スポーツとパワハラ

少年野球で3度日本一になった多賀少年野球クラブの監督、辻正人さんが試行錯誤しながら成し遂げてきた「楽しく、元気に勝つ」という理想的な姿が、Sports Graphic Numberのウェブ記事に紹介されています。
https://number.bunshun.jp/articles/-/858087

スポーツ、特に少年少女の指導でのパワハラ(スポ根指導)はかねてから問題視されながら、指導者の成功体験からなかなか変えられない、保護者が「しつけ」込みで「厳しく指導してください」と依存している、などの複合的な原因でなかなか減らないと言われてきました。
この異常な昭和的「スポーツ指導」「体育会系的心性」は、例えばビジネスの現場でもパワハラを賛美する通奏低音になっているように思え、筆者は以前からマークしてきました。

例えば学校の部活動でも行き過ぎた指導から亡くなる生徒があとを絶たず(学校管理下の柔道では27年間に110人、平均すると年4人!が死亡。その他熱中症の放置や責められての自死もある)、特に体育教師を多く輩出する日本体育大学ではこの問題を重く見て「反体罰宣言」を定め、法医学研究者の南部さおり氏を招いて、部活動で子を亡くした親の講演会「命の授業」を続けています。
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また、多賀少年野球クラブと同様のコンセプトとして、元日本代表バレーボール選手の益子直美さんは「監督が怒ってはいけない大会・益子直美カップ」を主催し、「一般社団法人監督が怒ってはいけない大会」http://masukonaomicup.com/ というユニークな名前の団体まで設立しています。
この大会では益子さんが各コートで展開する試合を巡回し、試合中に声を荒らげたり、威圧的な指導をしている監督のもとに言って「✗印」の付いたマスクを掛けさせて、一定時間何も言えないルールを運用しています。

困ったことに、こうした「楽しく、元気に」という考え方に対して、「甘やかすだけではないか」「厳しい状況を乗り越えてこそ成長があるのに」と不満を漏らす指導者や保護者が少なからず居るらしいんですね。
これ、ビジネスでもそういう上司は多いです。

Sports Graphic Numberの記事で、多賀少年野球クラブの辻さんはこう言っています。

「私たちが目指す楽しさは、ヘラヘラ笑ったり、はしゃいだりする種類の楽しさではありません。
 野球の上達で得られる楽しさ、野球を考える楽しさです」


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