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欧文書体の基礎の基礎の基礎の基礎


おはようございます。
おはよう先生です。


今日は欧文書体の基礎講座です。




欧文基礎-03


書体の歴史をさかのぼると
職人による金属活字が約400年に渡って制作されました。


当時は職人によって活字の精度もまちまちで、
手彫りがゆえに時間もかかりました。


やがて産業革命により自動活字機が開発され
機械による活字制作へと進化しました。
さらに利便性の高い印画紙に文字を焼き付ける写真植字機
が広がり、20世紀になるとコンピューターの登場で
今のデジタルフォントの時代が訪れています。



書体は技術の進化とともに新しいものが生まれ続けています。

とは言っても、覚えることはそんなに多くありません。



欧文基礎-04


和文でも、明朝、ゴシックと呼ばれるサンセリフ勘亭流行書体楷書体
あとはデザイン書体なんて呼んだりしますかね。



欧文にもそうした書体の違いがあって、そこには歴史もあります。


まずは、基本的な欧文の種類や書体の背景などを簡単に紹介します。






最初はセリフ書体について覚えましょう。


欧文基礎-02


セリフ書体は、文字の先端に「セリフ」と言われる飾りがついた書体のことです。

古代ローマの碑文・石刻を元にして15世紀後半に書籍の本文用活字として
開発されました。


現在では大まかに二つに分けられます。

欧文基礎-05

まずは書体の原点「ローマの碑文」にならった
「Garamond」「Caslon」のような
手書き風の「ブランケットセリフ」がついたもの


欧文基礎-06

もう一つはそこから300年の時を経て、
新たに生まれたモダンローマン体「Bodoni」のような
とても細くて繊細な「ヘアラインセリフ」がついたものです



・昔ながらのがブランケトセリフ
・少しすっと整えられたのがヘアラインセリフ



ここでワンポイント。
ローマン体の大文字古代ローマの碑文が元となっていますが、
小文字はその時代になかったため、手書きで書いた小文字
大文字同様のセリフを付けてローマン体は完成しました。



よし、これでセリフは二種類覚えましたね。



待って、なんでセリフってついてるの?と思われた方。


これは日本人欧文伝達者の小林章さんが、TDCのワークショップでの質疑応答でこのように語っています。


「昔も今も、碑文に文字を彫るときに下書きが要ります。古代ローマでは、平筆か刷毛のようなものを使ったと言われます。その平筆で書くとき、一本の縦線は鉛筆で書く縦棒のようには書きにくいんです。書き出しの時にべたっと始まると筆の穂先が割れて上手く書けません。やってみると分かります。ペンキで書かれた看板の手書きのサンセリフ体にも、小さいセリフのようなものがついていることはよくあって、イギリスやフランスで写真を撮ったこともありますよ。もちろん書いたのはペンキ職人で、文字の形が面白いとか新しいとかそういうことじゃない、普通の看板や注意書きです。左斜め上から入った方が穂先がまとまって書きやすいので左側にセリフらしいものができる。そうやって縦画を引いたらその反対側にバランスを取るためカウンターウェイトの役割をする爪状のものを付け足します。それで左右両方の爪状のものが揃います。ローマの碑文の場合は美しさを強調する目的があったと思いますから、その形を石に彫ったときにきれいに見えるように整えて、それがセリフの原型になったんじゃないでしょうか。」


