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3年間付き合って、はじめて名前を呼ばれた話。(前編)


プロフィールにある通り、
私は過去に6年間児童発達支援センターで
保育士として働いていました。
所詮あるあるですが人間関係はよろしくなく、
そのことを書き出すとそこそこしっかりめの
レポートくらいの量になりそうですから、
気になる人がいてもいなくても別でお話でき
ればなと考えています。

私が勤めていたところをA園としましょう。
A園は母子分離型で、療育が必要とされる子(未就学)
が通う通所型の事業を行っていました。
どの子が通所できます、できませんという明確な規定
がある訳ではなく(受給者証はもちろん、他にもあったのかもしれませんが…)
保護者から園の相談窓口に電話があったり、
健診で引っかかったり、
保育園や幼稚園から気になる子がいるからと相談があったり。
入口は様々ですが、いずれにせよ確実に言えるのは、

子、または保護者に助けが必要である

ということでした。


そのようにしてA園に集まった子どもたちは、
3〜4クラスに分けられます。
私は保育士としてこの園に所属していましたから
そのうちの一つのクラス担任として働いていた、
という訳です。
単純計算で1年に1クラス持つ訳ですから、
6つクラスを受け持ったことになりますね。
今日のお話は、その中の1クラス、またその1クラスの中の1人の男の子のお話です。



名前はS君。
2歳半の冬、その子は園にやってきました。
未就学ですと診断名がつかないことがほとんどですが、
その当時の心理の先生に伺った話では、
・自閉傾向あり
・知的発達遅滞あり
とのことだったと記憶しています。
おめめがくりくりで赤茶っぽい髪の毛、すらっとした
男の子でした。
その子はもともと関連施設でもっと小さい時から
関係者の中では療育が必要なのではと話に上がって
いたそうでした、親子ともに。
とりあえずお母様のお話は少し置いておいて、
S君のお話をしましょうね。
S君がクラスに入った時は、通園用カバンに強くこだわっていて片時もカバンから離れられませんでした。
今も同じような関わりをしたかと言われれば分かりませんが、その時はS君がカバンを気にしていない一瞬の隙を狙って隠し、カバンに気が向かないよう保育士が他の遊びや課題に誘いかけていくという方法で関わっていました。
カバンがないことに気付き、泣いたり怒ったりすることがありましたがそれも長くは続かず、2週間もするとかばんへの強いこだわりは無くなっていました。

自閉傾向があるお子様に見られがちな特徴として、

・物や場所、人等に強いこだわりがある
・こだわりは移り変わる
・こだわっていることや物がなかったり実行されないと 
 パニックになる
・気持ちの切り替えがしづらい
・感覚過敏がある
・高い声や奇声がある

この辺りが、テキストや一般の知識としてよく掲載されている特徴ではないかと思います。
他にももちろんあり、一概には言えませんが。
保育士は診断の専門家ではありませんから、あくまで、「このような傾向がある子は今まで〇〇って診断がつくことが多かったなぁ」等の経験則による仮定でしかありません。それでもS君は自閉傾向総なめ、これを自閉傾向ありと言わずしてなんと呼ぶ、と言ってもいいくらい顕著であったように思います。

ただ、S君は人と関わることが好きでした。

子どもと関わることは苦手だったけど、
大人と関わることは大好きでした。
クラスに慣れるにつれてふざけるようになり、
保育士の話もよく聞いていて、
(聞いているだけで話や指示に応じるかはまた別問題)
愛嬌のある可愛らしい男の子でした。
季節はそろそろ3月、
クラス替えの時期がやってきます。
S君とは離れ離れになっちゃうのかなぁ、
せっかく仲良くなれたのになぁなんて思っていました。


4月のクラス発表があるまでは。



後編へ続く。



※補足※
プライバシーを心配されたそこの貴方、
優しい方ですね。
ご安心ください、ここに載せるお子様のお話は限りなく実話に近い作り話です。
名前やその子の様子等、所々にフェイクがあります。
安心してご覧ください。

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