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だって恋だもの #やばい恋心

初めて会った時、彼がドキドキしたのがわかった。ちょっと恥ずかしそうに、でもじっと目を見ながら自己紹介していた彼。
わたしはずっと歳上だから、落ち着いて最高の笑顔を向けながら彼の視線をなんなく受け止めた。


それから何かにつけ、わたしの名前を呼ぶ彼。こっちに異動してきたばかりなのでまだわからないことが多くて。
そう必ず前置きがつく。
いいんですよ、わたしも笑顔で返す。

あの日もわたしをじっと見つめて聞いてきた。
睫毛の色、青くないですか?
下はピンク?
よくそんなところまで見てますね。
マスカラなんですよ。2色使いしてるんです。
ふふっと笑うとまた少し耳を赤らめて向こうを向いてしまった。


46ー29=17
わたしが高校中退して産んでいたら、彼の母親であってもおかしくない。
世間ではもっと歳の離れたカップルだっている。
17歳差。
しかも女が歳上。
これが17歳と34歳なら恋の個人レッスンとなるところか。
でもありがちで面白くはない。


かーちゃん。
息子がいつのまに居たのか、キッチンから声を掛けてきた。
まーた、しょーもない物語書いてるの?
ダイニングテーブルに広げられた原稿用紙を横目に言う。
やめとけって。何年かかったって芥川賞とか取れるわけないんだから。
息子はいつもそう鼻で笑う。
だいたいさ、今書いてるおばちゃんの恋愛もの?そんな題材、もう使い古されてるじゃん。
まあ趣味を持つことはいいことだけどさ。
なんにもしないでいると老けるからね。
にやりとしたり顔で棒アイスを咥えながら呑気に二階に上がっていった。



わかってるわよ。
わたしは大袈裟にため息をついてみせる。
息子は知らない。
これがわたしのやばい恋心の処理の仕方だってことを。



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