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樹上の黄葉【奥入瀬 23/10/27】

今日も今日とてシダが美しい。
林床の美しきシダの緑のおかげで紅葉がまた美しく見えるのです…

と前にもお伝えしたような気がするし、
紅葉真っ盛りな中で、みどりみどりした写真で記事を書くのもなぁ…?

というわけで今日はしっかり秋らしい写真で1本!
でも普通の風景写真じゃ個性がないので、一風変わった奥入瀬渓流の紅葉を紹介します。

それは目線の高さの世界ではなく、頭上の森の世界。


自然界には、地面での生活ではなく、樹の幹の上で生活することを選んだ物好きたちがいます。
「樹上着生植物」と呼ばれる生き物です。

奥入瀬渓流はこの樹上着生植物が特に豊富。
湿潤な環境が保たれやすい条件が揃っている為、
乾燥しがちな高い位置でも、豊かな生態系が育まれています。

そんな樹上で育まれる生態系を代表するのが、今回紹介するシノブというシダです。
春に芽吹き、秋の紅葉の盛りの頃に散るシダ。
その散り際に注目します。

奥入瀬渓流に生息するシダ植物の多くは緑のまま枯れるか、雪に埋もれるかのいずれかで姿を消しますが、このシノブは有終の美を飾るかのように、美しく金色に輝いてから散っていきます。

有終の美が過ぎる!
美しすぎやしませんか…!

トチノキの大木に着生するシノブ
目線が吸い寄せられてしまう

立派な巨木だぁ!と見上げた時には、私も立派です〜!と言わんばかりに猛アピール。

旺盛に生育していることが多く、手の届かない高さなので、全体の印象で観察しがちですが、1枚だけで見てもその美しさに脱帽です。

デザイン性の高さから観賞用としても人気


この樹上着生の世界は、くっつかれる側の樹の種類や大きさ、生育環境の違いによって様々な個性が出ます。

上の写真のように、シノブだけがわんさか生えていることもあれば、様々な生き物たちが混ざり合うこともしばしば。

たくさんの生命を受け止める巨木の樹幹

巨木の上で織り成される豊かな生態系。
この一本の樹そのものが森なんだと思えた、
とてもとても素敵な光景に、シノブのおかげで出逢うことができました。

森そのものとも言えるような巨木が林立する奥入瀬渓流の森。
死ぬまで飽きることはないでしょう。


日毎に色彩が深まるのと同時に落葉も進むこの季節は、樹上の生態系の観察チャンス。
大きな樹を見つけたら是非、上を見上げてみてください。
きっと、シノブが輝きながら風にそよいでいます。


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