム業界の企業に入社」みたいな話であれば、良いと思うのですが「私がやりたいのはesportsなんです!」みたいなピンポイントの人の思いに応えるだけの将来性を、今の国内市場が担保できているかどうかと考えると、これもまたYesとは言えない状況なのかなと思っています。全体的に「esports事業がものすごくうまくいっていて未来も明るいです」みたいな企業がなかなか出てきません。一時的に波に乗っている中小企業はあるかもしれませんが、この先もそれらを維持できるか、ですとか市場の変化に適応して今後も安定してやっていけそうです!みたいなところは決して多くはないのではないでしょうか。どちらかというとみんな歯を食いしばってるというか、シーンをリードしているとされる企業の方々もスポンサー営業含め日々必死に活動をされている印象を受けます。大手の代理店の方々も、楽してバンバンesports関連のスポンサー営業が決まっているのかというと、そういうわけでもなさそうです。国内市場全体を見渡す限り、どちらかといえば先行きの見通しがすごく良いというよりは「そうなるために現在絶賛奮闘中」というのが正しいステータスなのかもしれません。

(3)夢や希望のある人ほど向いていない気がしてしまう
発想というものはするのは自由だし、している間は可能性無限大なんですけど、それと「実際に物事を現実に落としこんで形にする」というのは全く別の話なんですよね。私も相談を受ける側の立場になることもあるのですが、esportsの世界に対して自分自身の期待値が高い人ほど「実際に実務に就いて、事業として取り組むにあたり途中で嫌になったり投げ出したりしないかなぁ、大丈夫かなぁ」と心配になってしまうことがあります。自分の中でアイデアや夢を膨らませているうちはいいのですが、実際に現実にする、形にする過程というのは(経験者の方や現場の方の話を聞くとよくわかると思いますが)自分が就いたポジションや入社した企業の市場におけるポジションにもよりますが、なかなかに地味で、思い通りにいかないことの方が多く、大きい夢を描いた人ほど現実との折り合いのつけ方に苦労することと思います。それでもなお、腐らずに進み続けることが出来るか。私自身も周りの友人たちの姿を見て「好きなことを仕事にすることのつらさ、大変さ」は学んできた気がしています。その一方で、もっと楽しそうに、普通にお金を稼いで人生を謳歌している友人もいるわけですからね。どちらを選ぶかは自分次第。

それでも前に進もうとする人たち

こうしてネガティブな内容を書き出してみた一方で、私はゲームそのものも、そこではたらく人たちも、ゲームの競技シーンで活躍するプレイヤーも、ファンも、コミュニティも、好きです。最初に書いた通り、みんなの話を聞くのも好きだし、多くの人が積み重ねてきたものがこのさきどうなっていくのかを見届けるのも私の楽しみの一つです。本当はポジティブな気持ちでこの世界に興味を持ってくれる人たちのことを「一緒に何かやろうよ!」と誘いたい気持ちがある一方で、夢破れ、現実に打ちひしがれ、ボロボロになって去っていった人たちのことを考えるとなかなかポジティブな感情だけで無責任に「さぁご一緒に!」とは言えないわけですね。

とはいえ人生は一度きり。自分がやりたいことは自分の目で見て、耳で聞いて、自分で確かめて、自分で考えて、自分で選択して、それで前に進んでいけばいいのかも。というわけで、みなさんも引き続き良い一日を。

そんじゃーね!

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