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第11回|たまねぎ図書さんインタビュー【後編】

「大谷でできることを増やす場所」OHYA BASE管理人です、こんにちは。
OHYA BASEでは、たまねぎ図書「くらしのゑ」もいよいよ終盤。
会期は19(日)までです。
そしてインタビューも【後編】へ。
未読ならばまずは【前半】をどうぞ。


挫折 「あんなのがいたら、もうやっていけないや」

さっき原体験みたいな話を聞けましたけど、子どものときから「絵が得意」って自覚ありました?

ただ好きで、描いてた。
見て見て!とかはあまりなかったかなぁ。
けど、先生が勝手に自分の絵を出品したら賞獲りましたとか、卒業アルバムにイラストが使われてたり、とかあったので、よく見てくれてるのかな、ぐらいの実感はあった。

見てもらえることは嬉しい?
やめて!恥ずかしい!とかはなく?

うん、嬉しい、ですね。

じゃあ、逆に、絵で、挫折の経験って、あります?

うん、何回かしてる。
僕は高2から美術部で、部長もやってたんだけど、同じクラスに帰宅部で放課後はバイクいじってるだけってヤツがいたんですよ。
ちょっと不良なんだけど、乱暴とかじゃなくて、おとなしくてただバイクが好き。
だけどね、そんな彼がちょっと絵を描くと、「すげー!」とか言われてクラスでみんなにちやほやされるんですよ。
学校で月に何度かちゃんと校章をつけてるか調べる日があって。
もちろんみんなつけてきてない。
その時に彼が、みんなの分の校章を手描きで作る…!
それで全員乗り切るわけです、絵に描いた校章で!
それ見たら、敵わないな、って思った。
あんなのがいたら、ちょっと、もうやっていけないや、って、笑。

でも描くのやめなかった?

うん。
ずっと絵は好きで描いてて、敵わないヤツがいて、挫折もしたけど。
でも「この先どうしよう?」って思ったときに、長く続けていけるものはやっぱり絵しかないか、と思いとどまった感じかな。

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たまねぎさんの画材のひとつ・コンテチョーク


勘違い「世の中にはいい絵本がない!」

ちなみに「絵本」を志すきっかけも高2のとき、将来の方向性を考えるタイミングで。
すごい勘違いなんだけど「世の中にはいい絵本がない!俺が作る!」みたいなところから始まって。
いや、もう、浅はかっていうか、周りにある絵本を全然見てなかった、っていうことなんですけど。
今思うと本当びっくりしますが「わたしのワンピース」っていう絵本を「あんな絵本しかない」っていうふうに思ってたんですよ、笑。

あの名作絵本を、笑!!!

自分がもっといい絵本を作れるはずだ、と、笑。
でも、勉強すればするほど敵わないです。
自惚れてますよね、いやぁ、本当に自惚れてました…。

でもそういう若さゆえ、無知ゆえ、の勢いも大事ですよ。
調子に乗ってるときにしか出せないパワーみたいなものって、場合によってはいいパフォーマンスを生む、とわたしは思ってます、笑。

自主制作の手のひら絵本「口の中のジョーノ」(2021)

その後も絵の勉強を?

高校を卒業して、グラフィック系の専門学校に行ってました。
絵本の授業があるっていうことで入ったんだけど、行ってみたらそんなになくて、苦笑。
代わりに同級生にイラストを描く人が結構いて、そこで切磋琢磨した。
やっぱり見せ合う機会がある、っていうのが良かったのかな、って。
絵ってね、やっぱり見てもらってなんぼなんですよね。
自分と違うタイプの絵を見たり、褒めるし批判もするし嫉妬もするし、とか。
自分で描いて満足してるだけじゃなくて、見てもらう、意見をもらうっていうのが、たぶんいちばんいい活動のかたちなんじゃないかな、って思うんです。
そういうのがないと成長しないというか。

今は、ここに来る作家さんの活動とかに、とても刺激を受けてる。
すごく有名とか、活動が安定的にできているってわけじゃなかったりもするけど、これから頑張っていこうとする勢いがあるというか、やろうとしてることが面白い人ばかり。

なのでここでも、刺激を受けたり嫉妬をしたりしながら、いい状態で活動できてるかな、って思いますね。

OHYA BASEでの個展開催事例
信江彩乃「ぬう、すく、あむ」(2021)展示風景
OHYA BASEでの個展開催事例
信江彩乃「ぬう、すく、あむ」(2021)より作品の一部


OHYA BASEでの個展開催事例
德田真奈美「日々、をかし」(2022)より作品の一部
OHYA BASEでの個展開催事例
德田真奈美「日々、をかし」(2022)より作品の一部


絶望の活動停止から、「仕事も絵もできる」今。

OHYA BASEの話題に戻ってきたところで、ちょっと聞いてみたいのですが。
ここに来るまでは、なんで活動停止?休止?してたんですか?