それに対し、
「 素朴な疑問で、どうしてローマ人は平筆を使ったのでしょうか。彫る時にセリフはいるのかなあ、、、」という質問が出ました。
これに対し、小林さんは

「「彫る時にセリフはいるのかなあ」は良い質問ですね! なぜ平筆を使ったのか、本当に平筆だったのか、全部が全部平筆での下書きだったのかなど、私は考古学者じゃないので詳しくは分かりませんが、出来上がった文字の形から、多くは平筆で書かれた字形が元になっていると推察される、というところに落ち着いているようです。ローマ人よりもっと前、古代ギリシャの碑文ではセリフのついていないものもたくさんあったようです。ただ、その時代のものはどれも線が細くて、私が見た限りでは、ローマ碑文のように堂々として均整の取れたものは多くなかったように思います。実演では古代ローマの碑文をお手本としましたが、それが現代のアルファベットのデザインの基礎だからです。現代では、碑文を彫る時に鉛筆などで下描きをしてから彫るやりかたの方がが多いそうですが、そういう人たちの文字でセリフのないものも、始筆部と終筆部を太らせて腰をやや細くするのが多く、Helvetica みたいに直線で構成されたものはほとんどありません。真ん中を細くすると、字が落ち着いて見えるからだと思います。」


いかがでしょうか。
私も学生の時に、小林さんのワークショプで
実際、平筆で「A」を書いたのですが、
意図せずセリフらしきものがついていました。

なんせ石碑の時代です。
サンセリフが出てきたのは、もっともっと後の話ですからね。

おっと。
サンセリフって何かと言うと、


さんセリフnote

サンは「無し」という意味。
セリフがないですよ。
なのでサンセリフって呼びます。



こういう流れから、
前はローマン体と呼んでいた書体も
今はセリフ書体と呼ぶ方が一般的かもしれません。



サンセリフ
元々の看板文字として誕生しその後は商業印刷物に使用されてきたもので
遠くから見ても読める文字として作られました。


これは国ごとに言い方に違いがあり、
イギリス → セリフフレス
・ドイツ → グロテスク
・日本 → ゴシック体
と呼びますが


ゴシック体は、本来ブラックレター書体のことを指します。



ローマン体とセリフ書体が同じように
ゴシック体=ブラックレター書体です。


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ブラックレターはこれ系の書体。

印刷もまだない、写本時代に幅広いペンを斜めに描くところから始まり、
効果な羊皮紙の節約と早く書けるので、広まりました。
なので書体の歴史は相当古く、6世紀頃の、
その手書き文字がゆっくりと進化していき、
12世紀には今の原型が完成しました。

主に教典宗教的なものに好まれて使われてきました。


かと言って特別な書体だったかというとそうではなく、
第二次大戦まではドイツで一般的な書籍はブラックレターで組まれていました。

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実際、ヒトラーの「我が闘争」のタイトルなんかにも使われていますね。


他にも、博物館で見る鉄道やバスなどの停留所の注意書きとか、切符とかをみてもブラックレターが多かったようです。
現代のドイツ人の若者には読みにくい文字ですが、ほんの数十年前までは普通にそれでみんな本を読んで、生活をしていたわけです。


現在はブラックレターはそんなに使われません。それで小説などの本を組む人はほとんどいないでしょう。


それはローマン体と比べると読みにくいからです。
でも、ブラックレターは伝統的な感じの欲しいところには今でも使われます。
古城の案内パンフレットやビアホール、レストランのロゴやメニューの見出し部分などにブラックレターが使われていると、歴史のある場所なんだなという雰囲気になります。


