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遺言が「争続」を防止する!おひとりさまの相続対策も大事

「持ち家がありお金はない」そんな家こそ、要注意です。不動産は遺産として分割しにくく、他に十分な遺産がないと相続人同士の争いのもとになります。お金のない人こそ遺言書が必要です。遺言書の作り方について詳しく解説します。なお、おひとりさまの遺言の作り方についてもご案内します。


「金持ち喧嘩せず」は正しい?

2021年の司法統計年報によると、遺産分割調停で争われている遺産価額のうち、1000万円以下が33%。1000万円以上5000万円以下が43.6%。遺産5000万円以下の家が、じつに76.6%にも上ります。そして、争われている遺産のほとんどが「自宅」です。
 
遺産のうち持ち家の価額のボリュームが大きく、現金がほんのわずかであれば、相続に不公平感が出てしまいます。そう、「家があってお金がない」家は相続で争われやすいのです。
 
他にも、揉めやすい家のタイプはあるのかどうか。17年間で3200件の相続サポートを行ってきた「一般社団法人つむぐ」」の長井さんにインタビューしたレポートがあります。気になる方は、ぜひご覧になってみてください。

法改正により作りやすくなった「0円遺言」である自筆証書遺言

相続で残された人が揉めないためには、本人が生前にしっかり遺言書を作成し、不公平感を解消しておくのが有効です。実は、遺言書は紙とペン、印鑑があればつくれてしまいます。0円でつくれる遺言、それが自筆証書遺言です。
 
自筆証書遺言とは、生前に本人が自分でペンを持って作成する遺言のこと。全てを自筆するのは骨の折れる作業ですが、最近の法改正で自筆の負担が少し軽減されました。遺言のうち、財産目録だけは自著によらなくても良いという決まりに変更されたのです。
 
財産目録は、パソコンで作成したり、遺言者以外の人が代理で作成したりできます。また、権利書を添付したり通帳の写しを貼り付けたりすることも可能です。
 
参考:自筆証書遺言に関するルールが変わります。(法務省)
 
また、自筆証書遺言は、遺族が見つけてもその場で開封できず、家庭裁判所による検認が必要でした。しかし、自筆証書遺言を法務局で保管できる制度が始まり、法務局に保管されている自筆証書遺言については検認の必要がないとされるようになりました。
 
法務局に遺言を預ける制度を使えば、大事な遺言を安全に守ることができ、本人の死後に相続人等が閲覧請求することでモニター閲覧か原本閲覧を行うことが可能になります。
 
法改正により自筆証書遺言はぐっと作りやすくなりました。ただ、遺言書には日付・氏名・印鑑が必要などの様式があり、あいまいな記述は無効になってしまったりするため、不安な人は専門家などに頼りながら作成するのがおすすめです。
 
参考:遺言書の様式等についての注意事項(自筆証書遺言書保管制度)

遺言書として有効かがしっかり確認できて安心な公正証書遺言

遺言には、公正証書遺言という形式もあります。公証役場に出向き、公証人に遺言の内容を述べ、その内容を公証人が遺言書として作成してくれるものです。
 
自筆証書遺言は内容が遺言書の形式に沿っていなかったり、あいまいな記述だったりすると無効になる恐れがあります。一方で公正証書遺言は公証人が遺言書の形式に則って作成してくれるため、法的に有効である安心感があります。
 
ただ、公正証書遺言は有料です。費用は数万円で、相続財産の価額によって変わってきます。また、利害関係のない証人が二人必要になります。

まずは財産目録を作るところから初めてみよう

「まだ終活について考え始めたばかりで、遺言書をつくるところまで意識が行かない」という人は、まずは財産目録を作り始めてみてはいかがでしょうか。現金、不動産、保険、証券など、自分がどんな財産を持っているか一覧で把握しておくことは、今後のライフプランを描く上でも重要です。
 
財産目録が作れれば、「この保険は解約しておこうか」「活用できていない不動産を早めに売却しておこう」など、財産を整理するきっかけになります。するとだんだん、相続しやすい財産ばかりになっていき、残る世代の役にも立ちます。

おひとりさまはとくに遺言執行人を決めておくのが大事

おひとりさまの財産は、相続する人がいなければいずれは国庫に入ります。「自分が亡くなったら、残りの財産は寄付したい(遺贈寄付)」「お世話になったあの人に残したい(遺贈)」といった考えがあるなら、ぜひ遺言書にしておくのがおすすめです。
 
しかし、おひとりさまの遺言書は、誰か実行してくれる人がいなければただの紙。遺言執行人を決めておく必要があります。信頼できる人に生前から相談し、「遺産の中から報酬をあげるから、この遺言を実行してほしい」と頼んでおくのもいいでしょう(負担付遺贈)。
 
また、遺言執行人を専門家に任せるという選択肢があります。遺言執行人を専門家に依頼するときは、葬儀やお墓など死後事務についても一任したり、入院や施設入居時の身元保証もお願いしたりするのが一般的。希望や予算によって、ひとりである自分の今後をどのように委ねるか考えてみましょう。


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