"SQUARE"であれ
・よい商品とは?
世の中には沢山の技術職があります。
よく技術、知識を持った人を職人と表現されますが、食肉業界も然り。私自身も職人さんと仕事させていただく機会がこれまでに沢山あり、毎回、その方達が積み上げてきたものの技、こだわりに圧倒させられます。
突然ですが、皆さんは「よい商品とは何ですか?」と質問された時に何と答えるでしょう?
非常に抽象的で難しい質問です。私はこの答えはシンプルだと思っています。私が思うよい商品とは「お客様に喜んでもらえるモノ。お客様が必要としているモノ」であるということです。
例えば、職人さんが自分の作りたいモノだけを作る。これだけで商売が上手くいく。決してそんなことはありません。
当たり前と言われれば当たり前かもしれません。お客様のニーズに応えた商品、お客様に喜んでもらえる商品こそ、よい商品と言えるのではないでしょうか?
・規格について
食品は流通していく中で、ある程度の決まりごとが定められています。例えば、A社とB社にそれぞれ、ロース肉を頼んだとします。納品されたロースがA社とB社で形や長さが全然違ったり、そもそも想像していたロースではなかったり…それを仕入れた側は加工や商売がしづらくなります。たまったもんじゃないですね。そのためにあるのが、標準化をはかる「規格」ということになります。
何が言いたいかというと、よい商品とは規格通りであるということが前提条件としてあるということになります。川上(原料を製造するような現場)では特に重要視されるようなイメージです。
食肉業界の仕事と言われて、一般の生活者が想像するのは、おそらくスーパーマーケットや小売店でステーキ、焼肉、スライス肉を切る仕事。そのお店の多くは部分肉(骨が取られた状態)から取り扱われるお店がほとんどです。
もちろんこの部分肉もしっかりとした、規格が存在します。例えば、皆さんが聞いたことがあるサーロインという部位。何番目の骨と何番目の骨の間で切り分けなさいといったように基本的な決まりがあります。流通を標準化するためにこの部分肉の世界では骨や筋肉を境目にして、規格が決められています。
・重要なカタチ
部分肉からの取り扱いが多い食肉業界で、近年問題になっているのが技術者(職人さん)不足。そのため、誰でも使いやすい形で納品されるケースが多くみられるようになりました。袋を開けてすぐにステーキや焼肉やスライス肉が切れるように、供給者側が今まで以上に手をかけています。このようにBtoBでの流通において使いやすく加工する規格。業界用語でいうところのスペックというものが多く存在しているということになります。
下の写真は、皆さんも耳にされたことがあるでしょう、らんぷ(らむ、ランイチなど)と呼ばれる部位、部分肉です。よくステーキとして提供され人気の部位です。
実は①・②共にらんぷです。①は日本で加工されたらんぷ。②は海外で加工されたらんぷ。牛の種類が違うため、肉の色は大きく違いますがそれ以外の所で大きく違う点があるかとおもいます。
1目みて感じることが2点
・形が違うこと
・脂肪など(白い部分)がついていないこと。
総じて、②の方が形が整っていることがなんとなくではありますが、見てわかるかと思います。これが前回書かせていただきました海外の食肉加工においてそして、世界基準として重要なことの1つ"square"に商品を仕上げるということになります。(全ての部位に共通)
日本の令和元年における牛肉自給率は35%(重量ベース)※農林水産省より
日本では6割強、海外の牛肉を輸入しているということになります。そのため輸入牛肉を業界で働いている人は当たり前のように見ます。更には業界人だけではなく一般生活者の方もスーパーなどでよく見かける身近な存在です。
諸海外から輸出されるということは国内のみの流通とは訳が違い、不特定多数のお客様に牛肉がわたっていきます。商品がより製造者から離れた場所で流通していくため、誰でもわかる使いやすい形にする。
加えて、これは実際に働いみての気付きですが、より数をこなさないといけない海外の製造現場において、できる限り、仕事は早く覚えてもらわないといけない。一方で日本は歩留を意識した加工を行うため、製造工程(細かい技術が求められる)が複雑で覚えるまでに時間がかかる。それぞれに特徴があります。どちらが良い、悪いではなく、squareであるという形(ゴール)が見えた加工は合理的なものに感じます。
「square」はまさに消費する側(お客様)にとって使いやすい形であるだけではなく、加工する側(供給者)もニーズを追求したわかりやすい"カタチ"ということではないのかと感じています。
ものづくりにおいて、やってはいけないことは少なからず存在しますが、正解はないんだ。ということを実感させられます。
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