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映画感想文│『トランスフォーマー/ビースト覚醒』

週末に一家で『トランスフォーマー/ビースト覚醒』の吹替版を鑑賞した。

本当はIMAXで観たかったけれど上映時間の問題から通常のスクリーンで鑑賞。劇場の規模は小さめだったので、迫力や臨場感は控え目となったが、その代わり落ち着いて鑑賞でき…るかと思えばそうでもなかった。子供達の様子が気掛かりで仕方なかった。

なので既に記憶が曖昧な部分や、そもそも最初から見落としている場面も存在する。

※以下ネタバレ含む。

全体としては大いに楽しめた。普段はなるべく新鮮な気持ちで映画に没入したいので予告映像などは極力観ないようにしているのだが、本作については吹替版声優陣による予告まで子供達と一緒にチェックしていた。その判断は半分正解だったが半分失敗だった。

正解だった部分は、予告映像を超える見所がきちんと用意されていた点が大きい。特に終盤のアイアンマンと、そのスーツで魅せるVANQUISHめいたアクション。左手にガントレットが装着された時点で、それが全身に拡張しやしないかとヒヤヒヤしていたが、終盤で見事にそれをやってのけた。ナンダソリャ感が無いわけではなかったが、野暮な考えを吹き飛ばす映像としての格好良さには抗う気持ちも霧散したジャン!

フェイス部分がオートボットのシンボルになって完全なアイアンマンになるかと期待したが、半透明のシールドで覆われて終わりだったのは少し残念だった。

コレが顔になって欲しかったナァ

MARVELのスーパーヒーローも最近はマスクを外して戦いがちだし、その流れなのかなと思った。が、後になってからアレはもしかしてダイアクロンをイメージしたものだったのかも…とか、他にきちんと元ネタがあるのかもという風にも思えた。何しろトランスフォーマーの歴史は意外と長いし、その中で構築された世界は気が遠くなる程に広いのだ。

私は小学生くらいの時にテレビで放映されていた『ビーストウォーズ』を何となくたまに観ていた程度のドが付くニワカである。初めて買った玩具は「ダイノボット」である。ヴェロキラプトルが好きだったのだ。もっと古い作品については「ロボットなのに人間みたいな顔をしていて口が動くのヤだなぁ…」という理由でロクに観たことがない。

ところがマイケル・ベイ版『トランスフォーマー』で大熱狂し、ベイバースは全作品とも劇場で鑑賞し、Blu-rayも揃えている。玩具については毎会「コイツが一番カッコ良かった!」と思えるキャラクターを買うようにし、妻から冷ややかな視線を向けられている。

アーシーは公開前に買っちゃったけど…

シリーズ終盤は何だか投げやりな作りになっていったのが残念なベイバースではあるが、毎回きちんと新たなカッコ良さを見せてくれる点は誰が何と言おうと評価に値する部分だと断言できる。そもそも「口が動くのヤだなぁ…」のロボットたちにあれだけの密度と説得力を持たせてスクリーンで暴れさせたというだけでもう全世界の男の子は称賛を送ることしかできない筈なのだ。

だからベイバースが終わった後の『バンブルビー』については「もうバンブルビーはお腹いっぱいなんだよなぁ…」という気持ちもあっていまいちノレなかった。映画としては面白いしよく出来ているのに何かが物足りなかった。多分マイケル・ベイ的な何かが…。

そんな物足りなさは本作でも感じてしまった。病的なまでにネットリと変形シークエンスを舐め上げるカメラワークや、カーチェイス中の火薬、そして西日が足りない。カーチェイスは明るいところでやって欲しいし、ロボットには西日を浴びて欲しいのだ。

だけど例えば『最後の騎士王』を観れば「長いなぁ…」と思うのだ。要するにトランスフォーマーの実写版といえばマイケル・ベイのテンコ盛り全部載せフルコースを自動的に脳が期待してしまい、小綺麗に纏まった作品を物足りなく感じてしまうだけのことであり、本作が悪いわけではない。マイケル・ベイという薬の抜けない私が悪いのだ。

ただ本作が小綺麗に纏まっていたのかと言えば必ずしもそうとは言い切れないような気がする。まず主人公ノアは背負っているものが重すぎる。弟は病気でなくとも構わなかったのではないか。病気であったために結局オートボットたちとの旅には出られず最後までお留守番だったし、何かを乗り越える描写も成長する様子も無く、ノアを奮起させる装置のまま終わってしまった。ソニックが好きでパワーレンジャーのシャツを着ているナイスなキャラクターなのに、非常に勿体無い。

父親の姿が見られなかったこともあり、続編に繋がるなにかがあるのかも知れないが、それにしてもミラージュと出会うまでが少々重い。長いこと説明されているキャラクター設定だが、それらにイマイチ説得力が無い点も気になった。サムと同じようにイケてない青年が成功していく話にしたいのかも知れないけど、その象徴的なエピソードとしての面接キャンセルも、ダメな奴感が薄いので飲み込みにくい。結局のところ車泥棒(これにしてもイヤイヤやっていただけだし…)くらいしかワルな部分が出てこないので、最後まで何だか普通の良い人だったねという感じで薄味だ。設定はモリモリなのに何故か薄味なのだ…。

