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リゾートホテルのプールサイドで、本を読みながらミントジュレップを飲むお話と持ち去られた釣果の謎。

久しぶりの雨。
雨って嫌いじゃない。曇りの日も嫌いじゃない。
曇りの日は光の加減がまどろっこしくて、それでも低い雲に反射した光の中に、晴れた日とは違った眩しさを含んでいる。
雨の日は雨の日で、昨日まで埃っぽかった公園のベンチや、少し苦しそうだった学校の花壇の花やなんかがキラキラして、明日は天気になってもいいよっていう期待に満ちてる様が嬉しそうでいい。

ランカウイ島に行くのが好き。熱帯雨林もあるし素敵なリゾートホテルもある。
突然降るスコールや、その後の嘘みたいな晴れ間、色とりどりのフルーツ。
ホテルの部屋と外の温度差。鬱蒼とした木々に囲まれたヴィラ。
湿度が日本とは違うのか雨が降ってても呼吸がしやすい。

その島の蛍は揃ったリズムで点滅する。まるでクリスマスツリーのようだ。
日本の蛍みたいにゆらゆらとしとやかに光を放ったりしない。
真剣に目で追わなければ見失ってしまうように、ふわっと光ってふわっと消えたりもしない。
川沿いの木にそれはもうたくさんの蛍が、チカチカと同じリズムで点滅を繰り返す。
あれが蛍の愛情表現だとしたら、どうかな?わかりやすいかもしれないけどどちらかといえば日本の蛍のそれに惹かれてしまうかな。
それでも群生した蛍の点滅は美しく、あのシンクロを生み出しているのは蛍同士のコミュニケーションの方法があるのか、ただ単に遺伝子レベルでそういうものなのか、どっちなんだろう。
調べればわかるだろうけど、今日はいいや。疑問を抱えたておいた方が妄想する楽しみがある。

病気になる前はゴールデンウイークが終わった頃から、ランカウイに出かけることが多かった。近いし何もしなくてもホテルに滞在しているだけでいい休暇になる。

朝起きて、シャワーして、色とりどりの朝食を食べて、本を持ってプールに行く。
プールサイドのバーカウンターでミントジュレップか青リンゴのカクテルを頼んで、リクライニングチェアーに腰掛けて本を開いて届くのを待つ。
あとは暑くなったらずるずるとプールに入って、少し浮かんでまたずるずると定位置に戻ることをランチまで繰り返す。
毎日そうしてると、頼んだわけでもないのに、フルーツが一緒に届くようになる。
マンゴスチンやランブータン、パパイヤやちっちゃいりんご。
そのうち、バーの人が話しかけてくるようになる。「いつも本を読んでるね」
「蛍は見に行った?」「ホテルの食事ももちろんいいけど、川沿いに美味しいエビを食べさせてくれるレストランがあるよ」「マングローブの林をトレッキングして、その後魚釣りしたりできる船のチャーターもできるよ」情報の宝庫だ。
そういう時はどれも素直に従ってみる。せっかく地元の人が教えてくれた「いいこと」だから。

マングローブの林。カニ食い猿がいっぱいいる。ミズオオトカゲもかっこいい。

ランカウイのマングローブは日本から来たヒルギという植物が根付いて広がったらしい。と、トレッキングの案内をしてくれたお兄さんが教えてくれた。お兄さんはお金を貯めて日本に行くのが夢らしい。
そして私はでっかい魚を釣った。名前はわからない。その後、ボートを止めてランチを食べた。てっきりそのお魚が食べれるんだなと思っていたのに、出てきたランチのお魚は、それよりちっちゃい見ず知らずのお魚に変わってた。「君、誰?」
私が釣った大きなお魚は案内のお兄さんがどこぞへと持ち去るのを見た。まあいい。あげるよ。日本へ行く貯金の足しになるのか、お兄さんの家族の夕食になるのかは知らないが、どうせ一人では食べきれないしね。

そしてどこに行ってもよく聞かれるセリフ。
「日本人か中国人に見えるけど、日本人じゃないよね?」
これは私がいつも一人でいるから。日本の人は複数人で過ごすと思われてるし、観光もしないで朝からぼーっと何の計画もなさげにプールサイドで本を読んだりしてる確率が少ないかららしい。でもこれはヨーロッパでもアメリカでも言われる。
パリで道を歩いていると、突然中国語で「ルイ・ヴィトンはどこにありますか?」とか話しかけられてしまうことがよくある。その度に店の名前は違うけど。
旅先での面白い出来事の一つだ。ナニジンだって構わないさ。お店の場所は教えてあげるよ。

病気になって呑気な旅行ができなくなった。投薬のせいの感染症とかで病院の先生があんまりいい顔しない、もしくははっきり「今は、ダメです。安静にしてて下さい」と言うから。それに、もしも向こうで具合が悪くなったらちょっと困るなあと思うから。現実問題、医療関係とかやっぱり日本は安心できる。

怖いものなしでどこにでも出かけて、休みとなると母に「今、どこにいるの?」と聞かれてた私は、今はちょっとお休みしてもらっている。

The Datai Langkawiのフォレストヴィラ。素敵なヤモリが一緒にステイしてくれます。

近い場所でゆっくりのんびりしたい方には、ランカウイはいい距離ですよ。
私が一番好きなホテルは The Datai Langkawiです。食事も美味しいし、ホスピタリティも最高です。
あと、ちょっと足を伸ばしてPangkor Laut Resortも素敵です。
本島から少し離れた島にあるホテルなのでボートで移動する一手間がかかりますが、それもまた御一興。ホテルの宿泊客しか島に来ないのも隠れ家っぽくて好き。
シーヴィラは海の上にあって、全面海に面してるので、ガラス張りのお風呂で大きく万歳して叫んでも誰にも見られません。遠くに船が浮かんでるくらいです。
The Datai Langkawiは島の端っこで若干移動に時間がかかるので、手っ取り早くホテルにつきたい方はTanjung Rhu Resortもおすすめです。夕暮れのビーチでのバーベキューも用意してくれます。

Tanjung Rhu Resortのプライベートビーチ。

降っているか降っていないか分からないくらいの、立ってれば確かに濡れていくくらいの雨も好き。その時の空が青かったらもっと好き。

予定が決まっていない方、お休みをずらして取れる方、自然が好きな方、ぼーっとできる場所をお探しの方に、おすすめのお話でした。

あっ、蛍を見に行かれる方、絶対に虫除けを持って行って下さい。さもないとお洋服から出てる部分全て蚊にやられます。おまけに日本の蚊より逞しい気がします。


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