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新宿で妻とデート

子供たちを保育園へと送り出し、この日のために日程調整を重ねていた我々夫婦は、朝から新宿の街へと進軍した。

上の子が発熱の可能性アリという不吉な報は、実測では問題なしという続報により有耶無耶になり、一抹の不安は胸の隅に残しながらも電車へと乗り込んだ。

コロナ禍前には呑みに出ることが何度かあった新宿。ところが買い物となると、最後に訪れたのはいつのことだったか思い出すのも難しい。年齢を重ねるに釣れて段々と足が遠のく街、それが新宿だ。

我々はこの度、断固たる意思を持ってこれに臨んだのだ。ひとつ目はゆっくりと喫茶店でコーヒーを楽しむこと、ふたつ目には冬物アイテムの探索、みっつ目に久々のタイ料理堪能ということで、子供たちを伴って行うには困難なラインナップとなっていた。だがこれらの全てを16時から始まる下の子の保護者会に間に合うよう遂行する必要がある。余裕をもって15時には新宿を出たい。冷静に考えるとかなりの過密スケジュールだ。

ひとまず我らは落ち着いたコーヒータイムを楽しむため、伊勢丹1階の「函館 美鈴珈琲 新宿店」へと向かった。

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結婚する前に度々訪れていた時には別な名前であり、煙草の匂いが染み付いた昔ながらの喫茶店といった雰囲気だった。現在はコロナの影響もあってかゆったりとした座席配置にアクリル板が設置されており、明るい雰囲気の店内に作り替えられている。

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クロックムッシュのモーニング(630円)

我々はここで優雅なひとときを過ごす…余裕などない。急いでモーニングを胃に叩き込み、その上からコーヒーを流し込んで会計へと向かった。

それでもきっちり作られているクロックムッシュとしっかりとした味わいのコーヒーは楽しむことができて、満足度は高い。そして何よりリーズナブルだ。カウンターの奥から常に客席へと鋭い眼光を向けていた敏腕マスターの姿が見られないのは寂しいが、今もここはお気に入りのお店だ。

続いて我々は伊勢丹のメンズ館へ向かい、エスカレータへと歩を進める。目指すはイッセイミヤケ。ターゲットは私のコートだ。以前ここでコートを買ったのはもう10年以上も前のことだが、しかし今でも現役で冬の頼れる味方であるのは有難い。それでもやはり経年による劣化は無視できない。というわけで新たな味方を探しに来たのだが、残念なことに何も見つからなかった。

ガッカリしつつも清々しい思いで伊勢丹を後にし、今度は妻の服を見に行く。こんな風に2人で歩き回れるだけでも貴重な時間だ。

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昼食のタイ料理

昼食は予定通り馴染のタイ料理屋で済ませた。この時既に時間的余裕が無かった我々は、ここでも追われるように食事を済ませ、店を出た。

何故なら、どうしてもジックリ見て回りたい「A+TOKYO」に出会ってしまったからだ。

何しろコロナ禍で服を買うどころか見たり調べたりする機会も激減してしまった。久々に街へ出て見て回ると、多くの発見があって当然なのだ。

ここで我々は服を見て回る楽しみを思い出すことができ、靴底をすり減らすうちに財布の紐はダルダルに緩み、ウッカリと衝動買いをして家路に就いたのであった。

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スポーティな袋

珍しい色や形のアイテムが多く、その多くが我々の好みを突いていた。それでいて価格はリーズナブルであり、驚きに満ちた数時間を過ごすことができた。体には程好い疲労感が残り、この感覚もまた懐かしい物であった。

この季節だからこそのイルミネーションを楽しむとか、ゆったりとカフェで寛ぐといったようなロマンチックさは微塵も感じられないデートだったが、今の私たちにはこれくらいでも充分に幸せなのだ。

…もとい、少なくとも私にとっては幸せなのだ。

おわりに

下の子の保護者会へ向かう道すがら、上の子の保育園から入電。

上ノ子ニ発熱ヲ認ム、至急救援サレタシ。

我々の楽しい1日は、簡単には終わらなかった…。

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