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誰でもMix師になれる(Mix師 is dead)

Wavesのサブスクがスタートしてからまぁ楽しく研究を言い訳に毎日触りまくってるわけなんだけど、このサービスちょっといろんな意味でブレイクスルーになってるな、と。

特に「歌ってみたをやってるけど曲を出すたびに他の人に編集をお願いしている」という人たちにとっての恩恵がめちゃくちゃ大きい。その辺りをかいつまんで説明していきたい。

サブスクに関しては少し情報が欲しいという人は、こちらを見ておいていただきたい。

Waves騒動の本音部分
https://note.com/oichan_d/n/n7e45cc3c9722

MIX師のやってること

あくまで一般論的に説明してみる。
歌ってみたをやる人たちにとっては、楽曲製作者様が「商用利用しないならカラオケ音源として使っていいよ」といって公開してくれているinstなりoff vocalなりの音源を使って、自分の歌を録音する。これが一連の流れ。

この音源、カラオケ音源も自分の歌った録音もバラバラの場所でバラバラの機材で行われているので、普通に聞くとバランスが猛烈に悪くなる。そこで、音響なりに詳しい人がバランスを整えて「曲として聞きやすくする」という行為をniconico動画なんかでやり始めたのがスタート。

簡単にいうと、「楽曲と声を馴染ませる」というだけのはなし。もちろん、今時はピッチの修正をしたりもあるんだけど、そんなものは歌う人が頑張れば不要なので、作業としては基本的に馴染ませるだけ。

そして、その馴染ませるってのは難しい
だからお金払ってでも!ってなっているのが昨今。

あと特徴的なのは上に書いた通りカラオケ音源と声だけをいじることが大半なのでトラック数が少ない。本当に馴染ませることに注力する作業になる。

いろいろ調整してもトラック数は少なめ

エンジニアが普段いじっているのはカラオケ音源ではなくて楽器単位で複数トラックをいじっていることがほとんどなので、50トラック以下で収まると結構削れたな、となるぐらいたくさんいじっている。

普段の作業途中。ここから倍以上には増える・・・

これはどっちが偉いとかではなく、歌ってみたの人たちの求めるものが馴染ませるという一点だからというだけの話。

ちゃんと歌ったなら自分でできる時代

上記導入で書いたWavesのサブスク実験をやっていて気が付いたことなんだが、この馴染ませるという部分でいうと数回クリックすると実はほぼ終わっていた。嘘みたいだけど10曲ほど歌ってみたの素材で実験したが、馴染ませるだけなら本当にすぐに終わったし、知識も不要だった。
必要なのは「自分はこれが好みだ」という耳だけ

ここから、これだ大体終わるぞ、という作業を説明しよう。Wavesのサブスク機能を使って。毎月3000円ちょっとでひと月だけ契約もあるので、毎月お金を払って誰かに依頼している人にとっては試してみる価値は十分にある

Studio verseがマジでマジ

既存のユーザーにとってはWavesのStudio Rackを使うことになるがこれがすごいので、実際にみていこう。

まずは準備

まずは準備。カラオケ音源と歌声を並べてみる。
この時ある程度音量のバランスを整え得ておくとうまくいくことが多いので、編集まで行かなくていいのでこの段階で再生ボタンを押して曲と声のバランスだけ整えておくといいだろう。
耳で判断が難しいのであれば、全部だいたい-10dBで再生されてるようにする、と決めてそこに合わせてしまって大丈夫。

これで準備は終わり

Studio Rackを起動

起動

ひとまず起動。カラオケ音源に対してインサートしてみよう。この段階ではなんの意味もない。
ここではタグ検索でCharacterから好きなのを選ぶといいだろう。

検索候補多いのでそれなりに目的に応じて

これには理由があって、基本的にWavesはプロ向けメーカーなのでカラオケ音源そのものに対して適切なものが現段階ではそこまで多くない。なので、こういう感じの色付けをして欲しい!を選ぶとちょうどいいのが見つかりやすい。明確にバンドサウンドなどであればRockみたいに決め打ちでももちろんオッケー。

候補が鬼のように並ぶ

そしたらこんな感じで候補が並ぶ。そこから好きなの選ぶだけだ。選ぶと即時反映されるので気に入らなかったら違う候補についてるLoadボタンを押して次から次へとチャレンジしていけばいい。

基本的には繰り返し

次に歌ってみたボーカルトラックになる。やることは上と同じなんだが、Vocal用の候補の数がとにかく多い

声ならこれが楽

声の場合はもう面倒だから上のScanボタンで聴かせて候補出ししてもらった方が早くて楽。

ボーカル用はとにかく多い

というわけで声に対しても同じように気に入ったものを探せばいい。声に対しては本当に種類が多いので見つからないということはないはずだ。

そして馴染ませる!

それぞれのトラックに対して上記の作業をしただけで正直なところ思ったよりも完成度は高いはず。そこからさらに馴染ませるを行なっていき終わらせたい。

やることはマスタートラックに対してStudio Rackを差し込んでMasteringとかMaster busとかMixingとかMix busとかのタグから選ぶだけ

聞いてみればわかるが、マジで恐ろしいまでに馴染んでいることがわかるはず。

AIミックスとの違い

このWavesのサブスクでの半自動化とAIミックスの違いはわりと現段階では明確にある。というのも、AIは「こういう理由でこうします」というルートで最適解を目指すので、無難な着地にはなるが面白みという点ではほぼない。
方やこちらは人間が自分の好みで選ぶこともあるし、選ぶ候補も人間が作っていることもあり、個性なりが明確に出るしわりと強めの音になりがちだ。どっちが素晴らしいとかいうつもりはない。ただこういう違いがある。
とはいえ、現在では、でしかない。AI関連の進歩速度なんて分からないほど速いのだから。

数人に趣旨伝えて感想聞いてみた

・馴染み方が異常によいですね・・・怖い
・これ本当に音量以外調整してないんですか?マジで?
・サブスク安すぎでしょ、この能力
・トッププロが作るテンプレってすごすぎですね・・・
・8時間かけてこれより下手って無限にいるので、みんな導入した方が幸せになれる

プロが商業制作をやるのと比較するとかではなく、歌ってみたのミックスと言われる部分でいうと、これで文句が出ることはないという感想は多かった。

Mix師は不要になるのか?

現在Mix師と呼ばれる人たちは不要になるのかというと、なるとも言えるしならないとも言える。というのも、録音というものは根本的には難しい技術になるので、ネットで情報を集めるだけでは上手くならない。
つまり、自分で録音の経験があり音響の知識もある人という存在に相談するという部分は残るだろう。とはいえ、そういう人たちが多いかどうかは分からないが。

レコーディングの経験がある歌い手、がいればそれで十分とは言える。
スタジオ経験がある上で宅録環境もある程度整えている。それでいて自分で歌を録音するという人たちの重要度が上がるんじゃないだろうか。

このサブスクサービスを使うと今で言う金と時間がかかるだけの人たちは完全に不要になる。だからこそ、ちゃんと知識と経験のある人たち以外は違う形を強いられるだろうなぁ、と。

道具が安くなり誰もがMix師を目指せる社会から
技術も安くなり歌い手全員がセルフミックスができる社会

こう言うパラダイムシフトの真っ只中なんだと言うことを実感させられる。


この記事はカンパ記事です、ここまで無料で読めるしこの下にはなんのテキストもありません。カンパしたい奇特な人がいればありがたく頂戴します。


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教える立場なのでできる限りはワークショップなどで教えた内容を説明していこうかなと。地方の人やワークショップに事情があって参加できない人たちへのサポートが今後もやっていければと思っています。