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「切り分けた果実の片方のように」

とても久々に、高校生の頃に亡くなった飼い犬が夢に出てきた。

家族と折り合いの悪いわたしが例によって嫌なことをされ、気分を悪くしている隣で、飼い犬は無邪気にしっぽを振り、わたしにぴったりとくっついてずっとそばにいてくれた。

最期の姿と比べると子犬の頃のように体は小さく、毛もトリミングに行った直後のように短くなっていたけれど、姿が多少違っても、夢の中のわたしは「飼い犬」としてその犬を認識していた。

***

目が覚めると、夢で家族に嫌なことをされたことで、わたしの心には黒いもやもやとしたものがあった。

けれど、寄り添ってくれる飼い犬がいたおかげか、普段嫌な夢を見た時よりももやもやが小さく済んでいる気がした。

————「今でもあなたは私の光」

お気に入りの曲の歌詞が不意に頭に浮かんで、ああ、本当にそうだなと思った。

飼い犬が虹の橋を渡ってからずいぶんと経って、今となっては家族全員バラバラになっているけれど。
もしもきみの魂がきみとして今も存在しているのなら、また今日みたいに遊びにきてね。

そう心の中で語りかけて、わたしは仕事に行くべく身支度を始めた。

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