映画『ソワレ』感想

この文章はネタバレを含みます。敬称略

脚本・監督:外山文治、プロデューサー:豊原功補、共同プロデューサー:前田和紀、アソシエイトプロデューサー:小泉今日子

和歌山の高齢者施設で演劇ワークショップに参加している俳優の翔太(村上虹郎)は、職員のタカラ(芋生悠)と出会う。祭りの日、タカラが出所直後の父親から性的虐待を受けているのを見かけた翔太は彼女を逃そうとするが、タカラは父親を刺してしまう。二人はとっさに逃げ出し、捜査の目を掻い潜って県内を移動し、和歌山市内に潜伏する。

若い男女の危うい逃避行。三面記事的な面白さもあるが、なにより青春映画として秀逸だ。主演の二人から疎外感、焦燥感、やるせなさがヒリヒリ伝わってくる。撮影も素晴らしく、和歌山市街の路地裏やコインランドリーや安ホテルのうらぶれた風景が二人の心情にピッタリ寄り添っていた。

芋生悠には田舎で鬱屈している女の子の生々しいリアリティーがあり、見事な「クズ」っぷりの村上虹郎とは絶妙なカップルとなった。ちょっと『青春の殺人者』の水谷豊と原田美枝子を思い出した。

なんというか、昨今の日本映画にはないある種の「太さ」を感じさせる映画であった。「新世界合同会社」の次回プロデュース作に注目したい。

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