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makura1219
この花は咲くのか【失恋墓地】(毎週ショートショートnote)
彼のあとについて歩いていったそこは黒い鉄柵に囲まれた広大な敷地の中にぽつんと立っている石碑の前だった。
そこに一羽の鳥が花を咥えて飛んできて、ぽとりと石碑の上に落とすと高く飛んでいってしまった。
彼はそれを大事そうにそれを掌に乗せ、石碑を撫でると石の表面に名前が浮かび上がった。
この人死んじゃったの?
わたしは恐る恐る尋ねてみた。
いや、亡くなったのは愛するひとへの気持ちだ。
どうしても一緒にいることが叶わない人が心を封印するとそれが美しい花になり、ここに運ばれる。
恋を失った者の拠り所だ。
ひとによっては墓地だという者もいるだろうね。
今は冷え切ったこの大地も、春になれば一斉に芽吹き枝を伸ばし、蕾をつける。
そして匂い立つ花に彩られる。
失恋した気持ちが花をつけるの?
不思議に思って聞く。
彼はわずかに笑顔を見せる。
それは氷が溶けたから。
封じ込めていた想いが天に昇ったということだよ。
あなたもいつかそうなるといいね。
花になるといいね。
失恋墓地、できた…パタリ
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