マガジンのカバー画像

『ガールズバンドクライ』論

30
ガルクラについての私の感想です。
運営しているクリエイター

記事一覧

088 メタで語る『ガールズバンドクライ』⑤

 次のアニメの題材にロックを選んだことで、テーマはロックにならざるを得ない。題材がポップスでテーマがロックなら、『【推しの子】』という格好の例がある。しかし偶像破壊というロックの志向があまりにもドラマチックなエンタメに消費されてしまい、反抗や反発と言うロックの思想になってないきらいがある。  『ぼっち・ざ・ろっく!』はまずもって表現がロックだけど、ぼっちちゃんは確かにロック魂を持ってるから、間違いなくロックの物語で。しかしアニオリでロックの話を企画するとなると、ロック畑の人間

087 「碧いif」by トゲナシトゲアリ、感想

朱李 これまでは、5人それぞれの過去やぶつかり合いを見せてきましたけど、ここからは音楽の道に向かってひたすら突き進んでいきます。みんながどんなふうに駆け抜けていくのかを、本当に楽しみにしてほしいです。第10話までの5人がお互いのことを知ったからこその、一丸となったトゲナシトゲアリをぜひ見てください! 凪都 全13話、残りはあと3話なんですけど、ドラマのボリュームがすごいです! まだまだ紆余曲折があります。でも以前の「1×5」じゃなく「5×1」にまとまったので、みんなで助け合っ

085『ガールズバンドクライ』第14話「誰にもなれない私だから(ED)」

 終わって一週間以上経っている『ガールズバンドクライ』、(敢えて言います)第一部終了のその後について、noteでもファンの間で楽しい議論が出てきました。その筆頭はトゲナシトゲアリ、結局事務所を退所したのかという問題です。私は明言はしてませんでしたが、退所を前提にnoteしました。そしたら簡単に退社退所できないはずと、説得力あるnoteを読んだのです。  極めて論理的な論です。一方で私は今発売中の「アニメージュ」を読む前、インディーズでの活動を単なるアマチュアとも思っていなか

083 『ガールズバンドクライ』、短い総評 第10話と第13話から

 結局、最終回の「ロックンロールは鳴り止まないっ」への批評は第10話「ワンダーフォーゲル」の批評とリンクする運命にある。私自身も件の二話、揃って評価してるし。  今日は第10話の評価に結び付けるため、ぼざろとの関連から論じたいと思います。私は多分初回から、すばる登場回の第2話で明確に、ガルクラはぼっち・ざ・ろっくだと思いつきました。ぼざろのキャッチコピーは「陰キャならロックをやれ!」ですが、まさに井芹仁菜と河原木桃香、ロックでしか生きていけないキャラクターと思えたのです。

082『ガールズバンドクライ』第13話「ロックンロールは鳴り止まないっ」、感想

 アバンは仁菜ちゃんの回想。そこでやっと仁菜ちゃんが熊本を出た経緯が明らかにされました。詳細が明かされたのは本編がしばらく経った後ですが、最初はいじめっ子を救うための行動だったようです。しかし次に標的になったのは仁菜ちゃん自身になった、という経緯でした。だから仁菜ちゃん、自分は「間違ってない」という考えになるのも納得できました。  しかし目が覚めたら現実、トゲトゲは人気でダイダスに完全に水をあけられてる状況に相対しなければならない。トゲナシトゲアリの五人は三浦さんと話し合うが

080 メタで語る『ガールズバンドクライ』④

 西崎義展は『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』に関して、確かファンに対して「これで最後」という意味のことを言った。安彦良和は『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙』の公開に際し、「パート2はありません」と明言した。そして『超時空要塞マクロス 愛・おぼえてていますか』のパンフに〈「マクロス」は終わった〉の見出しがあった。  しかしさらヤマと同じ1978年に放送された2でパラレルワールドを作り、ヤマトシリーズが(一旦)完結したのは83年。ガンダムシリーズは82年のめぐりあい宇宙

079『ガールズバンドクライ』第12話「空がまた暗くなる」、感想

 思わせぶりなサブタイでどんな暗い空かと身構えてましが、アバンは白い背景での五人の写真撮影。これだけでトゲナシトゲアリはフェスの実力が認められ、インディーズでないレコード会社と契約できたことが伺える。OP明けで、その担当が仁菜ちゃん同様、桃香さんがいた頃のダイダスのファンの三浦さんと明かされる。トゲナシトゲアリに注力するため、元々プロ志向だったルパさんと智ちゃんは吉野家のバイトをやめる。  しかし仁菜ちゃんが桃香さんと共に意識したフェスでのダイダスとの勝負。評判と言う意味では

