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「飲んでる場合じゃないんだけどね」 -男子発言ノート36

「ぽっ」とひとときくらい、甘い気持ちになりたい。
寒いし、世間はざわざわしてるし、クリスマスケーキにはまだ少し早い。
こんなときは、とっておきの発言を引っ張り出してきたい。

「飲んでる場合じゃないんだけどね、本当は」

スケジュール調整を重ねに重ね、気になる人とようやく飲みに行けることになった冬のある寒い夜。
バーのカウンターで横並びに座って、仕事の進捗状況などを手短に話してくれた彼は、こう結んで少し自嘲気味に笑った。

「飲んでる場合じゃないんだけどね、本当は」

飲んでる場合じゃないくらい忙しい人だった。
いくつもの案件を、途切れることなくいつも抱えていて、それでいて朝方人間だった。

朝方人間って、メチャクチャ忙しい人がなるやつでしょ?
朝の、いちばん冴えてるクリアな時間に、仕事チャッチャとクリエイトしちゃおう。っていう、意識高い人がシフトチェンジする、ライフの、ワークスタイルの。

それほどご多忙な人が、

「飲んでる場合じゃないんだけどね、本当は」

そう、時間をムリクリ作って駆けつけてくれた事実!
彼に好意を抱いていた私は嬉しくて、期待がふくらんで。

飲んでる場合じゃないけれど、飲んでいる彼。
本当は飲んでる場合なんかじゃないのに、じゃぁ、なんで?
なんで飲んでるの、私と……?


っぽーっ!!! ぽぽぽぽぽーーーっつ!!!


考えるだけで沸騰した。「ぽっ」じゃ済まなかった。

頭の中から引っ張り出して何度だって開きたいページに、このセリフは書き留めてある。寒いさむい冬の晩に恋をした温もり色の付箋を貼って。



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*Web ミームの箱船|大島智衣


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