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コーヒー豆を挽く

 

 普段あなたは、リラックスタイムに何を飲みますか?



  私は、眠い午後の昼下がりには、コーヒーを頂きます。コーヒーの香りには、リラックス効果があるそうで、香ばしい深みのある飲み物で、ブレイクタイムがはかどります。溶かすインスタントのものや、ドリップバックはコーヒーを手軽に楽しむことが出来ます。


 私は最近、近所にコーヒーの焙煎所へ行くことを覚え、そのコーヒーの魅力の深さに、更にハマっています。存在は知っていたけれど、足を踏み入れるのに勇気が必要だったので、3年近くそのお店を訪れることはありませんでした。

 

 昨年末に、文通相手に「何か贈り物をしたいな」と考えたときに、このコーヒーのお店に立ち寄ることを決意したのです。なぜ、コーヒーなのかというと、その方との思い出が、ふと頭をよぎったからでした。

 


 美術館へ行く約束をしていて、それは遠距離であるという事もあり、早朝の出発でした。当時、朝に弱かった私は眠気眼をこすりながら、その方の助手席へ腰を下ろしました。すると、「朝ごはんです」とかごのバスケットを差し出してくださり、その中には、ほかほかのおにぎりと水筒が入っていました。おにぎりは、それまでの人生で一番といっても過言でないくらい、美味しくて優しい味がしました。その方は、私のために朝ごはんまで用意してくださっていたのでした。

 

 朝ごはんのおにぎりを食べ終わると、水筒の中にはコーヒーが入っていました。その方オリジナルの、ミルクとお砂糖の入った、柔らかい包まれるような味がしました。けれど、甘いだけではなくて、コーヒーの苦みも香りも感じられ、きちんとドリップして淹れられたものだと分かります。このコーヒーもおにぎり同様、とても美味しくて、すっかり目が覚めた私なのでした。

 

 この時の、道中のコーヒーのお味は、今でも忘れられません。ふと、冬の寒い時は余計に、この情景を思い出します。車の中で話していたこと、何の絵を観に行ったのか、かえってそちらよりもありありと思い出されるのです。味の記憶とは、不思議なものですね。


 今回の贈り物は、その時の情景を思い出したので、「コーヒー豆」を贈ろうと思い立ったという訳です。

 

 それ以来、なるべく豆から挽いて、ドリップは機械任せですが、コーヒーを淹れます。機械式を買うお金がない学生時代に手にした、カリタの手回しミルを今でも愛用しています。豆の種類や挽く粗さによって、手ごたえがかなり固い時・柔らかい時とあって、その感覚も手で挽くからこその味わいです。

 

 私は、あの時の、文通相手の方と飲んだコーヒーの余韻を、味わいながら今日も豆を挽きます。



 今日のお話はこの辺で。また、私とおはなししましょう。



Copyright 2022 Chihiro Egoshi



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