078 『ヤマノススメ』の事を話そう

 2022年にアニメから入って転んだ『ヤマノススメ』、ある面ではガルクラの対極とも考えられる。主人公雪村あおいは(最初は)旧友の倉上ひなたに引っ張られる存在だし、青い空と白い雲が舞台だし、結局は陽キャの肯定になってる。しかし山あり谷ありの生き方の肯定、学校に居場所がないなら外に出よう、という思想では山とバンドに似たところがある。  とはいえそれぞれに重い/辛い過去を受け入れ、克服し、認め合うガルクラ、陰キャで承認欲求モンスターがバンドで名実ともにギターヒーローになっていくぼざ

074 『ガールズバンドクライ』、劇中曲「空の箱」

 ガルクラで最初に聞く曲と言えばOPの「雑踏、僕らの街」。しかし映像の出来栄えからトゲナシトゲアリになって事務所とレコード会社が決まり、金をかけたPVと思われる。  だから劇中で考えると、桃香さんの弾き語りの「空の箱」が最初と思われる。終わった後の仁菜ちゃんとの会話から桃香さんがいたダイヤモンドダストの持ち歌であり、仁菜ちゃんが聴いたのは桃香さん自身による弾き語りバージョンと(視聴者に)明かされた。しかし後日同じ場所で、仁菜ちゃんが桃香さんを入れた即席のバンドで歌ったバージョ

076 トゲナシトゲアリ、武道館への険しい道

 カタルシスで終わる/終えるのがポップス。「そんな訳ねえだろ」と、余計なことを付け加える、あるいはその余計なことそのものがロックと思ってて。だからアニメとしては結構革新的だけど毎シリーズ気持ちよく終えたヤマノススメシリーズはポップスだし、結束バンドの文化祭演奏をAパートにし、Bパートの最後を「今日もバイトかぁ」のぼっちちゃんの台詞で締めた『ぼっち・ざ・ろっく!』第一期、間違いなくロックでした。  こんな話をするのも先週のガルクラ第11話、普通の話(ポップス)なら最終話に相応し

075『ガールズバンドクライ』第11話「世界のまん中」、感想

 改めてガルクラは仁菜ちゃんが主人公と確認した回。前回で家族からバンド活動を応援してくれることを確認でき、フェスに全力投球できる条件が整った。だからよりよい楽曲のために微調整する気配りも見せることが出来た。しかし本格的な演奏の練習が出来るか疑問な狭いスタジオ、物販はしてるけどCDやレコードはないらしい貧乏バンドの笑える悲哀を描いてくれました。その意味でもフェスへの出演、トゲナシトゲアリにとっては大勝負と分かる描写。  しかし一人浮かない表情はすばるちゃん。バンド名が決まってな

072 後藤ひとりは覚醒し、井芹仁菜は成長した

 先週の第10話の「ワンダーフォーゲル」、私は絶賛したけど、小うるさいロックの聴き手、しかも基準がブタの臓物を投げつけた時分のザ・スターリンの楽曲なのに、何で親子の和解の話を肯定するのかと、奇異に思ったかもしれません。私自身はだからこそ、ロックの話でロックに生きる道を見つけた女の子が、自分の父親の人間的な弱さ、理解の至らなさを知ってもなお、愛情だけは真実と知ってしまったら怒るに怒れない、許すしかない。そんな仁菜ちゃんの感情こそがごちゃごちゃした整理のつかなさという意味も含め、

071『ガールズバンドクライ』第10話「ワンダーフォーゲル」、感想

 今回はトゲナシトゲアリが本格的に活動するための最大の障害であり問題、フロントマンの井芹仁菜の家族を扱った回。アバンも仁菜ちゃんが開発したグッズに関する話があり、今回はガルクラの本来の主人公回と言う示唆はあった。しかしそこはガルクラ、すぐに芸能事務所の人間に呼び止められるというミスリードがあり。  お話が動き出すのは仁菜ちゃんのお母さんが娘のバイト先を訪ねて来たり、お父さんがアパート先で待ち伏せして来たりから。多分そんな仁菜ちゃんの状況、トゲナシトゲアリの他の四人は話し合った

069 桃香と仁菜、ルパと智、比較論

 私の以前のnoteでのメタ論でダイダスが東映アニメーション、東映動画ならbeni-shougaは虫プロと論じたことがありました。しかし先週の第九話で多少はかすっていたようですが、メタでなく劇中の要素で語った方がいいかなと思いまして。簡単に言えばルパさんと智ちゃんのbeni-shouga、新川崎(仮)に成長/発展できなかった「桃香さん」と「仁菜ちゃん」ではないかと思いついたのです。そう考えるとすばるちゃんを入れたトリオの時分の新川崎(仮)とbeni-shougaが合体したこと