再開するきっかけがなかった。

そもそも活動停止するきっかけは?

食べていけないから、笑。
例えばポストカードだったら一体何枚売れば食ってけるんだ、っていう絶望感があり、笑。
それで、仕事をするってことになった。

絶望感、笑。
それまでは絵一本でやってこう、っていう時期もあったんですか?

そう、ありましたね。
バイトして、絵を描いて食べていこう、っていう時期も20代とかは。

で、絶望し、会社勤めをするとなったら、絵はぱたっと描かなくなっちゃった?

ちょこっとは描いてたけど、活動をする、というほどのことはしなかった。

会社員やりながら、絵の活動もするっていう選択肢はそのときはなかったんですね。

たしかに、なんでだろう。
当時、就職できるリミットみたいなのをなんとなく感じていて。
これを過ぎちゃうともう無理だろうな、と思いながらギリギリのところで就職して。
なんかそれが必死すぎて。
もう社会人としてやってかなきゃダメだ、みたいな。
本当は絵を描くのがやりたいことなんだけどね。

なるほど。
じゃあ、社会人経験を積んできて「ながら」でもやれるのかなぁ、と思えるようになったぐらいの時期にOHYA BASEで巻き込みの波がきて、めでたく活動再開した、と。

歳をとって、心に余裕ができたというか。
あまり思い詰めなくても、仕事も、絵もやれるようになった、というのもある。

肩の力が抜けて、ちょうどいい感じのタイミングで大谷町に巻き込まれてくれたんですね!(ぐっ!)
大谷町・OHYA BASEに関わるようになって印象的な出来事とかってあります?

コレ!っていうエピソードではないんだけど。
大谷で今、リアルに働いている人が周りにいて、その人たちが定期的にOHYA BASEに顔を出しに来てる。
その人たちの話を聞ける、っていうのは、なんかすごく魅力的というか興味深いです。

そんな大谷町とかOHYA BASEでこれからやりたいこと、生み出したいこと、あれば教えてください。

活動の目的は絵本を出すことなので、絵本を出版できたら、いいなと思ってます。
自費出版じゃなくて、出版社からの出版が活動の目的、ですね。

高校のときに決めたことが、どうしても引っかかってて。
自分に課したタスクというか、呪いというか、笑。

使命、ですね。
松本大洋の「東京ヒゴロ」みたいな感じもする。

友達にも言い続けて「出世払いで」ってお酒奢ってもらったりしてるから、頑張らないと。

いい友達だ、笑。
では最後にOHYA BASEってどんな場所?

これからいろいろ創れる場所。
自分も創れるし、街も創れるし、仲間も創れる。

良くも悪くもできあがってない、というか。
がっちりしてたら入り込めないところもあるけど、まだまだ全然。
興味がある人はどんどん入れる場所。

うんうん!
ありがとうございました!


〜インタビュー後記〜

今回登場してくれたのは、作家・たまねぎ図書さんでした。
インタビューで初めて聞くことも多く、興味深くお話を伺いました。
構成の都合でカットせざるを得なかったのですが、敬愛する大竹伸朗に触発されてノイズミュージックのバンドを組んでいたことはここにしっかり記しておきましょう。

さて、締めの恒例。
管理人の独断による、たまねぎ図書を知るための3つのキーワード。

山を歩くたまねぎさんの足もと

1. インドアとアウトドア、街と山、こどもと大人、境界をひょいとまたぐ人
2. ファンタジーと狂気
(…たぶんそれは紙一重)
3.
根っからのやさしい人

たまねぎ図書さんの個展「くらしのゑ」は19(日)まで。
最新情報はたまねぎさんのinstagramアカウントでご確認ください。

次回の投稿は7月中旬予定。
管理人よりもずっと先にOHYA BASEで動き始めていた人、そう、OHYA FUN TABLE 店主・大友さんにお話を聞きますよ。
言わずと知れた、大谷町のおいしいがぎゅっと詰まった地産地消レストラン。
どんなお話が聞けるか楽しみにしていてくださいね。

OHYA BASEは「大谷でできることを増やす場所」です。
それではまた次回!

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