あと、ヘビーメタルの人たちもブラックレターを好んで使いますが、
そういう「ビジュアル的に」みたいな使われ方は50年前までは考えられなかったことだと思います。


じゃーゴシックって何?っていう方は、
こちらの動画でゴシック体って何かの話をしていますので是非ご覧ください。



めんどくさいから観ないよという方にいうと、
ゴシックは差別用語から生まれて、ある流れから日本に流入してきた言葉です。


ゴシックにある黒々としたものの印象がブラックレターと重なって
ゴシック=ブラックレターとなったんだと思われます。




欧文基礎-08


他にも欧文にはイタリック体と呼ばれる
イタリア発祥の筆記体を元に誕生したものがあります。
筆記体特有の流れるような文字が特徴です。

現代のイタリック体の使用方法は、
日本語のカタカナみたいな扱い方で、外国語用や製品名など
本文と差をつけるために使われるのが主な使用方法です。


他にも斜めになった文字で、
オブリーク体っていうのもあります。



イタリックとオブリーク。
この違い、知らずに使ってる人はここで覚えちゃいましょう。


簡単に二つの違いをいうと
・調整されてない、ただ斜めにしたものを「オブリーク」
・斜めに調節したのを「イタリック」

です。

調節していないと、文字の太さに安定感がなく、
タイトルなど大きく使う場合は文字の歪みが気になることがあります。


欧文基礎-09


元々、先ほど言った斜め文字の使用特性上、オブリークはサンセリフに付けられたもので、「まーいっか」っていって、ういーって曲げてたんでしょうね 笑

なので最近ではイタリックってついてる書体も増えてきました。



書体、もう三種類覚えましたね。


・セリフ書体
・サンセリフ書体
・ブラックレター書体


あと二つです。



欧文基礎-10


一つがスクリプト書体


まさに筆記体ですね。
元々柔らかい銅板に彫刻刀やとがった鉄筆でほったのが始まりで
当時の銅板印刷で使われていました。
それから印刷が主流となって活字書体を生まれ変わっていきました。
今だと、デザインのワンポイントや
手で書くカリグラフィーで多く観ますかね。



欧文基礎-11

二つ目がスラブセリフ書体です。

スラブは「厚い」という意味を持ち、
文字の縦線横線が同じ太さでセリフがついている
セリフとサンセリフの特徴を掛け合わせたような書体です。

元々イギリスの屋外広告用のディスプレイ書体として誕生し、
広告に、目が引くための書体として使われました。
やがて本文書体として可読性を高めたものが生まれ、
今では様々な用途に対応できる書体になっています。


スラブセリフのことを別名「エジプシャン」と呼んだりもします。




それでは最後に、
欧文書体の歴史の流れが書いてある文を載せますので、
読みながら、復習しましょう。


何だっけ?と思ったら戻って理解しましょう。
全部分かれば、レベルアップした証拠です!

ではどうぞ!


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私たちが日頃何気なく使ってるフォントは、
15世紀から20世紀に活字書体として登場し、
デジタルフォントへと姿を変えたものが数多くあります。

活字の始まりは、実はブラックレター書体で、
それがヨーロッパ各地に渡り、各国で使われました。


そしてルネサンスの時代になり、ギリシャやローマの古典文学や
聖書を研究していたイタリアの人文主義者達が、
「自分たちの思想をよりふさわしい文字であしらいたい!」
と考えたのがローマン体の成り立ちです。


大文字は古代ローマの石に彫られた文字が元になり、
小文字はヒューマニスト・ミナスキュールという
日本でいう楷書のようなものが元になっています。


イタリック体スクリプト体も、ヨーロッパの手書き文字が元になっていて、
日本の行書や草書と考えるとわかりやすいですかね。

イタリック体は当初は独立した書体でした。
16世紀中頃になり今のようなセリフ書体のファミリーになりました。


18世紀になると、少しずつ文字に新たな試みが加えられ始めます。
そして18世紀後半には、Bodoniなどのモダンローマン体が人気となり、

19世紀に入ると産業革命の影響から活字書体にも大きな変化が起こります。
これまでの本の本文用という役割から、ポスターやチラシなどの
商業印刷物へと活躍の場を広げていきます。


そしてローマン体の変形であるスラブ書体や、
セリフのないサンセリフ書体といった
新しい文字が開発されるようになりました。

やがて20世紀になると、
サンセリフを始め時代の雰囲気にあった新しい書体が人気になります。
時代の流れを受け、サンセリフ書体の開発はこの時期一気に加速。

本文組でも使える読みやすさを持ったサンセリフ書体の開発も行われ、
現在では様々な用途に対応できる書体へと進化しました。


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はい。
どうだったかな。


今回の基礎を学んだ上で、
基礎欧文書体の記事も上げているのでぜひそちらもご覧ください。





noteに載せるのはyotubeで上げた前の動画のものなので
こういうのに興味がある方はぜひ、
youtubeでチャンネル登録よろしくお願いします。


「デザインは面白い」

をコンセプトで動画を上げているのでよろしくお願いします。

ではまた。






主な参考文献







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