アーバンギャルドは15周年で何をSOTSUGYOするのか?
大好きなバンド・アーバンギャルドが15周年を迎えたということで、
3/31は記念公演を観に行ってきました。
会場は今年7月に閉館が決まっている中野サンプラザホール。
ふつうの15周年記念公演なら、ただわくわくだけを抱えて観に行けるのですが、
今回の公演名は、”アーバンギャルドのディストピア2023 SOTSUGYO SHIKI”。
どうして「卒業式」なんだろう。
思えば10周年記念公演のタイトルが、"KEKKON SHIKI"=「血痕」式、という言葉遊びだったので、
今回も「そつぎょうしき」だからといって解散したり誰かが脱退したり、アーバンに限ってそんな単純な話ではないはず…!
解散しないよね?よこたん辞めないよね?と友達に呟いたりしながら落ち着きなく過ごしていると、容赦なく幕は上がりました。
「君の病気は治らない だけど僕らは生きてく」というコーラスではじまる「ももいろクロニクル」。
浜崎容子さんの歌声は、いつも歌い出しの1フレーズから、忘れられない響きを放つ。ライヴに行くたびに、最初の声が鮮明に記憶に残っています。
スクリーンには15年間にリリースされた楽曲のアートワークの数々。
浜崎容子さん(Vo.)、松永天馬さん(Vo.&作詞)、おおくぼけいさん(Key.)という現在のメンバーによるメモリアルな演出に、まだハラハラしてしまう。
そんな気持ちをよそに、新曲「いちご黒書」が降りかかってきました。
きっとこの「いちご黒書」は、15(=いちご)周年を迎えたアーバンギャルドの、新たな名刺代わりの曲としての宿命を背負っていく。
その予感が確信に変わったようなステージでした。
最近のアーバンギャルドは、私の観た限りでは、自身のテーマソングのようにも思われている代表曲「水玉病」を、意識的にセットリストから外しているのではないかと思います。今回も、アニバーサリー公演にもかかわらず、人気の「水玉病」をやらないとは。
一方の「いちご黒書」は、「水玉病」のイントロをアップデートしたかのような「パパパパパパ」というヴォーカルや、再構築された「赤く 白く 赤く 塗りつぶして」という歌詞が印象的。
死にたがりの「水玉病」の少女は大人になったのでしょう。たぶん30歳前後の、ピアスをあけてタトゥーも彫った、所謂「強い女」に。
だけどどんなに塗りつぶしたって、大人になったように思えたって、15歳の頃のコンプレックスは、ふとしたときに顔を出し続ける。彼女は「水玉病」の頃の自分を、「一度だけ 死にたかったの だって 生きたかったから」と自己分析する。
巷では、10代を思い出すことは「エモい」と美化され、繰り返し消費されるけれど、アーバンギャルドはエモさを歌わない。
そこに、青い青春や桃色の恋なんてなかった私たちへの救いがある。
「思い出じゃなくて 重い 想い 思い出してよ」
「黒歴史じゃない 赤く 白く 赤く 塗りつぶして」
と、恥を晒しながらも生を更新する選択を、少女の美しい高音、それと対をなす教師か牧師のような男声、時をかける鮮やかなピアノの旋律で彩ってくれる気がするのです。
この曲が2曲目にきたことで、今日はもうどうなっても楽しもう!と覚悟を決めるような気分にさせられた本公演。
生で聴きたかった曲をたくさん味わえて、興奮は次第に最高潮に。とくに「いちご売れ」で紙幣が舞ったところ最高。
中盤では、容子さんが卒業式の答辞を読む演出がありました。
「アーバンギャルドを既にある枠組みに当てはめることを卒業します!」
という内容のもの。
そしてアンコールではメンバー紹介を兼ねて、「人生から、トラウマから、あらゆる病から卒業することをここに証します」という卒業証書が読みあげられました。
極めつけには、「浜崎容子は、アーバンギャルドを卒業しま…せん!!」と卒業証書を破る一幕。
ようやく心からほっとして笑えました。
そして、自分自身の人生を振り返っても、「式」と名のつくものにしっくりきたことがなかったな、とふと思いました。
高校の卒業式、まだ進路決まってなかったし。大学の入学式、なんでみんな黒スーツなんだろ?と謎だったし。大学院の卒業式に至っては体調が悪かった。
そういえば最近インスタでよく見る、高校の卒業式に彼氏が花束持ってくるとかいう文化、まじでどこの世界線??って、それこそ自分の10代を抉られる気分になるんですが…。
でもいいんだそんなことは。陽キャとか陰キャとか、一軍とか三軍とか、真面目とか不真面目とか、肩書きとかジャンルとか。
こんな自分だからこそ、この音楽に浸りきることができたんだから。
そう思わせてくれるライヴを、音楽をありがとうございます。
16年目からのアーバンギャルドも楽しみにしています。
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