伊藤忠商事の決算内容を3分で解説!
今回は伊藤忠商事の決算内容について見ていきましょう。
バフェット氏が日本の総合商社5社の株式保有割合を増やしたことで脚光を浴びている日本の総合商社、売上高で第二位に位置するこの会社の決算内容はどうでしょうか?
1.PLの状況
まず最初にPLの状況について見ていきましょう。
前提としては伊藤忠商事は国際会計基準(IFRS)を採用しているので、各項目の表現が日本基準と異なっています。
この点、ご注意ください。
では話を戻しましょう。
売上高に当たる収益は前年比+13.4%の13兆9,456億円となりました。
営業利益は前年比+20.5%の7,019億円、当社株主帰属当期純利益は△2.4%の8,005億円となりました。
当社株主帰属当期純利益は前年に大きな一過性利益を計上した反動により減益となったものの、過去最高益となった前年の8,203億円に次ぐ好決算となりました。
ではセグメント別に内容を見ていきましょう。
セグメントとしては8個あります。その内規模の大きい3つのセグメントは「金属」「エネルギー・化学品」「機械」となります。
今回はこの3つに関して見ていきましょう。
◇金属
当社株主帰属当期純利益は前年比+9%の2,469億円と過去最高益を記録しました。
石炭価格の上昇や円安影響に加え、北米事業が堅調な伊藤忠丸紅鉄鋼が好調 に推移したことで最高益を更新しました。
鉄鉱石価格の下落や前年の一過性利益の反動などマイナス要因もありましたが、それを上回るプラス要因が大きく作用しました。
◇エネルギー・化学品
当社株主帰属当期純利益は前年比+26%の1,143億円と過去最高益を記録しました。
市況価格の上昇に伴いエネルギートレードが大幅に改善したことに加え、基礎化学品や国内電力取引も好調に推移しました。
また堅調な化学品の事業会社にも支えられ最高益という結果となりました。
◇機械
当社株主帰属当期純利益は前年比+33%の1,071億円と過去最高益を記録しました。これでトップ3部門全て過去最高益を更新しました。
自動車関連事業が半導体不足による生産制限を背景とした需給のタイト化と マージン拡大により回復した他、米国小型建機事業についても同様に利益率が向上し好調 に推移しました。
また、新規投資実行した日立建機が下期より持分法適用となったことに伴う 取込益が寄与したことに加え、電力価格の高騰に伴う北米電力事業や内外の事業会社の好調により最高益を更新しました。
ちなみに当社株主帰属当期純利益で初めて1,000億円台に到達しました。
◇2023年度利益計画
当社株主帰属当期純利益は7,800億円と減益の見込みです。
また今回最高益を更新したトップ3部門全て減益の見込みです。
しかしこの7,800億円という数値は、不透明な経営環境を踏まえた保守的な計画となっています。
△500億円のバッファーを織り込んでの7,800億円であるという点は注意が必要です。
また伊藤忠商事はこれまで段階的に純利益の増加に成功してきました。
4,000億円、5,000億円、そして8,000億円のステージへと順調に進んできました。
もちろんその先には1兆円という大台を見据えていることかと思います。
近い将来その段階が来るのではないかと期待は高まります。
2.BSの状況
次はBSの状況について見ていきましょう。
総資産全体としては前年末から+9,580億円増加しました。
流動資産は+3,114億円増加しましたが、そのうち主な増加内容は営業債権で+743億円、棚卸資産で+2,278億円の増加が見られました。
特に棚卸資産は市況価格上昇の影響を大きく受けて、資産価格が増加しました。
非流動資産に関しては6,466億円増加しましたが、そのうち「持分法で会計処理されている投資」で+5,363億円の増加がありました。
またこの増加分のうち日立建機の株式13%分を取得したことによる、持分法適用会社への追加も一つの要因としてあります。
ちなみに今回の取得価額は912億円程度となります。
負債に関しては+2,581億円増加しましたが、そのうち有利子負債は+1,082億円増加と半分近くを占めました。
先程触れた日立建機の株式取得のための資金調達もあり、借入金が増加したものと考えられます。
それ以外の増加要因としては、営業取引が増加したことに伴う営業債務+755億円増加が主な内容となります。
資本に関しては6,999億円増加しました。
自己株式取得で△607億円や配当金支払で△2,168億円のマイナス要因はありましたが、包括利益で+9,229億円稼いでいるので全体としては大幅な増加となりました。
3.CFの状況
最後にCFの状況について見ていきましょう。
CF全体としては前年末から△158億円減少しました。
ただこの数値は為替影響を除く数値で、為替影響を含めると△57億円と減少幅が100億円ほど縮まります。ここ最近の円安為替影響は大きいです。
増減の内訳としては、営業CFで+9,381億円、投資CFで△4,538億円、財務CFで△5,001億円という内容です。
営業CFは当期純利益で+8,447億円稼いでいるので、その分が大きくプラスに作用しています。
また受取配当金で2,000億円以上入金があるので、これはかなり大きな収入源となっています。
投資CFに関しては、BSの状況でも触れた持分法会社への出資で△2,949億円とかなりまとまった金額の支出がありマイナスとなりました。
それ以外の固定資産関連の投資で△1,657億円の支出がありましたが、これは例年並みの投資金額と考えられます。
財務CFに関しては例年並みの内容で、リース債務の返済・株主配当など例年通りの項目の支出となりました。
また自己株式取得に関しても、前年と今回と続けれ600億円程度の支出が見られます。
基本的には営業CFの稼ぎの範囲内で投資をしてるので、フリーCFもプラスで推移しており、全体的には問題ないCFの内容ではないかと考えます。
今回の決算内容3分解説は以上となります。
次はどの会社の決算を見ようかな?
マサキタカオ