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075『ガールズバンドクライ』第11話「世界のまん中」、感想

 改めてガルクラは仁菜ちゃんが主人公と確認した回。前回で家族からバンド活動を応援してくれることを確認でき、フェスに全力投球できる条件が整った。だからよりよい楽曲のために微調整する気配りも見せることが出来た。しかし本格的な演奏の練習が出来るか疑問な狭いスタジオ、物販はしてるけどCDやレコードはないらしい貧乏バンドの笑える悲哀を描いてくれました。その意味でもフェスへの出演、トゲナシトゲアリにとっては大勝負と分かる描写。
 しかし一人浮かない表情はすばるちゃん。バンド名が決まってない、新川崎(仮)にする前から桃香さんと仁菜ちゃんと一緒にやってきた仲間だけど、やはり桃香さんと仁菜ちゃんの仲は強固だし、(元)beni-shouga組のルパさんと智ちゃんの仲にも付け入る隙は無い。だからすばるちゃんが(ドラムスで全体を見る立場なこともあり)孤独を感じるのも納得。特にフェス前夜、思い出の嘘つきTシャツを見ての一言、能天気な仁菜を非難するようでもある。
 そしてフェス当日、トゲナシトゲアリの前に歌ったダイヤモンドダスト。上手くなったという桃香さんの評価ももちろんだけど、(奢った言い方すれば)かなりロックだったことに驚きました。昨日の記事で指摘したロックでの高音の使い方、確かに途中から目立つ大きさでないもの警告音のように聴こえました。
 しかし仁菜ちゃんはそんなこと知ったこっちゃない。親友だったヒナちゃんがボーカルを取っているだけで盛大なトゲを放出。そしてここで(もしくはダイダスの一曲の時だったか?)仁菜ちゃんとヒナちゃんの仲違いの経緯が明かされた。ヒナちゃんはいじめに加担したわけではないけど、最後まで庇ってくれるわけでもなかったらしい。それを仁菜ちゃんは「妥協しろ」というメッセージとして受け取り、お姉ちゃん以外に味方してくれる人がいない熊本から(気持ち的に)追い出されたと思ったと憶測しました。
 しかし遠くてもトゲトゲの五人が観てたのはバレバレだったらしく、ダイダスの四人は突き出した左右の手、小指を突き出して見せた。それだけで視聴者はもちろん、トゲトゲの他の四人も桃香さんと今のダイダスの関係が暴かれる。多分桃香さんの方から仲直りしたんだ、安心したと。
 話は(多分)前後するけどテントで休憩してたすばるちゃん抜きのトゲトゲが来てくれたミネさんと談笑した後、仁菜ちゃんはすばるちゃんを迎えに行く。多分上京して桃香さんと出会ってからの短期間で濃縮した人生を体験した仁菜ちゃん、すばるちゃんの一人ぼっちを想像できたのだと思う。
 しかし会ったすばるちゃんは大人だった。おばあちゃんに俳優の道は歩まないことを言ったという。そこに仁菜ちゃんは何を読み取ったか、小さく言った恨み節を仁菜ちゃんが聴きとったか、曖昧になってる。
 そしてトゲナシトゲアリ、ステージに上がってまず音合わせ。軽く叩いて見事なスティックさばきを見せた後、次はベースのルパさんの番。トゲトゲの他の四人とスタッフさんと同様、私も圧倒されました。
 ついにアバンでも少し描かれたトゲナシトゲアリの本番になるけど、仁菜ちゃんはここでピエロになった。エレキを持ってステージに上がったけど、少し爪弾いたあとで弾けないという意味のことを言って、桃香さんに渡したのです。自分でボケて突っ込む、まるで一人漫才。それは仁菜ちゃんの、演じる者としての才能を垣間見せた瞬間と思う。
 しかしまだ演奏は始まらず、仁菜ちゃんの一人語り。どうも仁菜ちゃん、気合を入れたい時やここ一番の時は語りをしたくなるらしい。私はもう何年も行ってないライブだけど、私自身はどっちでもいい。ただ語りは歌と違い、生の感情が乗ってしまうと思う。
 そしてついに「空白とカタルシス」。驚くのは即席バンドだった第一話を含めた四曲より随分メロウと思ったこと。それはこの回全体のメロウさにも通じる。しかしそれに挟まれる映像は会場や五人の演奏場面ばかりでなく、仁菜ちゃん、桃香さん、すばるちゃん、ルパさん、智ちゃんそれぞれの辛い過去。しかもこれまで描いてきた画ばかりでなく、新規の描き起こしもある。ここで五人それぞれの万感の思いを表現するなんて、ずるい演出。もちろん最大限の誉め言葉です。
 こう来たかと、凶暴モンスター、正論モンスターの仁菜ちゃんを見せられ続けてきた後だからですが、モンスターでない仁菜ちゃんでも素敵な回と思えた、素晴らしく、驚いた回でした。


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