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映画感想文Lite│『キャッシュトラック』

現金輸送車を巡るクライムアクションを鑑賞。

名前と主演だけは随分前から知っていたけど、ジェイソン・ステイサムの映画は「アドレナリン」以降敬遠しがちだったのでスルーしていた。しかしよくよく見れば、監督がガイ・リッチーではないか!ということで慌てて飛び付いた。「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」でサエない役がハマっていたジェイソン・ステイサム。ガイ・リッチーはジェイソンを使うのが上手い。

どうしてもダイ・ハードとダブって見えてしまうトランスポーターシリーズなんかではムチムチでゴキゲンな無敵のオジサンとして暴れるジェイソン・ステイサム。しかし本作のジェイソンおじさんは、終始寡黙でハードなボイルドの渋くて悪い役だった。とは言っても大暴れしたり無敵だったりするわけだけど、本作に限って言えば、それくらいのファンタジー感が無いと重苦しいだけで終わってしまう可能性もある。

何しろ結局最終的には誰一人として救われる人間が居ない(FBIだって後始末が大変だろう)し、いつものガイ・リッチー映画らしく「お嬢さん」と煽り合う様子は見られるものの、軽妙な会話劇や肩の力が抜ける笑いドコロも無い。とにかく渋くて重い。雰囲気も画面も暗い。

が、退屈する場面は無いし、同じシーンの別視点を切り貼りして構築されて明かされてゆくお馴染みの構成には充分な快感を得られるようになっている。これが単純に時系列を追ってゆくだけなら、きっとここまで引き込まれなかっただろう。流石はガイ・リッチー!と拍手を贈りたくなる。

しかし何か物足りないのもまた事実で、やはりそこはジェイソン・ステイサムの無敵感に由来するものであるような気がする。特にクライマックスで撃たれるシーン。ブレット(ホルト・マッキャラニー)は何故あの距離から、あんな雑に射撃した上にトドメを刺すことなく立ち去ったのか。致命傷になりそうな被弾は他に幾つもありそうなのに、きちんと弾が貫通したっぽい脚へのダメージだけが何故あんなに大きいのか…。

そういうことが気になって、どうしても終盤は集中力が乱れてしまった。クールでスタイリッシュに切り抜ける無敵感が、現実に起こった事件と衝突して折り合いが付かないまま着地してしまったような感じだ。

しかしそこはファンタジー。あまり細かいことを気にせず観れば、あっという間のである。流石はガイ・リッチー!(二回目)

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