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atypical reproduction= 非典型的な繁殖 | 教科書に出てこないニュース英語 《スイス・侵入性外来植物の規制》

スイスの公共放送swissinfo.chのウェブサイトで、2024年9月28日に配信された記事の見出しで使われていました。

The Ticino palm falls victim to its atypical reproduction
南部ティチーノ地方のヤシの木は、その非典型的な繁殖の犠牲に

出所 ↓

"a-"が「非」を表す英単語と、外来生物への規制の話です。


◾️'atypical'を辞書で引くと

atypical, atypic [eitípikəl, -ik]
[形](…の)代表例ではない,非定型的な,変則的な≪of≫

goo辞書  小学館 プログレッシブ英和中辞典

"typical" は日本語にもカタカナで取り入れられています。典型的・代表的という意味です。

この単語にa-という接頭辞がついてできているのがatypical。
この接頭辞がついている単語は他にもいくつかあります。

anarchy (無政府状態、混乱状態)、anonymous(匿名の)、anomaly(例外)、anemia(貧血)、anecdote(逸話)、achromatic(無彩色)、amorality(悪徳) 、apathy(無関心)、atypical(非定形)、anorexia(拒食症)、asexual(無性の)、aniconic(象徴的な) など。

出所 ↓

森野さんによると、否定を表す接頭辞には2つの流れがあるとのこと。

… dis-、de- 、in-、non-、un-(um-) がラテン語を語源とする単語に付く接頭語であるのに対し、a- はギリシャ語を語源とする単語につく接頭語である…

同上

…なるほど。
ありがとうございます。

同じく森野さんが注意してくださっているように、「各単語とも、接頭語 a- の発音に特徴があるため、音声も確認するのをおすすめしたい。」

たとえば、
asexualは、日本語ではセクシュアルと書かれますが、

実際の英語の発音は、[eisékʃuəl]=エイセクシュアルです。
(今回初めて知りました!カタカナ英語は要注意です。)
一方、
apathyの発音は、[ǽpəθi]で、日本語のパシーと近いです。

そして、今回取り上げたatypicalは、前者のパターン。
カタカナで書くなら「エイティピカル」です。


◾️「外来ヤシの非典型的な繁殖方法」と「彼らが被った苦難」とは?

記事の内容を見てみましょう。

リード文:
数十年にわたり、ティチーノ州のヤシの木はスイス南部に熱帯の雰囲気を与えてきました。しかし、この侵略的な木の拡散を食い止めるため、当局はその販売を禁止しました。この措置は雌の木に限定することもできましたが、雄の木の非典型的な繁殖スタイルが原因で全面的な禁止に至りました。

本文:
連邦参事会によって昨年3月に採択された「環境への放出に関する条例(ODE)」は、9月1日に施行されました。この条例は、地元の動植物に危険を及ぼす31種の侵入性外来植物の販売、輸入、さらには贈与を禁止しています。

この禁止措置は、これまでガーデンセンターで人気だった植物、例えば「バタフライツリー」や「チェリー・ローレル」にも影響を与えていますが、スイスの土壌に存在するエキゾチックな植物の中でも特に目立つ存在である「ティチーノのヤシ」も対象となっています。

侵入植物のチャンピオン
「しかし、その木はティチーノ州とは関係がない」と、アンティーヌ・ジュッソン氏は抗議します。彼はこの種について論文を書いており、スイスのテレビRTSで、このヤシの本当の名前は「シュロ(ヘンプパーム)」であり、中国が原産地であると指摘しました。19世紀末から、中産階級の大きな屋敷で見られるようになったこのヤシの木は、ティチーノに非常によく適応し、南アルプスに位置するこの州の象徴の一つにまでなりました。

「実際の拡散は1970年代半ばに始まりました」とジュッソン氏は説明します。「気温上昇との関連があることが研究で示されました。」

シュロは、侵入植物のチャンピオンと呼べる存在です。その根はあまり広がらないため、簡単に林床に定着することができます。高さは15メートルに達し、他の木々を凌ぐことができ、さらに冬に葉を落とさないため、落葉樹に対して優位性を持っています。スイスの冬も、このヤシの木の拡散を阻止するには不十分で、-18度まで耐えられます。

シュロの存在は、他の植物や特定の動物にとって脅威となり、食料や生息地を奪います。また、ヤシの木は燃えやすく、地球温暖化の時代において追加の危険をもたらしています。

これらの欠点を考慮し、スイス森林・雪・景観研究所(WSL)はティチーノのヤシを「厄介な美しさ」と表現しています。

人気のあるアウトサイダー
ティチーノでは、この戦いにすでに敗北しているようです。今の目標は、アルプス北部への拡散を防ぐことですが、すでにジュネーブ湖やチューリッヒ湖の周辺など、いくつかの地域は影響を受けています。

しかし、このヤシの木には支持者もいます。昨年行われた調査では、回答者の約60%がこのヤシの木に対して好意的な意見を持っていることが示されました。そのため、ヤシの木は人気があり、ガーデンセンターでもよく売れています。この利益を守りたいガーデンセンターは、販売禁止を雌の植物のみに限定することを提案しました。この提案はODE改正に関する協議手続きの中で提出され、チューリッヒ州も支持しました。

一見、この解決策は論理的に完璧に思えました。野生では1本の雌の木が年間10万個の種を撒き散らすことができるため、雌の木を禁止すれば、この木の繁殖を止めることができると考えられました。

進化する繁殖
しかし、ジュッソン氏とジュネーブ植物園のチームの研究によると、雄の植物は必ずしも雌の植物を必要とせずに繁殖できることが判明しました

シュロは一般的に雄株か雌株として紹介されていますが、個体の15%から20%が性別を変えることができることがわかりました」とジュッソン氏は説明します。若い頃は雄株であっても、寿命が近づくと果実を生産できるようになります。この現象は他のヤシ科の植物でも知られていましたが、シュロにおいては初めての研究でした。

「おそらく、同一の植物に雄花と雌花が存在する単性植物の段階と、雄株と雌株が別々である雌雄異株の段階の間に、進化の過程にあるのでしょう」と、ジュネーブ植物園の館長ヤママ・ナシリ氏は付け加えます。この進化的な段階は、侵入現象にとって重要です。つまり、雄株が自立して新たな地域を開拓できることを意味しますこの生存特性が原因で、ガーデンセンターの棚からシュロが完全に禁止されることになり、庭にエキゾチックな風情を加えたかった人々を失望させる結果となりました。

つまり、

元々ある植物の生息地や動物の食料を奪う、また燃えやすいために山火事の原因ともなる外来種であるこのシュロは、

雄株が雌株に変わることで雄株しかなくても仲間を増やすことができるという非典型的な繁殖をするために、

雌株だけの規制では意味をなさないことがわかったので

雄株を含め全面的に販売・輸入・譲渡が禁止されることになってしまった

ということでした。


確か、魚にも状況によって性別を変える種があると聞いたことがあります。

また、人間もテストステロンのシャワーを浴びるまでは胚に男女の区別はなく、そのタイミングのずれによって身体と脳の性に違いが生じることもあると読んだことがあります。

性別は固定的なものと考えがちですが、変わるのがtypicalな生き物のことを知ると、見える世界が違ってくる感じがします。



























































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