唐揚げの味

私が作る唐揚げの味は普通だ。
酒、醤油、ニンニク、生姜で下味をつけた鶏肉に、片栗粉をまぶしてキツネ色になるまで揚げる。
と、ごく一般的なレシピにより作られているので、当然なのだが。

それで夫も子供たちも喜んで食べてくれるので間違ってはいないのだろうが、私はつまらない味…と思いながら食べている。
普通すぎて物足りない。

思い返すと、昨年亡くなった母は、よくテレビなどで見たレシピを紙切れにメモする人だった。
そしてそれを見ながら料理をし、食卓に出してくれた。
うーん…。というものもあったし、美味しい!レシピ帳に加えなきゃね!というものもあった。イマイチなものに関しては母がオリジナルでアレンジをし、家族好みにして出してくれることもあった。

そんなこともあってか、母は私が家を出てからも料理の腕をあげた。
実家に帰って地元の友人と遊んでいても、母の手料理が食べたいがために夕方で遊びを切り上げるほど
、私は母の料理が大好きだった。
そして私は必ずその料理の作り方を聞き、頭に入れて帰るのだった。

きっと今、母が生きていれば
「唐揚げが普通すぎるんだけど…」
と電話をし、最近手に入れた美味しい唐揚げのレシピを聞いていたに違いない。
そのついでにあーでもないこーでもないと他愛のない話をし、程よいところで電話を切っていただろう。

今はネットを使えばいくらでも美味しい唐揚げのレシピが見つかるだろう。
でも私はそれをしない。
母の言葉で母のレシピを聞かせてほしいのだ。

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