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ジュール・ヴェルヌの妄想に癒されて、少女漫画のような彼女で現実を知る。

お父さんに父の日のプレゼントを届けた。
バッグとフリーズドライのお味噌汁セットとお気に入りの青汁と、ココアとココナッツのマフィン。

マフィンを見るなり「〇〇さんのお菓子は、甘くないんだよね」だと。
いつもそう言うから、今回のは少し甘くしたんだよ。
そうしたら気づいたようで「今回のは丁度いいねえ」だと。

今まではフリーズドライのお味噌汁とか食べなかったんだけど「一人前だけつくるのは美味しくないし、たくさん作ると何日もおんなじ味だし、温め直すとおいしくなくなる。でもお味噌汁は食べたくなるからフリーズドライのでもいい。」
って言い出したからちょっと前から買って行ってるんだけど、最近のフリーズドライ製法のすごさに驚く。ナスが、なめこが、とうふがトランスフォームする様子を見ると「三体」みたいに人間にも使える技術なんじゃないだろうかと思ってしまう。
細胞の数が違うから無理なんだろうか。

あの一度カラカラにされたナスは、お湯で戻った時のナスとどこが違うんだろう。別物に生まれ変わってるんだろうか。いや、生まれ変わったんじゃなくて、お亡くなりになったものが、水分を吸収した新たな何かに変貌を遂げただけなんだろうか。ふやけた死体みたいな・・・。くだらないこと考えるのやめよう。

忙しない1日だったから、やることを適当に切り上げて昔バージョンの「地底探検」を見た。好きだなあ。
レイ・ハリー・ハウゼンとかジューヌ・ヴェルヌとか、名前を聞くだけで心を鷲掴み。

手作りっぽいセットもたまらないし、映像加工の手書き感もいいし、なんたってちっこいトカゲを、恐竜に進化させようっていう発想が好き。
でかいマッシュルームの森だって、あれだけの数をいい大人達が手作りしたかと思うと、仲間入りして私も一緒に作りたい。

あとあの頃の役者さん達のなんとも言えない雰囲気がいい。
一緒に行くといいはったマダムのウエストの細さよ。おまけにドレス姿とアップの髪型で地底に降りて行くって言うんだからなんとも頼もしい。
足首まであるフワリンとしたスカート、おまけにアンダースカートもはいてる状態で洪水に襲われてる姿を見ると、濡れた布ってものすごく重いと思うから、男どもより体力あるんじゃない?と思ってしまう。
そのずぶ濡れ状態のスカートを引っ張りつつ、少しのささえを借りたとはいえ、自分の腕の力でヨイショと水の中から脱出する。
これこそ「水も滴るいい女だ」

こういう途方もない映画を見ると、心底平和な感じがして心が満たされる。
空想も妄想も私たちに与えられた特技だと思うから、使い尽くしていいんだって思える。100パーセント自由で誰に迷惑かけるでもなく、果てしなく妄想したってまだまだ足りない。

地底に世界があって、アトランティスが丸ごと飲み込まれてて、地球の中心まで落ちて行った距離感だったのに、出てくる時は死火山の穴からその距離を一気に噴き上げられる。のに、みんな元気。なんて素敵。

青年アレック(砂に書いたラブレターのパット・ブーン。生死をかけた探検中にもかかわらず呑気に歌うシーンがてんこ盛りで、探検に行くアレックに婚約者があげたプレゼントがコンサーティーナ)なんて、地下から噴き上がって地上に出た瞬間、みんなとはぐれてどっかに吹き飛ばされた事になってて、落ちたところが修道院の木の枝の上。
それを見つけた修道女達がハシゴを持って助けに来てくれる。でも、吹き飛ばされた拍子にパンツがどっかいっちゃってて、修道女達には見せられないものが見えるから、ハシゴより先にパンツをくれと頼む。そうこうしてるうちにお決まりの枝が折れて落下。着地したところにいたヤギで大切な部分を隠しながら、コミカルに横歩きで事なきを得る。

命からがらの大冒険の末、地球の中心から戻ってきた後、このシーンを入れる懐の深さよ。いいね。
さすが『サンセット大通り』を手がけたチャールズ・ブラケット。

しかし現実も捨てた物じゃない。

この間いったミスドで新作のフロマージュドーナッツを食べてると、20代前半のカップルが向かい合わせに座って、キラキラした目をしながらテーブルに乗り出しぎみで会話してた。微笑ましくてかわいいのう。と思ってみてたら、男の子がトイレに立った。

すると、今まで少女漫画みたいな瞳で彼の座ってる席に身を乗り出してまでお話ししてた彼女が、やおら頭の後ろに手を組んで座席の背もたれのはるか後ろまで頭をそらしながら、ものすごい顔で(お外ではあんまりしないくらいの表情)大あくびをした。

私は何を目撃したんだろう。
私でさえあんな風な格好であんな顔してあくびなんてしない。
しかめっつらしながらの大あくび。

もちろん男の子がトイレから戻ってきたら、キュンキュン少女漫画に戻ってた。

おそるべし。

こんなことがあるから現実っていうのものも捨てがたく面白い。
恐竜になったトカゲと肩を並べる面白さだ。
せっかくだから、いい塩梅で現実と妄想の世界を楽しもうと改めて思う。

あっ、そうそう。今日、この間お願いした白黒フィルムがお店に出来上がってくるはず。
取りに行かなくちゃ。金曜日くらいには行けるかなあ。ワクワク。
もしも、素敵なものが写ってたら載せよーっと。
でも、その頃になってもなんの音沙汰もなかったら失敗してたって事で。
へへっ。



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