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一生忘れられないフランス語

3カ月以上のフランス留学をする場合、学生ビザが切れる前にフランス移民局(OFII)で滞在許可証を発行してもらわないといけません。「入国したらすぐした方がいい」と言われた理由がよく分かりました。とても時間がかかるからです。「ちゃんとフランス語がしゃべれる人と出直して」と一度、帰されたこともありました。しょうがないので、あめちゃんを配って友達になってもらったフランス人の子と一緒に行きました。

書類提出が終わると健康診断を受けるように言われます。指定された日時に病院を訪れると、同じく在許可証のために受診している留学生がたくさんいました。健康診断と言っても身長、体重、視力測定、レントゲン撮影、問診という程度。サッと終わりそうなものなのにな、と思いつつ待っていたんですが、結構遅れているようでした。「ひょっとしたら『今日はもう時間が過ぎたら』とか言って、『またね』って言いやしないだろうか」と内心では思いつつ。

レントゲン撮影が終わり、最後の問診へ。遅れているもんだから、待っている留学生も機嫌が悪くなっているのが傍目にも分かりました。おじいちゃん風のお医者さんが気の毒になるほどに。好まない残業でこんな態度をとられてかわいそうだな。そう思った私はできるだけにこやかに、「こんにちは。いい天気ですね~」みたいなことを言って、お医者さんの前に座りました。そして彼は私のレントゲン写真を見ながら一言。

「C'est la tuberculose.」

何を言っているのか分かりません。手に持っていた電子辞書を渡して入力してもらったところ、「結核」という文字が。私がびっくりして顔を上げると、彼は笑っていました。

「tuberculose」。おそらく今後使うことはないと思いますが、私はこの言葉を一生忘れないと思います。ちなみに、レントゲン写真は持って帰れます。なんだか貴重でしばらく手元に置いていました。

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