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クミアイ化学工業の決算内容を3分で解説!

今回はクミアイ化学工業の決算内容について見ていきましょう。
農薬専業でトップクラスに位置するこの会社、業績を着実に伸ばしているようです。

1.PLの状況

最初にPLの状況について見ていきましょう。

売上高は前年比+23%の1,453億円となりました。営業利益は前年比+49.9%の127億円、当期純利益は+81%の163億円と大幅な増収増益という結果となりました。

出所:決算説明資料

売上高は主力の農薬関連と化成品がコロナ禍から回復してきた点と円安の影響などにより増収となりました。

営業利益は原材料高騰など利益圧迫要因はあるものの、それを上回る売上高の増加により大幅な増益となりました。

出所:決算説明資料

また今回は営業外収益が111億円とかなり多額の金額が計上されていますが、主な内容は為替差益で84億円計上されています。

特に海外売上高比率が60%超と為替の影響を受けやすい構造になっています。今回の様な円安の場合は、その構造がプラスに作用したという事です。

出所:決算短信

ではセグメント別に内容を見ていきましょう。

セグメントとしては2つ「農薬及び農業関連」「化成品」があります。
規模感としては「農薬及び農業関連」が売上高全体の77%を占めています。

出所:決算説明資料

◇農薬及び農業関連
売上高は前年比+26%の1,124億円、営業利益は前年比+57.8%の131億円と増収増益という結果となりました。

主力の除草剤商品「アクシーブ」の売上が好調を牽引しています。
また地域別の売上状況を見てみると、海外売上高比率は65.5%と高い比率となっています。
これが今回の円安の恩恵を受けた要因と考えられます。

出所:決算説明資料

更に地域別で見ると、北米の比率が一番高く全体の約40%を占めています。
次いでアジア・オセアニアが28%を占めている状況です。

特に米国では各個人宅の庭の手入れをする文化がありますので、その文化的要因が売上高に影響していることも考えられます。

2023年の業績予想としては約+20%増の売上高を見込んでいます。
増加要因としてはやはり主力アクシーブの海外での大幅増加の見込みが主な内容です。

出所:決算説明資料

◇化成品
売上高は前年比+21%の250億円、営業利益は前年から変動はなく9億円という結果となりました。

コロナ禍からの回復により売上高は増加しましたが、原材料価格の高騰によって営業利益は据え置きとなりました。

出所:決算説明資料

2023年の業績予測としては売上高△2%の減収を見込んでいます。
主力の塩素化事業の一部の品目で生産調整が行われることが影響していると考えられます。
その他の事業も据え置きもしくは微増のため、化成品事業全体としては減収となりそうです。

出所:決算説明資料

◇事業全体の業績予測
事業全体の業績予測としては2022年と比較して売上高・営業利益ともに増加の増収増益を見込んでいます。

3カ年の中期経営計画の目標数値をこの2022年で既に達成しており、業績としては順調に進んでいます。

2023年の見通しは増収増益ですが、先程セグメント別で内容を見たように事業別で明暗が分かれています。

出所:決算説明資料

ただ好調・不調を問わず全事業で「新規事業の開拓」や「販路拡大」などをテーマに挙げて、今後の重点施策など検討しているようです。

これらの検討内容が上手く軌道に乗れば次の3カ年も右肩上がりに業績を伸ばしていける可能性がありそうです。

出所:決算説明資料

2.BSの状況

次はBSの状況について見ていきましょう。

総資産前としては前年末から+354億円増加しました。
流動資産では+276億円増加しており、そのうち売上債権で+158億円増加、商品などの棚卸資産で+83億円増加しました。
この流動資産の増加は売上高の増加に伴うものと考えれらます。

また固定資産全体では+78億円増加しましたが、これは有形固定資産の+58億円増加が主な要因です。

出所:決算短信

負債の部に関しては+233億円増加しています。
このうち買掛金で+42億円の増加がありますが、これは流動資産と同じ要因で売上高が増加したことに伴うものと考えられます。

また短期・長期合わせた借入金では+123億円増加しています。
長期借入金は返済計画に沿って返済が進められているので減少していますが短期借入金は+165億円増加しました。

こちらも売上高増加に伴い全体的にキャッシュが必要になったため、短期の支払資金に充てるためのものと考えられます。

ちなみに短期の支払い能力を測る「流動比率(流動資産÷流動負債)」は211%となっており安全圏の目安となる200%を上回っているので問題ないレベルだと言えます。

出所:決算短信

当期純利益はしっかりと稼げているので+120億円増加しています。
また自己資本比率は年々減少していますが、それでも今回56.43%と全く問題ない水準です。

出所:有価証券報告書

この年々自己資本比率が減少している要因としては、ここ数年毎年「増配」を続けていることが要因と考えられます。

「配当基本方針」の中で「内部留保などを総合的に判断ししつつ、安定した配当を継続して行う」と記されており、この考えがしっかりとBSに現れています。

出所:決算説明資料

3.CFの状況

最後にCFの状況について見ていきましょう。

CF全体としては前年末から+26億円の増加となりました。内訳としては営業CFで△11億円、投資CFで△78億円、財務CFで+56億円という内容です。

出所:有価証券報告書

今回のCF3はつの区分の合計だけだとプラスになりませんが、外貨キャッシュを円換算した際の為替差で+60億円の効果がありましたので、その分を加味するとCF全体でプラスになりました。

出所:決算短信

営業CFに関しては、税前利益で+231億円としっかりと稼げていますが、売上債権や棚卸資産の増加がCF上ではマイナス効果となりました。

投資CFでは有形固定資産への投資で△78億円の支出がありましたが、例年レベルの金額で特段多額ではありません。

財務CFに関しては、短期借入金で追加借入がありましたので、その分プラスに作用しています。

また緊急時の備えとして、取引金融機関4行と総額120億円のコミットメントライン契約を締結しています。
現状のCFから考えると、緊急時の備えとしては問題ない金額だと思います。

出所:有価証券報告書

今回の決算内容3分解説は以上となります。
次はどの会社の決算を見ようかな?

マサキタカオ

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