008 二次創作小説 雪村あおい、曲伊咲と中見元太と遭遇

 山ガールは難しい。
 わたし、雪村あおいが本格的に山を始めたのは高一の時。その時久しぶりに出会った倉上ひなた(ちゃん付けする間柄じゃないです)から誘われてからですが、それでも高二で富士登山のリベンジする頃にはひなたを含めて女友だちとパーティーを組み、はたから見れば立派な山ガールの一人になってた。
 だからこの日、久しぶりに五人パーティーでの富士登山、二回目と同じルートにしたから周囲を気にする余裕が出来たんだと思う。ひなたの他に斎藤楓さん、青羽ここなちゃん、黒崎ほのかちゃんと五合目の登山口で停滞してた時、妙な一行、三人組に出会った。ちなみに「停滞」は山用語で登らないって意味。わたしも一回目の富士登山に失敗した理由、高山病を避けるための方法なんです。
 高山病とは身体に十分な酸素を取り込めないことからくる様々な症状、頭痛、吐き気、倦怠感などなど。登山を断念して下山すれば何事もなく動けるようになるけど、わたしの場合は失敗の敗北感が半端なかった。高山病の本当の症状、下山後の憂鬱症なんじゃないかと思うほど。
 そしてわたしが見つけた三人パーティーに話を戻します。
「ねえひなた」
「何、あおい?」
「あの三人、ちょっと変じゃない?」
 売店が立ち並んでこれから登る山屋、山ガールが思い思いに買い食いしている中、その三人は周りを見ながら佇んでた。ひなたはもちろん、かえでさん、ここなちゃん、ほのかちゃんも目を向けてくれた。
「確かにあの少年少女、登山慣れしてないね」
 さすがわたしより周りが見えてるひなた。背格好やトレッキングポールの持ち方、顔つきなどから一瞬で初心者と見抜いた。でもわたしの気がかりは付き添いの女性。
「かえでさん、付き添いの人、どう見ますか?」
「私も全国の山岳会に知り合いがいるわけじゃないからあれだけど」
 そこで考え込むかえでさんだけど、一番の年長者。誰も先を促さずにじっと待つ。
「堂々としてる割には今言ったひなたちゃんの指摘、言わないのよね」
「それはどういうことでしょうかかえでさん」
 これはここなちゃんの台詞。実はわたしが失敗した高一の富士登山の時、中二でありながらわたしと同学年のひなたと一緒に頂上でご来光を見た幸運な山ガール。
「監視する必要がある」
 この台詞は黒崎ほのかちゃんのもの。ひなたとわたしの思い出の山、谷川岳で出会った、わたしたちの五人パーティーの最後の一人。
 わたしはみんなを見渡し、今回の富士登山の目的、リーダーのわたしが決めたことを知り、それに同意してくれたことをわたしも知った。これが山ガールの辛いところ。趣味で登りたいと思っても様々な対処を知ってるから、山では毎回ちょっかい出したくなる気が起きる。
 それでも緊急事態なら別。付き添いがうまく対処すればわたしの初めての富士登山失敗のように周囲は見守るだけだけど、そうでない場合、付き添いがあてにならない場合はわたしのいる山岳会の仲間からも積極的介入していいと言われてて。
 この三人パーティーがそうなんじゃないかと、わたしたち五人パーティーはそう決め、わたしが率先して声をかけることにした。

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