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泥だんご時間

保育士おへそのごま の保育エッセイ(21)

「泥だんご時間」

 11月も半ばを過ぎたある日。お日さまのあたたかい小春日和の園庭では、あちらこちらの陽だまりで、しゃがみこんで泥だんごを磨く子ども達の姿が見られます。

 3歳児クラスのYさんは今日保育参加で、お母さんと一緒です。お母さんの作る泥だんごに「こっちに(砂を)かけて」「こうやって(磨くんだよ)」と手つきを見せて熱血指導です。自分の好きな遊びに大人が興味を示して一緒に楽しめるだけでも嬉しいのに、大人よりも“先輩”の立場から“教えてあげる”なんて、子ども達にとってこんなに自尊心をくすぐられることはありませんよね。周りのお友達まで一緒になって得意満面で先輩風を吹かせていました。まさに“いっちょまえの3歳児”の姿です。

 そんな微笑ましい光景を横目に、ごまも泥だんごを作り始めると、5歳児のHさんとKさんも「やりたーい」と泥をこねながらやって来ました。しばらく三人で泥だんごを磨いていると、Hさんがふと顔を上げて「背中にカイロ貼ったかと思った。貼ってなかったのにあったかい」と。確かに、陽射しに背を向けて座り込んでいると陽の当たったところがポカポカと暖かく感じます。
「ホントだねー。お日さま当たってポカポカするね。お日さまってすごいんだねぇ」と応じました。日の光の暖かさを感じるには少し気温の下がってきたこの季節という条件の下で、「カイロ貼ってるのか」と思う程の暖かさを体で感じとり、そしてそれを自分のこれまでの体験の中からカイロのようなという似た体感と結びつけて言葉にする。豊かな生活体験が子ども達の表現を豊かにするんだな、と感じるやり取りでした。

 泥だんご遊びが作り出す穏やかな時間です。

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