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"大学の基礎研究はどのように社会に貢献するか" OICX nights #3 開催レポート

大学発学生ベンチャーで100億の時価総額を生み出した伝説のスタートアップ拠点OICXとそのOB達は、次なるステージ「東海発グローバルベンチャー」へ挑戦を続けています。これを応援するために、世界を舞台に活躍する著名な起業家・投資家・経営者・科学者をお招きして、OICXメンバーと交流を行う、OICX nights を開催しています。

OICX nightsは、"Take Off to High" に基づいて、さらなる高みを目指すゲストを招き、東海エリアの挑戦者たちがポジティブなエネルギーを得る機会です。

12月5日(火)に開催された第3回目では、東海国立大学機構名古屋大学総長である杉山 直 氏が登壇。大学のトップであり、宇宙論研究者でもある杉山総長に、名古屋大学におけるスタートアップ支援の施策と、相対性理論などの基礎研究がどのように社会に影響を与えているのかについて、語っていただきました。

杉山 直(Naoshi Sugiyama)
東海国立大学機構名古屋大学総長

1961年生まれ。神奈川県出身。理学博士(広島大学)。84年3月早稲田大学理工学部卒業、86年同大学大学院理工学研究科博士前期課程修了。89年広島大学大学院理学研究科博士後期課程修了。東京大学理学部助手、京都大学大学院理学研究科助教授を経て、2000年国立天文台理論天文学研究系教授。06年名古屋大学大学院理学研究科教授、17年同理学研究科長・理学部長、19年同大学理事・副総長(統括・総合調整担当)。20年東海国立大学機構理事(研究・国際担当)、名古屋大学副総長(筆頭、統括・研究担当)。22年東海国立大学機構大学総括理事・副機構長、名古屋大学総長に就任し現在に至る。専門は理論天文学、天体物理学、宇宙論など。

名古屋大学のスタートアップ支援は、新たなフェーズへ。

大学の役割とその教育方針に関連して、他組織との連携、ベンチャーキャピタルの組織化とミドルからレイターの分野への支援の拡大、学部生への教育方針が紹介されました。

名古屋大学は、教育、研究、創業を包括するプログラムを開始しました。このプログラムはディープテックシリアルイノベーションセンターが主導し、STATION Aiやシンガポール国立大学との協力のもとスタートアップ支援を強化しています。また、ベンチャーキャピタルの組織化も進め、幅広い分野への支援を目指しています。大学全体でのアントレプレナー教育が強化され、特に学部1、2年生はSTEAM教育を通じて本格的なビジネスの学びに取り組んでいます。

ここから、話題は杉山先生の専門分野である宇宙に移ります。テーマは、20世紀の物理学に大きな革命をもたらした、相対性理論です。これは、重力の影響を考慮しない特殊相対性理論と、重力の影響を考慮した一般相対性理論から構成されています。

特殊相対性理論は意外と難しくない

私たちが普段何気なく生活している範囲では絶対的なものだと感じる空間も、実は観測する視点が異なると大きく変化してしまうという不思議な理論ですが、順を追って解釈を試みると高校生でも理解できるそうです。

特殊相対性理論は、時間や空間が絶対的なものではなくなるという、非常に興味深い現象を説明しています。たとえば、特殊相対性理論では、光の速度に近づくと時間が遅くなったり、物が縮んだりする現象が起こります。このことは、実は高校物理のレベルでも理解できるのです。

重力を考慮するのが一般相対性理論

一方で、一般相対性理論では、重力の影響を考慮に入れます。重力が存在すると、時間が遅れたり、空間が曲がったりします。例えば、ブラックホールのような現象も、この理論で説明されます。この理論によれば、宇宙は広く、様々な現象が起こり得ることが分かります。

相対性理論は、宇宙論や物理学において非常に重要な理論です。これらの理論は、我々の理解を深め、新たな発見への道を開く鍵となっています。

GPSは相対性理論が無ければ実現しなかった

GPSの精度維持には相対性理論が不可欠でした。相対性理論を考慮に入れないと生じるGPSの位置情報の誤差が大きく、位置の把握に必要な性能を獲得できません。

GPSの精度を保つためには、衛星からの電波を正確に捉え、時間を正しく決定する必要があります。電波は秒速30万kmで進むため、1万分の1秒の誤差があれば、電波はその間に30kmも進んでしまいます。このため、GPSの精度を維持するには1億分の1以上の精度で時間を合わせる必要があります。相対性理論を考慮に入れないと、GPSの位置情報が12kmもずれることになります。

タイムマシンや、どこでもドアは、実現可能か?

ここからテーマは、広い宇宙の中でも特に未知な領域である、ブラックホール、ホワイトホール、ワームホールの話に移ります。

ブラックホールは、強力な重力を持ち、光さえも脱出できない天体です。ブラックホールの近くにいくと、時間が遅くなる現象が起こります。一方で、ホワイトホールは、数学的にはブラックホールの存在を前提としていますが、実際にはどのようにして作られるかは分かっていません。ブラックホールとホワイトホールを結ぶワームホールが存在すれば、タイムマシンやどこでもドアのようなものが実現可能になります。しかし、ワームホールはすぐに潰れてしまうため、負のエネルギーを注入するなど、難しい問題があります。

この研究分野がビジネスに繋がるには時間がかかるかもしれませんが、応用研究が進めば人類の飛躍に大きく貢献することは間違いありません。

科学の進歩と社会への影響

原子爆弾の発明が代表されるように、科学の進歩が必ずしも社会の幸福につながるわけではないという前提のもと、参加者からは「科学者としてどのように向き合うべきなのか?」という質問がありました。

科学の進歩が社会の幸福に直結するとは限りません。例えば原爆の開発は科学の進歩の一例ですが、多大な破壊を引き起こしました。また、AIのような技術も人間を超越する可能性があり、未知のリスクを含んでいます。科学者としては限界まで科学を進める意義があるが、社会的な受容と倫理的な問題も考慮する必要があるでしょう。

今回は、大学がアントレプレナーシップ教育を行う意義から、相対性理論のビジネスへの応用、ブラックホール、ワームホール、AIの進歩まで、多岐にわたるテーマについて議論されました。基礎研究がどのようにイノベーションをもたらすのか、そして科学の進歩がもたらす可能性と限界について考えることは、今後も重要な課題でしょう。

杉山先生、ご登壇ありがとうございました!

1月19日(金)開催!第4回OICX nightsもお見逃しなく!

OICX nightsは、引き続き世界を舞台に活躍する著名な起業家・投資家・経営者・科学者をお招きしたイベントを開催しています。

1月19日(金)夜に開催される第3回目のイベントでは、株式会社ABEJA 代表取締役CEO 岡田 陽介氏をゲストにお招きします。

現在参加者絶賛募集中です。ご興味ある方はぜひお申し込みください!
▼参加お申込はpeatixから(60秒で簡単登録)

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