職人と作家の違いって?

皆さんは職人と作家の違いって何だと思いますか?

現在、つまみ細工の作りてには、大きく分けて2種類の方がいらっしゃると思います。
一つは職人、もう一つは作家です。
(アーティストという区分もありますが、ここでは作家に分類します)

もともとつまみ細工の職人とは、呉服業界の流通の中で仕事をしている人を指しました。
江戸時代に興ったつまみ細工は、経済の発展を経て高度な流通形態の中に取り込まれ、戦後、着物を着用する際に使用する装粧品として、和装小物というジャンルの商品として流通しました。

その流通の形態は、他の一般的な商品と同じように、上流から以下のような形態になっていました。

・職人・メーカー・産地問屋・呉服問屋・小売・消費者

職人は、流通の末端である消費者の需要を受けた小売店から問屋、メーカーへの上がっていき、メーカーの指示によって指定されたイメージ・仕様で「商品」をつくってきました。
その価格は、需要と供給のバランスによりある程度の相場が意識されたものになります。

対して、作家とは、つまみ細工の技術を修めた個人が、その個人の作りたいものを具現化し、直接消費者に問う形で「作品」を作ってきました。

簡単にまとめると、職人は需要に基づいて商品を作る人、作家は自身のクリエイティビティに基づいて作品を作る人、といえます。

元来、絶対数でいえば圧倒的に「職人」>「作家」でしたし、一般的にステータスは「職人」<「作家」でした。

作家は、自身の作品をギャラリーや催事などで販売され、作品だけでなく作家自身が付加価値となり、相場とは関係ない価格で販売されてきました。
これは、つまみ細工に限らず、他の工芸品にも言えることだと思います。

しかし、時代が下り21世紀の現代、その数は逆転しました。
昔ながらの流通形態は変革を迎え、メーカーや問屋は職人を抱えるだけの体力がなくなり、その製造機能を海外に移転し、インターネットを使って小売店以外の業態でも直接消費者に商品を届けることができるようになりました。

和装業界の不振により髪飾りの需要は低下し、顧客が求めるものは品質よりも価格のやすさになり、低価格大量生産の商品があふれかえるようになります。
そうなると、製造の末端である職人の賃金は低下し、国内で流通のなかの専業の職人という職業は、ほぼ絶滅してしまいました。
東京の江戸つまみに、その一部の職人さんが残っているだけになっているのが現状かと思います。

それに変わって台頭してきたのが、つまみ細工作家です。

昔に比べてつまみ細工の情報が手に入りやすくなり、各地でWSや教室が開催され、誰でも手軽につまみ細工を楽しめるようになりました。
また、インフラ面では、インターネットの発展、minneなどのプラットフォームの整備により、作品が作れればその日にでも、発表の場と顧客を与えられるチャンスができました。

また、作品発表と比較と購入が家に居ながらにしてできるようになったため、それぞれの作家はよりオリジナリティを求めて、とても個性的で独創的な作品が作られるようになりました。

昔は、多くの職人と少数の作家という構図だったのが、少数の職人と多くの作家というふうに、この20年で変わったように感じます。

さて、弊社は職人なのか作家なのか。

世間でどう評価されるかは知りませんが、自分は職人であり商人であると自認しています。

昔ながらの流通の中の職人ではありませんが、中間流通を省いた、

・職人・消費者

という、もっともシンプルな流通を構築した職人の会社だと考えています。
(※実は、店舗を立ち上げる前からの卸の仕事も、会社として持っています。)
お客様の求めるものを考え、デザインと仕様を決め、販売計画と生産計画を立て、仕様書に則って複数のスタッフたちと分業で、決まった商品を作っていく。

この職人としての仕事に誇りを持っています。

ここ10年で、多くの作家さんたちが出てきました。
作品を拝見していると、それぞれ独創的で個性的で、とても魅力的です。
私は職人なので、あんなふうに自由に作品を作れる作家さんたちが羨ましくなるときがあります(笑)。

職人は絶滅寸前です。
多くの流通の中での職人は、次世代では生き残れないでしょう。つまみ細工職人という職業を残すために、何ができるか。

その一つが教室事業であり、今回チャレンジする通信講座なのです。

その延長線上になにを見ているのはかは、また別の機会に。

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