見出し画像

[映画感想文]│『ANNA』”らしさ”が詰まったスパイアクション

某国が日々世界中のニュースを賑わせている中、少し前から気になっていた「ANNA」をネットフリックスで視聴した。某国の某秘密警察がテーマである。

ANNA

サッシャの魅力

まず何と言っても主演であるサッシャ・ルスの長い四肢から繰り出されるアクションは見所と言って良いだろう。派手に吹き飛んだり痛がったりする斬られ役のアクションも相俟って、優雅さと迫力のバランスがギリギリ保たれている。流石に体が細過ぎるので、説得力はかなり弱いが、こういう映画は外連味を楽しむ映画なのだ。少しだけ「リベリオン」のクリスチャン・ベールを思い出すようなガンアクションも、リアリティは無いけれどカッコイイではないか。

終盤の

キリアンの魅力

クリスチャン・ベールと言えば「バットマン」シリーズで活躍していたが、その時にスケアクロウだったキリアン・マーフィもまた良かった。スケアクロウ程では無いが怪しくてアブないカンジの色男的な役が良く似合うので、本作でも微妙な役どころを見事に演じていた。

私は特にクローゼットの中でアナと会話するシーンが印象に残っていて、長尺なこともあって2人の危うい距離感と緊張感を存分に感じられるのではないかと思う。「デビルメイクライ3」のダンテとレディでも似たようなシーンがあったし、映画やゲーム問わず使い古された表現と言えなくも無いが、クローゼットの中でカメラがジワジワと押し引きしながらというのが新鮮だった。本作随一の名シーンだと勝手に思っている。

度重なる回想と伏線回収

作中では何度も過去と現在を行ったり来たりするので、その辺に疲れてしまう人も居るだろう。私もアナがスカウトされる場面までは少々退屈に感じた。

しかしそこから先は丁寧に伏線を張っては回収の繰り返しが始まるので、ラストまで眠くならずに鑑賞できた。ガイ・リッチーの「U.N.C.L.E.」程のテンポは無いが、次にこういうシーンが来てくれると助かる…と思っていればそういうシーンがやって来るので、丁寧と言うか親切と言うか、兎に角思ったよりもキッチリ作られた脚本だと感じた。少し間延びしがちなベッドシーンが多いのにも一応意味を持たせてあるので、サッシャのボディラインを眺めて我慢しよう。

キャストも全体的に親切で、悪くて強そうなヤツは悪い奴だし、親切なオジサンオバサンは最後まで親切だった。安心して観ていられるとも言えるが、こういう映画だから却って拍子抜けしてしまったのもまた事実だ。

クライマックス

ラストの山場へ向かうまでの盛り上げ方が良かった。襲撃後に死んでしまっていたアナが餌となって両陣営の最終決戦が始まってしまうのか、或いは片側の罠なのか、若しくはアナが仕掛けた罠なのか…。色々と期待された挙句にしょうもないエンディングともならず、大どんでん返しとまでは言わないまでも充分に気持ち良く終わってくれた。

そして迎えたエンドロールに登場したのは、大きな「LUC BESSON」の文字。

そうか、道理で「アンジェラ」や「ルーシー」っぽい印象や、「レオン」に似たシーンがあったなとか、カーチェイスはどうにもモッサリしているなと感じたし、ラストの何となくハッピーエンド感にも既視感があったわけだ。そうと知らずに観ていた私は、鑑賞中に感じた全てのモヤモヤが解消され、最も気持ちの良い瞬間を迎えたのであった。

良くも悪くもリュックベッソン”らしさ”を存分に感じられる一本ではないだろうか。

おわりに

私の中でベッソンの映画は滅多にヒットしないが、その代わり退屈で観ていられなくなることも滅多に無い。あまり良くない表現に感じられるかも知れないが、これはかなりスゴイことだと思う。

ところでアナに言い寄っていた彼女は、結局最後まで報われなかったし名前も覚えていない。アナのスパイ活動を後からわかりやすく解説する為の舞台装置にしかなっていなかったような気がして不憫でならない…。

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?