見出し画像

面白くなさそうで面白い名作

私は基本的に何も考えずに観ていられる映画が好きだ。娯楽としての映画とはそうあるべきだとさえ思っている。

そして特にロボットとかスパイとかスーパーヒーローとかのワードに弱く、それらがゴキゲンに暴れててくれれば基本的に文句は無い。が、それでも面白いと感じる映画とそうでない映画があって、そこは理屈のみで語ることが困難な領域であると考えている。

今日観た映画「ウォンテッド」は私の中では名作なのだが、面白いかと問われれば即答は難しい。

そこまで捻りの無いストーリー、割とオーソドックスなキャラクター、なかなかツボをおさえた感じのキャスト…と、ここまでは特筆すべき点は見当たらない。ストーリーの概要を説明されても面白そうだと思う人は多くないんじゃないかと思う。

しかしこの映画のキモはアクションの強引な設定と、それに何となく説得力を持たせた上で、最終的に映像として非常に格好良く描ききっている点にある。これだけで一気に面白い映画へと昇華させている。

あくまでも私個人の感想ではあるが、アクションシーンの気持ち良さだけで他の全てを許せる映画に仕上がっているのである。

しかしだからと言って、アクションだけを観れば良いというわけではない。それは例えばアルバムの中の好きな曲だけを聴くようなもので、そこへ至る展開とその後の余韻あっての山場なのに、一部だけを抽出してしまってはワビもサビも無くなってしまうのだ。本作はアクションシーンとそれ以外とのメリハリや、アクションそのものの尺、間のとり方やわかりやすさが絶妙なのだ。これらが計算されてのものかどうかは不明だが、とにかく気持ち良く展開されるシーンの数々が、アクションの興奮を殺すことなく綺麗に整理されている。

序盤はAVICIIの「I Could Be The One」みたいにストレスフルな展開でウェスリーに感情移入させつつも、雄叫びを上げつつガラス窓を突き破るオッサンや効果的な巻き戻し演出によって退屈させない。イルミナティ的な組織に属し、暗殺者として訓練し、復讐と更にその先へ進むウェスリー君の成長がハイテンポに展開されていく。それにしても、凄く嫌な奴であるアイツが後々スターロードとして宇宙を救うなんて考えられもしなかった。

そんな本作の独自性は、簡単に言うと弾道を曲げられるという一点に尽きる。尽きてしまうのだが、しかしその一点だけで見事に纏め切った珠玉のアクションには感服させられる。冷静に考えれば言っていることは無茶苦茶だし、「わざわざそんなことしなくても…」みたいなシーンは多いのだが、そんなものを捻じ伏せる圧倒的なカッコ良さと情熱、そして役者たちの熱演ぶり(日本語音声以外)を感じられる筈だ。

私はもう5回以上は鑑賞しているものの、未だに飽きないし古臭さも感じない。毎度毎度「かっけぇ!!」と思える不朽の名作である。

ガン=カタで有名な「リベリオン」にも言えることだが、細かいことは気にせずに斬新でクールなドンパチを楽しめ、そして細かいことに目を瞑れば意外と骨太なストーリー…。アクション映画の教科書とも言うべき作品なのではないだろうか。

おわりに

今日は貧血気味で半日ダウン。

冷汗と吐き気と指先の痺れがつらい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?