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キングジムの決算内容を3分で解説!

今回はキングジムの決算内容について見ていきましょう。
文具・事務用品業界では中堅どころに位置するこの企業、ご存知の方も多いかと思います。では決算内容はどうでしょうか?

1.PLの状況

まずはPLの状況から見ていきましょう。
売上高は前年比微増の+0.9%366億円となりました。営業利益は大幅減の△58.3%10億円、当期純利益も大幅減の△59.8%7億円となりました。
増収減益、特に減益幅が大きい結果となりました。

出所:決算説明資料

セグメント別にも見て見ましょう。セグメントとしては二つあり、「文具事務用品事業」と「インテリアライフスタイル事業」があります。
規模感としては文具事務用品が売上高の71%を占めています。一方営業利益に関しては文具事務用品は52%とほぼ半々で差はあまりありません。

出所:有価証券報告書

もう少し個別に詳細を見ていきましょう。
文具事務用品事業の売上高はここ5年間横ばい状態が続いており、260〜270億円台を推移しています。2020年の新型コロナが発生した年でも売上高はあまり減少することはなく、むしろ今回の決算がこの5年間で一番低い状況です。ではなぜ今回は売上高が減少したのか?
その要因は「半導体不足」と「生産国のロックダウン」による影響です。

出所:決算説明資料

需要があっても肝心のその商品を生産できない状況になっていました。この点は自動車や電化製品など他の業種でも共通の問題となっています。

営業利益に関しては売上高以上に減少幅が大きく、前年比△68%と大幅減益となりました。その主な要因は「円安による原材料価格の高騰」によるものです。この点も他業種でも同様の問題となっています。
ただこの円安による悪い影響を受けるのが、「輸入>輸出」となっているいわゆる「輸入企業」です。キングジムもこの輸入企業に該当するため、円安による収益悪化を受けているわけです。

出所:決算説明資料

インテリアライフスタイル事業に関してもほぼ同様の影響を受けている部分は多いですが、今回の決算ではまた他の大きな要因がありました。
それは「ライフオンプロダクツ(株)の完全子会社化」です。このM&Aによってライフオンプロダクツの約半年分の売上高が連結決算上加わることになりました。詳細な金額は分かりませんが、過去の売上高の推移から推測すると15〜20億円程度はあるのではないでしょうか。

出所: HPのニュースリリース

また営業利益に関しても半年分の利益が加わるので3億円程度の増加に寄与しているのではないでしょうか。
ただこれらの増加要因があったとしても、やはり円安による仕入価格の上昇の影響は大きく、前年比としては大幅な減益となりました。

出所:決算説明資料

2.BSの状況

次はBSの状況について見ていきましょう。
全体の総資産としては前年から29億円増加しました。ここ5年間の総資産や自己資本比率などの推移を見てみると、昨年2021年までは横ばい状態だった総資産額が今回の決算で1割程度の増加となりました。

出所:決算説明資料

増加要因は、PLの状況でも出てきたM&Aによる影響です。株式取得をして子会社化したので、連結決算上当然その子会社のBSを引き受けることになります。つまり流動資産〜純資産までの各項目が増額されることになります。

出所:有価証券報告書

大きな区分でしか確認できませんが、確認できる個別項目では「のれん」が13億円と大きな金額となっています。補足として、のれんは毎年償却していくので金額は減少していきます。(償却期間は20年以内)

それ以外の項目としては、M&Aのための長期借入金を追加で30億円調達した点です。この点は後ほどのCFの状況でも触れていきますが、M&Aのためにアドバイザリー費用なども含めて総額36億円が必要でした。
そのため長期借入金として30億円の追加借入を実行しました。

出所:HPのニュースリリース

ちなみにこの「アドバイザリー費用」ですが、個別財務諸表上では「資産計上」、連結財務諸表上では「費用計上」と処理が異なります。
そもそも連結財務諸表では子会社株式が出てこないので資産計上のやりようがないと思うかもしれませんが、仮に資産計上するとすれば「のれん」の金額に含まれることになります。そうなれば、のれんの償却期間に沿って費用計上されることになります。

今回のBSの動きを一言で言えば「M&Aによる影響」に尽きると思います。

3.CFの状況

最後にCFの状況について見ていきましょう。
CF全体としては△13億円となりました。内訳としては営業CFで△12億円、投資CFで△35億円、財務CFで+32億円となります。

出所:決算説明資料

税前利益で12億円の利益があるにもかかわらず営業CFがマイナスになっている要因は、「棚卸資産が13億円増加」していることが大きいです。

投資CFではPL・BSの状況でも何かと登場しているM&Aによる子会社株式の取得による影響でマイナスとなっています。もちろんそれ以外の投資による有形・無形固定資産の取得もありますが、金額は8億円程度なのでインパクトとしてはあまり大きくはありません。

財務CFに関してもM&Aが影響しており、子会社株式取得のための長期借入金30億円が主な内容となります。また今回のような戦略投資案件以外で運転資金が不足したような場合に備えて、取引銀行6行と総額78億円当座貸越契約を結んでいます。CF全体の規模感から考えると、これだの金額があれば問題ないかと思います。

出所:有価証券報告書

今回の決算内容3分解説は以上となります。
次はどの会社の決算を見ようかな?


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