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radicalised=過激化している | 教科書に出てこないニュース英語 《スイスの公共放送から》

スイスの公共放送Swiss Broadcasting Corporation SRG SSRの一部門であるSWI swissinfo.cの電子版で2024年7月21日に配信されたニュース動画記事の見出しで使われていました。 

Swiss youth are becoming more radicalised, says survey
スイスの若者が過激化していると調査結果が示す

https://www.swissinfo.ch/eng/various/swiss-youth-are-becoming-more-radicalised-survey-claims/84506873?utm_source=multiple&utm_medium=website&utm_campaign=news_en&utm_content=o&utm_term=wpblock_teaser-wide-card-query-list

radicaliseを辞書で引くと

radicalize, ((英))radicalise
[動]
1 根本[抜本]的に変える[変わる]
2 〈人・考えなどを[が]〉革新的[過激]にする[なる]

goo辞書

とあります。
radicalの動詞型ですね。
radicalを辞書で引くと、次のように結構たくさんの意味が書かれています。

━━[形]
1
〔通例限定〕〈物・事が〉根幹をなす,根本の,基本[本質]的な
1a《数学》根(号)の;《化学》基の;《文法》語根の;《植物》根(生)の;《音楽》根音の
2〔通例限定〕〈相違・欠陥などが〉根幹に関わる,重大な,重要な
3〔通例限定〕〈変化・改革などが〉根本[抜本]的な
3a〈人・考えなどが〉革新的な,改革派の;〈政治思想などが〉急進的な,過激な;〔しばしばR-〕《米史》(南北戦争当時の)共和党急進派の,《英史》(19世紀の)急進派の
3b〔通例限定〕〈治療・手術などが〉根本から行う,根治的な
4〔しばしば間投詞的に〕((米略式))すごい,すばらしい
━━[名]C1根幹をなすもの,根本
1a《数学》累乗根,根号,(環の)根基;《化学》(遊離)基;《文法》語根;(漢字の)部首;《音楽》根音
2(政治・社会的に)革新的な人;急進主義者,過激論者;〔しばしばR-〕急進党員,過激党員
語源[原義は「根を持った」]

goo辞書

このradical、意味の広がりを見渡すと、「根」から始まり、さまざまに意味が派生しています。面白い!

今回の記事の文脈では、形容詞の3aのうちの後半、「〈政治思想などが〉急進的な,過激な」の意味合いで捉えるのが良さそうです。「穏健な:moderate」の逆ですね。

「はて?」スイスの若者の思想が「過激化」とはどういうことか?
と思ってリード文を読むと、

More young people in Switzerland between the age of 15 and 25 are adopting intolerant views, according to a survey.
スイスの15歳から25歳の間の若者たちについての調査によると、排他的な見解を抱く人が増えているという結果が出ています。

とあり、「過激」の中身は、「排他的;異論を許容しない」だとわかります。
「はて?」ここでの異論とは?

さらに、本文へと読み進めると、次のような内容が書かれています。

・回答者全体のの26%が外国人嫌悪的、15%が同性愛嫌悪的、10%がイスラム嫌悪的、8%が反ユダヤ主義的
・特に17歳以下の層で比率が高い。
・衝撃的なのは、その増加幅で、全てのカテゴリーで、2年間で49%〜66%上昇している。
・研究責任者は、コロナウイルスのパンデミックとイスラエルでのハマスによるテロ攻撃が、過激な立場の急激な増加につながったと考えている。
・調査は5月から6月にかけて行われ、15歳から25歳の1600人が参加した。

According to the findings of the survey, conducted by researchers at Zurich University of Applied Sciences and the University of Fribourg, 26% of respondents could be considered xenophobic, 15% homophobic, 10% Islamophobic and 8% anti-Semitic.

The proportions are particularly high among the under-17s, as reported by Le Matin Dimanche and the SonntagsZeitung papers on Sunday. But it is above all the increase that is striking, with rates rising from 49% to 66% in all categories in two years.

“The pandemic [of Covid-19] and the Hamas terrorist attack on October 7 [in Israel] have led to a marked increase in radical positions,” said the study leader Dirk Baier.

A total of 1,600 15–25-year-olds took part in the survey carried out in May and June.

つまり、
<自分たちとは違う属性を持つ集団への嫌悪・反感を持つ若者が急増している>
ということでした。


さて、
今回もう一つ取り上げたい語があります。-phobicです。

この語、英和辞書では

━━[形](…の)恐怖症の≪about≫ ※goo辞書では[名]となっている。誤記か?
━━[名]恐怖症の人

https://dictionary.goo.ne.jp/word/en/phobic/#ej-63291

とされていますが、

英英辞書では、英和辞書とは違って、

having a strong dislike or hatred of something, especially in a way that is extreme or not reasonable
激しい嫌悪感や憎悪を持つこと、特に極端で理性に反するやりかたで

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/phobic

と、強く、踏み込んだ意味が書かれています。

次のように、嫌悪や憎悪の対象を前につけて使われます。
 xeno
phobic:外国人への嫌悪・憎悪を持つ(人) 
 homophobic:同性愛者への〜
 Islamophobic:イスラム教信者への〜
 Russophobic:ロシア(人)への〜
なお、
 anti-Semiticは、言葉の作り方は違いますが同様の言葉で、「ユダヤ人に反感を持つ(人)」、
 arachnophobiaは、「クモ恐怖症」です。英和辞書に出ていたのはこの使い方です。

そして、一文字違いですが、-phobiaは「〜への嫌悪・恐れ」という名詞形です。

     ***************

疫病や戦争の影響で、あるグループの人々への嫌悪感・憎悪をもつスイスの若者が増えたことが数字で示された、ということでした。

AIDSが流行った時、新型コロナがクルーズ船の乗客で見つかった時、ロシアのウクライナへの侵攻以降、同性愛者・訪日外国人・ロシア人への漠然とした嫌悪感が生まれるのを自分も感じました。

気をつけないといけません。


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