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【ショートショート/#夏の想い出note】儚く、淡く

———ドンッ。
少し離れた場所から、花火が打ち上がる音が聞こえる。


「先輩」

「んー?」

「今日って港の花火大会ですよね?何で私たちこんな時間まで残業してるんですっけ?」

「本来ならやらなくてもいい仕事を押し付けられた挙句断れない、お前のそのお人好しな性格のせいだな」

「そんなこと言いながら、先輩だって手伝ってくれてるじゃないですか」

「俺はまぁ、お前の教育係だし?」

「それ去年の話ですよね?」

「そんなこと言ってっと手伝ってやらねーぞ?
これが終わったら、遅くまで頑張る後輩に飯でも奢ってやろうと思ってたんだけどな〜」

「わーーすみません!前言撤回します手伝ってください先輩っ」

「はは、お前、ほんっと現金な奴だな(笑)」


「……そういえば先輩、よかったんですか?」

「ん?」

「彼女さんと一緒に花火見に行く約束とかしてたんじゃ……」

「……あー、実はこの間別れたんだよね」

「え!?……何があったんですか?」

「『仕事と私、どっちが大事なの!?』なんてセリフ、まさか現実に言う奴がいるなんて思わなかったよ。
こっちはあいつと会うために気合入れて繁忙期乗り切ろうとしてたのに、一気に冷めたわ」

「……ちゃんと話し合えば、仲直りできるんじゃないですか?」

「もういいよ。思えばあいつって、あんまり自分の仕事に誇りとかない適当な奴だったし、次付き合うならちゃんと自分の仕事にこだわりとか熱意がある子がいいな。
その点お前は、いつも真剣に仕事と向き合ってて、本当いい後輩持ったわ〜」

「……じゃあ、」


———ヒュ〜〜〜〜、ドンッ


「ごめん、聞こえなかった。何て言った?」

「え、何も言ってないですよ?
それより先輩、後3分くらいで終わりそうです!」

「お、マジで!?
じゃあこっちもパパッと終わらせるわ。早く飯食いに行こ、腹減った」

「はい!あと少し頑張りましょうっ」


———ずっと言いたくて、でも飲み込んできた私の想いは、夜のオフィスに儚く溶けて消えた。


***

xuさんとriraさんの共同企画に参加させて頂きました!
夏要素を無理矢理詰め込んだ感が強いかもしれませんが……😅
最後まで読んで頂き、ありがとうございました🌻
そして、素敵な企画を立ち上げてくださったxuさん、riraさん、ありがとうございました🙇🏻‍♂️





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