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私がフォレスト・ガンプになった日

私は大学時代、フランス・リヨンに交換留学をしていました。2浪したのに志望校に行けず、入学式前にあった交流会で「このままだとくさってしまう」という直感がありました。「だったら志望校ではできないであろうことをしよう」と思い、真っ先に浮かんだのが「留学」でした。

4年で卒業する。就活もする。人気の英語圏は候補から外し、2年生でも留学できる国ということで導き出したのが「フランス」でした。映画や文学、思想を専攻していたことは正直、後付けの理由だったと思います。校内試験で教授にも「本当に行くの?」と言われましたが、「私にはいましかありません。現地で語学学校にも行ってなんとかします!」と説き伏せました。

実はこの留学が私にとって初めての海外でした。初めてで1年間行きっぱなし。いろんなエピソードがあり、墓場までもっていこうしている類いの話もあります。

今回はその一つを。私は当時もランニングが趣味で、週末の朝はソーヌ川沿いを走り、サン・ジャン大司教教会やフルヴィエール・ノートルダム大聖堂まで行って、マルシェに立ち寄って(ときにはリンゴ1kgを買って)帰るということを習慣にしていました。

ある朝、朝まで飲み明かした若者の集団に出くわしました。「ニーハオ」と声をかけられるのは日常茶飯事。まただなと思いながら通り過ぎようとしたそのとき、「俺たちも走るぞ!」と一人のお兄さん。すると他のメンバーも私の後についてきました。見たらハイヒールのお姉さんもいるじゃないですか。さらに通りすがりのおじちゃんたちも続きました。10人ぐらい。この風景、見たことある。あぁ、フォレスト・ガンプか。

ただまぁ、彼らもお酒を飲んだ後です。すぐに疲れてしまい、一緒に走ったのは500m程度。最後は「頑張れ~」と送り出され、私も笑顔でバイバイしました。そんなことは後にも先にもこのときだけでしたが、いまでも幸せな記憶として残っています。

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