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空中戦

よく晴れた日、草っぱらに寝転がって京の町屋の写真集を眺めていた時の話。 少し目が疲れたので空を仰ぐと、突如視界にカラスが入ってきた。 続いてトンビがやってきた。 どうやら両者はケンカをしているらしい。

トンビのほうが体が大きく優勢な様子。 カラスは下から突き上げられそうになり、思わず体を反らす。 すると今度は背後に回られ上から押し付けられそうになる。 防戦一方の展開だ。

ところが次第にカラスは戦い方を変えはじめ、なんとトンビを一方的に攻め始めた。 カラスの作戦はこうだ。

まずはトンビのいる所よりも高く羽ばたいておいてから、トンビめがけて一直線に下降する。 この攻撃が一発でも当たれば、トンビは致命傷を受けるだろう。 でもスレスレのところで、トンビはその攻撃をのらりくらりとかわす。

次第にトンビは戦闘意欲が無くなってきたようで、何度もしつこく突撃してくるカラスをかわしながらも、次第にカラスから離れていく様子。 そしてある程度の距離を保ったところで、大きく弧を描きはじめた。

「おーいトンビー、何やってんの。 遊んでいる場合じゃないでしょう、やられちゃうよあんた」と思わず口に出てしまったが、思わぬ展開が待っていたのである。

グルグル回っているトンビ目がけて、カラスは何度も何度も突撃を続ける。 もはや「勝機我にあり、我この空域の支配者ナリ」という勢いだ。 とどまることを知らない。

ところがそこへ、はるか上空からトンビがもう一羽現れたのだった。

回っているトンビと、突撃するカラスの間に入るようスーッと飛んでくるやいなや、二羽で協力してカラスを撃退する、のかと思いきや、二羽そろって弧を描き始めた。

トンビらは戦う気がない。

しかしカラス的には敵がもう一人増えたとなると、こりゃたまらんということで、突撃をやめ、少し離れた場所に立つ電柱のてっぺんまで移動し、じっとトンビたちの様子を見守る。

相変わらずトンビは回り続けている。

もうカラスの事などどうでもよくなり、二羽で楽しくじゃれ合っているのかと思った次の瞬間、はるか彼方から現れたのは、二羽のトンビだった。

回っているトンビたちの上空を、黒いゴマ粒に見えるぐらい高いところからやってくる二羽に気づいたカラスは「カァー」とも言わず一目散に逃げ出した。

二羽のトンビは回るのをやめ、飛んできた二羽と合流した。 そして「カラスはどこへ逃げた?」といわんばかりにあたりを飛び回るのだった。 そして彼方から、もう一羽のトンビが近づいてくる・・・。

カラスは逃げて正解だった。 5羽のトンビともなると、やりあったところでひとたまりもないだろう。 もしかすると、トンビが弧を描くのって、仲間を呼ぶサインだったりして。

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