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医療業界 営業の将来性を考えてみた

医療業界において代理店、メーカーのセールスとして渡り歩き、10年以上になった。これから必要とされる「人材」を考えてみた。

MRの現状

代理店で働いていた頃はMRが羨ましかった。代理店とメーカーが医療従事者と面談のために同行することはよくあるが、メーカーには製品知識があるからと訪問するものの、営業的な話は全然できず何のために訪問しているかわからない定期訪問がよくあった。情報提供のため、製品のプレゼンテーションのみを行うMRが沢山いた。それでいてMRの給料はとても良い。そんなMRは医療業界の勝ち組的な存在に見え、とても羨ましかった。
だが、これから先、MRは新卒採用もされなくなり、全体的にさらにに人数が減少していく。

2019MR白書より

製薬メーカーの現状

MRが行ってきた情報提供はデジタルコンテンツに代わり、多くの情報発信が行われ、新しいエビデンスが出れば、様々なコンテンツから発信される。どのような治験が行われ、どのような経過なのか、結果がでたのか、MRの情報提供よりも先に医師はエビデンスを知り、治療を検討することができるようになってきた。医療従事者側も受け身から能動的に情報を取りにいく時代へとなってきた。

医局前で待機するMRが多くなり、病院の入館制限も厳しくなってきた。情報提供以上に何か目的がなければ会うことが難しいというのが現状だ。

MRを減少させたことで、医療従事者とのタッチポイントが減少し、MRを通じた自社商品の特長をメッセージングするという従来のマーケティング活動だけでは、医師のニーズを捉えきれなくなってきている。

医療機器・材料メーカーの営業の現状

医療機器・材料のメーカーの営業もMRと同じように病院に訪問している。
情報提供に加えて、「新規や更新の機器提案」と関係各署への交渉を行う。MRは交渉を行わず、サービスのようなフォローがないため、営業としては役割に大きな違いがある。


医療機器・材料が採用された場合は「適正使用支援」を行う。緊急症例の対応、手術中の不具合、休日を問わず24時間365日の対応を行っている。

厚生労働省HP


ずいぶんと昔、循環器系のメーカーは全ての症例に立ち合いをすることを他社との差別化とし付加価値としていた。今では差別化にはならないが、いかに早く緊急時に「立ち合い」を含めた対応をしてくれるかということで、すぐに対応できるメーカーの製品が選ばれることはある。緊急時の対応に関して現場の必要性は増えている。
ただ緊急で夜間対応することに対して、「立ち合い」金額は日中と変わらない。これがメーカーでは問題視されていることは間違いない。

厚労省HPより

医療従事者のパートナーであるという感覚

「立ち合い」を行う営業が陥りやすいのが「医療従事者のパートナー」になった感覚でいることだと思っている。
近年、MRの将来性が問われ、MRから同じ業界の医療機器の営業に転職する人が増えている。上段であげた通り、MRの必要性も問われ始めているからだ。
MRから医療機器営業に転職した人が、MRとの最も大きな違いは「チーム感」だという人は多い。求められる知識は多く、質問への至急性も高いが、手術に立ち会うことで、医師の方から声がかかり、話をする頻度が格段に増え、一つの手術を一緒にやり終えたというチーム感があるという。カテ室、オペ室と通常は入れないところに入れるという他の営業にはない優越感もあると思う。
だが、本来、そこにいるのは医療従事者のみで、そのオペのための準備、医師や技師が自分たちでそのオペを遂行できるようにすることが、これから必要となることではないだろうか。そのような仕組みを病院と作るような営業が出てくれば本当のチーム感なのかもしれないと思う(個人的に)。

「立ち合い」業務の将来性

実際、厚労省のHPでもまだ、特定医療材料と呼ばれるものの「立ち合い」に関する規制はあまり厳しくない。

厚生労働省2HP

例えば、患者には同じ効果をもたらす心臓ペース–メーカーは歴史も長く、手技は浸透しているものの、ペースメーカーの設定、特徴は各メーカーで異なっている。全てのメーカーを扱う場合、製品毎に覚えるということが必要となる。そうでなければ適正使用のための立ち合いが必要となってくる。

一般材料や、画像診断装置と異なり、適正使用支援業務は幅広く許されている。この厚生労働省の資料もこの部分は数年変わっていないため、コロナにより営業活動の制限はあるものの、適正使用支援業務はまだまだ必要とされる業務になることと思われる。
ということは、医療機器の営業はまだまだ必要ということだろう。

Society5.0を意識する

内閣府から公表されているSociety5.0には、人生100年時代における健康寿命延伸への貢献には医療機器が貢献できる点は多いとある。
これまで治療目的であった機器は、さらに低侵襲となり、さらに患者のQOLに貢献し、就労可能まで貢献できるようになっている。

また人手不足の解消のためにシステム化を進め、医療データを集約、活用、分析を進めている。これが一番の成長領域としているため、ここに注目した。要はここに関連していく会社が、さらに日本の医療に貢献できる会社ということだ。

厚生労働省3HP


これは次世代医療基盤法に詳しく目的が書かれている。

自らが受けた治療や保健指導の内容や結果を、データとして研究・分析のために提供し、その成果が自らを含む患者・国民 全体のメリットとして還元されることへの患者・国民の期待にも応え、ICTの技術革新を利用した治療の効果や効率性等に関する大規模な研究を通じて、患者に最適な医療の提供を実現する。

厚生労働省5HP

要は、患者に最適な医療を提供するため、AIを活用しデータを収集する会社やセキュリティの会社も新しく進出してくる、既存のメーカーの事業が大きく発展するということではないか。

医療分野を主とはしていなかった会社が医療に直結した事業を始めるチャンスでもある。
医療機器だけでも、臨床検査、画像診断装置、内視鏡...と分野も細かく分かれる。また、産婦人科、循環器、といった科診療科でも分かれてくるかもしれない。非常に大規模な研究が始まるためICT活用に関わる事業は面白い展開になるのではないか。

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もうすでにスタートしている次世代医療基盤法はぜひ確認しておきたい。

まとめ

営業は自分の担当施設や担当エリア内でどう製品を売っていくかということに重きを置いているが、そもそも日本の医療の方向性を厚生労働省のHP、中医協のHPから定期的に確認すべきだと考えている。あの先生が使っているからどうかなど、ローカルの話題も必要にはなるが、大きな方向性はローカルだけでは見えにくいこともあるだろう。


また、自社製品に関係するような保険償還、保険点数に関わる情報だけでは医療全体が見えてこない。医療の方向性が分かっていれば、新製品を中心に売るだけではなく、競合ではない他社と共闘して販売できるなどもできるようになるのではないか。

治療分野だけしかなくても「予防」から考えてみると、別の提案ができるのではないか。

「製品」中心の提案ではなく、よりその施設にあった「顧客」に合うコーディネートを色々な角度から考えていかなければならなくなるのではないか。

代理店でもメーカーでもどの立場でもその施設をコーディネートする人が一番の信頼を勝ち取ることができるのではないか。

モノを売りこまない営業を何人も見てきたが、メーカーでありそのようなことができる営業がこれからも求められる人材ではないかと考えた。

長く読んでいただきましてありがとうございます。これからどのような営業が求められるのか、ご意見頂けると嬉しいです。もしよろしければお願い致します!







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