もう一人の人間代表エレーナは、キャラクター自体がそもそも必要だったのか?と疑問に思えてしまった。彫刻を発掘したのは別の人間であるわけだから、キーはどの道誰かが活性化させていただろうし、ペルーへの道標についてもユニクロン陣営をオートボットが追跡できただろう。それならばエアレイザーという大きな犠牲を払わずに済んだかも知れない。空から超強そうなビームを吐き散らかすキャラクターは何れにせよ排除されていた可能性も捨てきれないが、プライマルに余計な罪悪感と悲しみを背負わせずには済んだかも知れない。

床のレリーフについても、あんなに単純な仕掛けなら誰か気付いただろうし、場所がわかるのならビームで破壊すれば良いだけの話だ。そして最終局面の作戦は、司令官の「いい考え」な時点で成功の見込みは無いのだが、それにしてももう少しどうにかならなかったのか。まず大切なメモを鞄に入れて持ち歩き、あまつさえそれを溶岩に落としそうになるのは如何なものか。そんなに複雑な記号じゃないんだから、手にでも描いておきなさい。油性ペンで!

それなら恐らく入力は間に合っていたし(そもそもあのコーンソールは何で人間サイズなの?)、司令官パンチで破壊する必要もなかっただろう。プライムがいくらいけ好かない陰キャ司令官で、人間からだけでなく同じ金属生命体であるゴリラからも「アイツ何なの?」みたいなことを言われるような器の小さなロボであったとしても、最後のオプティマスパンチだけは正しい判断だったと言える。

重要なアイテムがパンチで壊れるってのもどうなの…?

ところでプライムは一体何歳なのだろうか。恐らく人間よりも相当な時間を生きているだろう。そんな存在が、たった7年程度故郷に帰れないくらいであれ程イジけるだろうか。

色々思うところがあるのは事実だが、「宇宙をひとつに!」で全部オッケーじゃないか。あのシーンで野暮なモヤモヤは全部吹き飛ぶだろう。ベイバースでは常にピンチから仲間を救う立場だったオプティマス・プライムが助けられる立場になっていたことで、プライドの高いトニー・スタークが『アベンジャーズ』で「助けて!」と叫んでいたシーンを思い出した。気に入らないヤツがピンチの時、駆けつける味方が居る。志を同じくする仲間は捨て置けない!最後の最後で少年漫画の王道展開が人種どころか種族を越えて、宇宙規模で繰り広げられるのだ。カッコ良いジャ~ン!

ところでその時エレーナは何してたんだっけ…。何かしていたんだろうけど覚えていない。何してたんだっけ問題は他のトランスフォーマーたちにも当てはまることで、変形の機会すら奪われたエアレイザーは勿論のこと、マクシマル陣営はとにかく地味な活躍に終わった。冒頭で触れた予告映像を観たことによる失敗と思える点もまた、マクシマルへの期待感が大きくなり過ぎた点である。

とは言えイボンコの追跡シーンはカメラワークも相俟って野性味とと疾走感溢れるものに仕上がっていた。細部がカチャカチャ動き続ける部分は男の子の心を掴むギミックだったし、完全な動物の姿ではなくてメカメカしいけどゾイドほどじゃないというビジュアルも新鮮でカッコイイ。だからこそ、個別に活躍の場を用意してあげて欲しかった。特にライノックスなんてセリフすら無いんダナ…。

活躍の場と言えばミラージュのキャラクターと戦闘スタイルは面白いし吹替もハマっていた。けれど結局バンブルビーに持って行かれた感が拭えない。カッコイイんだど、バンブルビーはもういいジャン。アレでエアレイザーも復活すれば良かったんダナ…。とにかくもっと金属生命体同士がゴッツンコする場面を沢山観たかったというのが正直な感想であり、本作の勿体ない部分であった。人間の活躍なんて、ベイバース1作目のレノックスくらいで丁度良いのだ。

そして最後の最後でG.I.ジョーという組織名が出て来たわけだけど、アレはセクター7じゃダメだったのだろうか。ダイアクロン的アイアンマンの登場も含め、ハズブロバース始めます宣言となっているのだろうか。それならそれで楽しみでないわけでもないけれど、『ミッションインポッシブル』でさえ続きモノになる現代、1作でキレイに完結してくれるアクション映画であって欲しかったなぁという思いは捨て切れない。

新章ってそういう…

パンフレットを読む限り、本作は3部作の1作目という位置付けのようだ。

パンフレットはギラギラしていてカッコイイぞ!

続きは期待しているけれど、私が観たいのは巨大ロボットがガチャガチャ変形したり合体したりしながらドンパチやるトランスフォーマーなのだ。トンデモスーツでビュンビュン飛び回りながらトランスフォーマを薙ぎ倒す映画になってしまったら、劇場で涙を流してしまうかも知れない。

そして吹替版のエンディングは、例のあの歌であって欲しかった。本作のラストともマッチした良い歌なのだから。「何だかんだ言いながらカッコ良かったし面白かったな!」という気分でいたのにズッコけてしまった。…和田アキ子版でも良かったのになぁ!

最終的に、やっぱり今回もマイケル・ベイが恋しくなってしまった。薄っぺらいけれどテンポは抜群な会話、活躍しようとしたけれど結局ピンチに陥る主人公、ホットなだけかと思いきや、意外とキレるヒロイン…『トランスフォーマー』という作品に於ける人間の役割は、それくらいが丁度良かったのではないか。

ベイバース巡りを始めようか!

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