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「諸般の事情」なのかもしれないけれど自分で決断したんなら腹を括ってほしい。

ベランダのレモンの花が開き始めてる。ものすごくいい香り。
2個失敬してお部屋に置いてみたら、なんだろうね、心地いいったらありゃしない。たった2個で部屋中いい香り。
2個?2輪?とにかく2。

香り系が好きだから色々な香りのステイック状のとかキャンドルとか置いてるけど、本物には敵いませんなと思いながらクンクンしている。
本物じゃないのも好きだけど。

霧の向こうのような遥か昔の話、まだ初々しくお仕事をし始めて半年くらいたった頃、上司が変なことを言ってきたのを「パスト・ライブス」の初恋の人の話繋がりで思い出した。

「君のことが気になる」

私は気になられようがどうしようが、自分から好きになった人しか好きにならないから、そんなこと言われてもドキッとするとかワクワクするとかいう感情は一切持ち合わせていない。
ただ、変なこと言う人だなあと思っただけ。

そして私のことが気になる理由がいただけなかった。

「大学生の時、本気で好きになった人がいた。それが僕の初恋だった」
それで?(私の心の声)

「最初の就職もそっちでしたんだ」
それで?

「就職してしばらくして、父親の病気のために実家に帰ることになった」
お父さん大丈夫だったんだろうか。で?

「彼女は有能だったし才能があった。だからそっちで仕事を続けて行きたいから、今、僕について行くことはできないと言ったんだ」
年齢的にも、キャリア的にもそうだろうね・・・。

「それで、私は実家に戻って親の薦めで今の妻とお見合い結婚した」
へー、そうだったんだ。

「だから妻のことは好きでもなんでもないんだ。ずっと彼女のことが忘れられなくて今まで生きてきてる」
おっとぉ。奥さんに失礼なこと言うなあ。

「君がその彼女にとてもよく似ている」
えっ?

「君を見てるとあの頃が思い出されて、心が苦しくなるんだ」
で?

「付き合ってもらえないだろうか」
頭、おかしいのか。

15歳くらい年上だったと思う。
大学の頃の初恋の彼女に似てるから好きって、どういう感覚で言ってるのか観察しながら見ていた。

目の前にいるのは、私は20代だったので、いい歳したおじさんに見えた。
それに、仕事上の上司だから喫茶店に呼び出されても、なんか仕事の話なんだろうと思ってたから突然のおかしな話に耳を疑った。

そんな事を自分だけ節目がちにロマンティックな気分になって口にされても、仕事の合間の貴重なランチの時間をどうしてくれるんだと、話の内容を聞いてイラッとした。

自転車の後ろと前に椅子をつけて小学生くらいの女の子を2人乗せて、何やら届け物を会社に持ってきたこの人の奥さんを一度だけ見かけたことがある。

夏だったからか、麦わらっぽい帽子をかぶって、黄色いフレームのサングラスをかけて、イラストの入ったTシャツを膝丈の半ズボンにインして颯爽と現れた。
変に気取ってなくて良さそうな人だなあと思った。
そして、子育てって大変なんだろうなとも思った。

そんな奥さんとメデタク結ばれて、毎日の世話をしてもらって、2人も元気そうに育ってる子供がいて、そんな日常を送りながら、いい歳(恋をするのに年齢が関係あると言ってるわけではない)して、自分だけに残ってるらしき甘酸っぱい思い出を脳みその奥に抱えたまま、毎日奥さんが作ってくれたご飯を食べて、洗濯してもらったパンツを履いてるのかと思うと、気分悪かった。

逆の場合もあるだろう。
奥さんの方が今と違った儚げだった学生時代に「本気の初恋」をしてその人のことを忘れられない。
けれど諸般の事情により今の旦那さんと結婚して毎日の暮らしを営んでいる。とか。

自分が生きてきた歴史の一部として、時には思い出してもいいだろうと思う。
でも、自分と家族のために毎日毎日お仕事をしてくれてる旦那さん(奥さん)を前に、よく言えるなとも思う。

結婚する時「大好き!」以外の「諸般の事情」を考慮する道を選んだんだったら、選ばざるを得なかったんだったら、そこのところで腹を括ってほしいと思うのは結婚したことのない私だからそう思うんだろうか。

初恋の人との時間がどれだけのものだったか知らないけど、私に変なことを言ってきた上司にしたって、その時の彼女があなたのことをあなたと同じように思ってたら、一緒について来てくれたんじゃないかとも思うし、ましてやおんなじ思いで好きでいてくれたのかも怪しいものだ。

その上司の戯言が、まだ社会に出たばかりのウブそうな女の子の心を揺さぶる少女漫画的なお話で、引っかかると思った作戦だったのか知らないけれど、こっちは情けないやつだなあとしか思わなかった。

でもこの後も似たような話をしてきた男がいた。

「今はああだけど結婚した当時は、君によく似ていたんだ」と自分の奥さんのことを引き合いに出して言ってきたやつもいる。「その頃の妻によく似ている」と。どういう意味なんだ。
それっていい事なの?女の人ってそういう風に言われたら嬉しいの?

どっちにしたって、自分が好きになった人にしか興味のないから、何を言われたところでどうでもいい事なんだけれど。

今、目の前にいてくれて、一緒に人生を歩いてくれる人がいて、それだけでも大切で素敵なことだと思うのに、人の心ってやっぱり難しい。

誰にだって歴史はある。
でも、頭の中で他の人のことを思い続けながら諸般の事情により一緒になった他の人と生活し続けるなんて、いただけないと思ってしまう。なんかずるい。

綺麗事なのかなあ。
でも死ぬ間際になって「実は私、他に好きな人がいました。その思い出を心の糧に今まで生きてきました」って言われたらどうしようと思ってしまう。

そんなんだったら、早く言ってくれれば良かったのにと。
じゃあ何かい?今までの2人の時間は、2人で築き上げた時間は、子供たちはなんだったの?って。
立派な詐欺師並みに、どえらい嘘つきだなと思ってしまう。





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